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ロコ情報スペシャル!
別府篇

 昨年のACC賞フィルム部門Bカテゴリーとマーケティング・エフェクティブネス部門でブロンズを獲得した、「100万再生で本当にやります!湯~園地計画!」。別府の老舗遊園地に温泉を掛け合わせるというとんでもない市長の計画発表動画は、市長の思惑を超えてたった3日で本当に100万再生を突破。公約どおりに実現された「湯~園地」は、報道やSNSを通じて、国内外に別府の存在を知らしめました。
 次々とユニークな施策を生み出す別府の観光戦略、広報活動はいったいどういった方針で行われているのでしょう。観光課の久保田氏に話を聞いてみました。

震災から立ち上がり、元気になるために

 すべての始まりは、2016年4月に起きた熊本・大分地震でした。別府に大きな被害はなかったのですが、風評によりお客様が来なくなってしまったんですね。当時の宿泊キャンセルは約11万人、被害総額13億円超えとなりました。別府は観光の町なので、お客様に来てもらわないと市民が元気になれません。“市民を元気にする”という命題のもと、さまざまな施策を行いました。「湯~園地」もその中のひとつで、自分たちの別府に誇りを持てるような舞台装置として企画されたものでした。
 まず、震災後わずか3週間で行った施策が、「Go!Beppu おおいたへ行こう!キャンペーン」。まずはポスターと新聞広告、SNSで、別府に被害はなく、問題なく楽しめる場所であることをお知らせしました。「今の別府にとって、お客様は(マジで)神様です。」というコピーで、これは2016年の新聞広告大賞をいただきました。

 続けて6月には、市民のみなさんに出演してもらった「別府温泉の男達」という動画を公開しました。政府の割引旅行券「九州ふっこう割」が始まる前にアップして、たくさんの方に別府へ旅行に来てもらおうという狙いです。それに間に合わせるためにはスピード感が何より重要で、これまで別府競輪場でつくっていた「別府競輪の男達」という動画のフォーマットを利用して、同じチームでつくりました。最初からつくっていたらコンペをしたり、とても時間がかかってしまいますから「『別府競輪の男達』の“温泉の男達”バージョンをつくってください」とお願いしたんです。大変な時だからこそ、ユニークで、見た人が楽しめるようなものをとお願いしました。
 とはいえ、これをタレントさん起用で撮っていたら違和感が出たと思います。本当に困っている当事者が言うからユーモアになる。出演協力のお願いをする時、「それどころじゃない」と断られるのではないかとドキドキしたのですが、実際は「なんでもやるよ!」と快く引き受けてくださいました。旅館の女将たちも、自ら「入りましょう」と温泉でサービスショットをしてくれて(笑)。

 この動画は福岡県内ではテレビCMとしても放映しました。結果として「ふっこう割」の別府のシェアは高く、宿泊数は回復。この流れで別府市の新たなビジョンとして“遊べる温泉都市構想”を定め、第一弾として発表されたのが「湯~園地」計画でした。

Go!Beppu おおいたへ行こう!キャンペーン

別府温泉の女将達「女将in別府温泉」篇

「湯~園地」実現秘話

 この計画は、「シンフロ」(2015年公開・大分県のPR動画)で音楽監督を務めた清川進也さんと市長との雑談から生まれました。世界一の温泉湧出量を活かした、別府にしかできない新しいエンターテインメントがつくれないかと。そこで、市民の心のふるさと的存在である老舗遊園地の「ラクテンチ」と温泉を掛け合わせた、「湯~園地」計画の動画公開に至ったわけです。
 ただ、実際に100万再生に到達するのに3カ月くらいはかかるだろうと思っていたのが、まさかの3日間で達成。PR会社を通してウェブPRはしていましたが、何より「達成したら本当にやるんだろうな」という別府を試す感覚が再生数を伸ばしたのだと思います。さまざまなメディアに、「どうするの?」「本当にできるの?」と取り上げられてさらに拡散して。それはもう、言ってしまったからには必死で動きましたよ(笑)。
 実のところ、こちらとしても「こんなことできるわけないじゃん」というスタンスで準備に入りました。けれど、動画は全国で話題になっている。すると別府のみなさんが、「大丈夫か、うちの市は」と一丸となって協力してくれたんです。ボランティアの数は、開催の3日間で延べ1200人になりました。終わってみればこのイベントは、ボランティアの方々の力なしでは成功できなかったと