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ロコ情報スペシャル!
(埼玉篇)

商品もクリエイティブも
「あそびましょ。」!
工場やアミューズメント施設で地域での存在感を放つ赤城乳業

ユニークなクリエイティブで世間を沸かせる、埼玉県を代表する企業の赤城乳業。2025年度は、「Sof'(ソフ)/なぜか上さま篇」のテレビCMでACC賞フィルム部門Aカテゴリー「総務大臣賞/ACCグランプリ」を受賞されました。地域に根付いた多角的なプロモーションも展開し、工場見学や地元に開いたアミューズメント施設が大人気! その方針や考え方について、お話を聞きました。

どう考えても“とんでもない企画”!が生まれる背景
「年に1回か2回は無茶をしよう」

―クリエイターからの提案をどう受け止めて、採用に至っているのでしょうか?ユニークなCMが生まれる経緯は。

赤城乳業という会社は、1980年代から『ラーメンアイス』『カレーアイス』のようなとんでもない商品を販売するDNAを持っています。パイオニア精神というか、やるからには変なことをして目立ってやろう!という精神ですね。
当初はそれほどCM展開をしておらず、2000年に初めてガリガリ君のCMを放送しました。音楽が有名お笑いコンビの出囃子に使われたりと、それだけ当時はとがったものだったと思います。そのCMだけで一気に売り上げが伸び、初めて「クリエイティブの力でこれほどお客様が動いてくれるんだ」と実感。その頃から、本格的な広告活動を始めました。

私は商品開発も担当しているのですが、商品もクリエイティブも、「年に1回か2回は無茶をしよう」と言っています。「おいしい」「安全」という基本を大切にしながら、意外性も持っていきたい。
今回グランプリをいただいた「なぜか上さま篇」は、『Sof'(ソフ)』を発売した当初から古川雅之さん(電通(Creative KANSAI))のチームにクリエイティブをお願いしています。古川さんとは2013年の『BLACK』の“ゆるCMシリーズ”(しりあがり寿さんが描くアニメーション)からずっとご一緒しているので、提案されたものは「やってみよう!」と思える信頼があります。この商品も、本当に売り上げが伸びました。クリエイティブの力で商品が売れる。改めて、その力のすごさを感じました。

『BLACK』“ゆるCMシリーズ”/2013年の第1弾はYouTubeで100万回再生を突破
Sof'「なぜか上さま」篇/ソフトクリームの“上”だけを表現した「上様」という謎のキャラクターが印象的。
2026年2月からは第2弾となる新作も公開中。

最初に古川さんとご一緒した時に、「クリエイティブに関しての考え方が一致している」と感じたことも信頼できる理由のひとつです。私は、他社の先輩から「CMは小さくて画質のよくない画面で見て、そこで心に残ったものを選ぶのがよい」と教わって、その考え方を大事にしてきました。古川さんのチームも、「基本的にCMを積極的に見る人はいないのだから、違和感やおもしろさ・インパクトで心に残そう」と。

―攻めたCMを出したのに失敗した、のようなことはなかったんですか?

あることは、あります。そういうものは、大事な要素を残しながら変えていきたい。ただ、完全に「クリエイティブ=売上」と言えるものでもありません。正直なところ、そこまでCM制作を堅苦しく考えていないんです。そもそも広告宣伝費にあまり投資できておらず、どちらかというとPRと連動させたイベントやキャンペーンに力を入れています。

―『ガツン、とみかん』の江頭さんシリーズは別チームですか?

ずっと同じチームでやっているのは、『ガリガリ君』『Sof’(ソフ)』『ミルクレア』であとは流動的です。じつは、『ガツン、とみかん』は江頭さんの持ち込み企画。本当にこの商品を好いていただいているようで、もとはYouTubeのコンテンツとして富士山頂で食べてくれたりしていたんですよね。ついには、当社のお客様相談室にご本人から「CMに出たい」と。

「ガツン、とみかん」江頭さんシリーズ/2022年にスタートした本シリーズは、“ガツン、としたおいしさ”を、江頭さんのキャラクターで体現。

―ご本人が直接⁉ それを受けてここまで展開していくところにも、赤城乳業さんのロゴにも入っている「あそびましょ。」を感じます。

「あそびましょ。」は、ガリガリ君25周年キャンペーンの時につきました。その2006年まで、当社にはメッセージがなかったんです。こういう魂を持った会社だということを、内外すべてのステークホルダーに知っていただくためにつくりました。
そこにはもちろん安心安全というベースがあって、そのうえに「あそびましょ。」がある。だいたい、埼玉県なのに群馬県の「赤城山」から名前をとっていたり、牛乳を売ったこともないのに「乳業」だなんて最初からふざけているんですよ(笑)。

―ではクリエイターからの提案は、「ええっ!」というものほどうれしい?

自分たちで考えるには限界があるので、ご提案をいただいています。もしその結果が思うようにならなかった場合も、「悪いのは自分たちだ」と、そういう考え方を教わってきました。クリエイティブがうまくいかなかったことを、クリエイターのせいにするな、と。そういう思いを持って一緒にやってきたので、より考えがマッチするのかもしれません。
そして何年も軸がぶれることなく継続させることの大切さも感じています。『Sof'(ソフ)』の「上だけ」も、ガリガリ君の歌も。あとは、正直でありたいという姿勢を大切に考えています。

―まさに、値上げの「お詫び広告」もそうですね。

ダメなところもデータもさらけ出して、クリエイティブに投影させる

―オリエンでは、商品の伝えたいことと、おもしろいことのバランスをどう伝えてアイデアを引き出しているのですか?

最近では、正直に商品のダメなところを伝えています。「ここがダメなんです」「今ここまでボロボロです」と話して、そこから構築するところもあります。データも包み隠さず、すべてをさらけ出しています。「このクリエイティブは効かなかった」ということも、ちゃんとフィードバックして。クリエイターさんと目的のところまで共有できたら、結果がまったく違うのを感じます。それも短期ではなく、中長期で。すると、何かが起こる。

特にオリエンで「おもしろくして」と話しているわけではなく、逆に「やっちゃだめ」もないのでクリエイターさんがいろいろなことを提案してくれるのだと思います。

―以前の伝え方は違ったんですか?

以前は、「この商品をこう売りたい」という伝え方でした。けれど、マーケティングの課題は10年ごとに変わっています。日本の人口が減っているため、薄利多売のチョコやスナック菓子、アイスといった嗜好品は数量減の時代に入ってしまったんです。物価高、円安、流通チャネルの変化に、お客様の嗜好の変化もある。

―チョコやスナック菓子に比べると、アイスは年配の方にも好かれている印象があります。

学校給食用カップタイプ

そうですね、嗜好品の中ではアイスだけが伸び続けています。アイスは、食べるときのストレスがあまりないために年代を問わないんですよね。アントニオ猪木さんが闘病中にガリガリ君を好んだというのは有名な話です。弱った体にもやさしく、ふだんでも気分をスイッチできたり童心に帰れたり。いろいろな効果を持つのがアイスクリームだと思います。

―病院用のガリガリ君がありましたよね?

あれは学校給食用で、病院にも少し流通しているという程度です。3年ほど前、嚥下リハビリ用のガリガリ君を病院の方と一緒に開発したんですよ。大変なリハビリでも、ガリガリ君なら少し前向きになれるのではないかと。アイスを通して日常をもっと楽しくできたら――可能性はいろいろとあると思います。

SL、アミューズメント施設、工場見学
――地域を楽しくする施策

秩父鉄道とは毎夏「SLガリガリ君エクスプレス」というコラボレーションを実施しており、今年でもう12年になります。SL列車のヘッドマークや切符にガリガリ君をあしらって、車内ではガリガリ君を食べられる。地域活性化をねらった夏の定番企画として、ご好評をいただいています。
SL列車が走るのは、熊谷駅から秩父の三峰口駅まで。沿線には「ふかや花園プレミアム・アウトレット」があり、そのフードコートに「あそぼ!ガリガリ君」というアミューズメント施設をつくりました。

「あそぼ!ガリガリ君」
愛犬用アイス「ワンワン君あまりんいちご」

ここでは屋外・屋内に楽しいアトラクションを設置し、ガリガリ君をモチーフにしたフォトスポットも設えています。また全国で発売されているすべてのガリガリ君や、愛犬用アイス『ワンワン君あまりんいちご』を買うことができます。あまりんは、全国いちご選手権で3回連続最高金賞を受賞している埼玉県が誇る苺。ワンちゃんも家族の一員としてアイスを楽しめるように、昨年6月から全国展開しています。

また2010年にはじめた工場見学は、工場見学ブームの先駆けになったと自負しています。お客様に製造工程のすべてをお見せしながら、楽しんでもいただきたい。日本屈指の暑い地域で冷たいアイスをつくっているということで、以前はPRにその事実を使っていました。
今は各社が工場見学をさまざまに進化させていますので、当社も春に少しリニューアルしました。大きな映像を使ったり、カーテンのように吊り下がったガリガリ君を真下から見上げられるスペースをつくりました。工場見学は抽選制なのですが、地元の小学校の社会科見学は別枠で受け入れを行なっています。

工場見学施設内。あちこちにガリガリ君があしらわれ、フォトスポットでは見学の思い出として写真撮影を楽しめる。

―工場だけでなく、深谷駅前の本社ビルも印象的です。

赤城乳業の原点は、中山道沿いの食堂です。以前は本社と工場を併設していましたが、2018年に創業の地へと本社を戻しました。深谷駅前に、見て楽しくなるような地域のシンボルとなることを目指して、「ガリガリ君のように、通りを歩く人に笑顔や勇気を与える存在」になるようにと建設しました。

―本当に、ガリガリ君はみんなの友達のような存在ですね。深谷市のゆるキャラ「ふっかちゃん」とコラボをしたりするんですか?

ガリガリ君は、「くまモン」と仲がいいんです。だからふっかちゃんとは、イベントで遭遇したらケンカしたりして。埼玉県のマスコット「コバトン」ともやり合いましたよ。ネタですけれども(笑)。
映画『翔んで埼玉』ではエンディングに出してもらいました。テレビ番組の企画では、地元の名産「深谷ネギ味」のガリガリ君をつくったこともあります。

赤城乳業本社。氷のような形の窓がちりばめられた、遊び心あふれる外観。

―最後に、ACCのグランプリを受賞されていかがですか?

念願のグランプリ、それも『Sof'(ソフ)』の企画だったので本当にうれしかったです。続けてきてよかったと感じました。ただ、これをきっかけに、ほかの賞の審査員を頼まれたり、パネルディスカッションに呼ばれたりと、本業とは違う仕事も増えて忙しくなりました(笑)。
グランプリをいただいたからには、お引き受けしないわけにはいきません。そして思っていることとは違うような真面目な話をしないといけませんからね……(編集部注:もちろん冗談だと思います)。
とにかく、ACC賞の影響力を実感しました。名誉な賞をありがとうございました。

text:矢島 史
萩原 史雄

赤城乳業株式会社
開発マーケティング本部 本部長
萩原 史雄
1995年赤城乳業に入社。エリア、CVS、GMSの営業を経て、2004年営業統括部を設立、マーケティング担当に。2006年にはガリガリ君のキャラクタービジネスを行うためガリガリ君プロダクションを設立。2015年マーケティング部設立。2019年商品開発部、2020年に商品開発とマーケティングを一体化するため開発マーケティング本部を設立。2024年に新規事業参入に向けアイスドリーム研究所を設立。愛犬用アイス(ガリガリ君の家族ワンワン君)をテスト販売開始。2022年から現職。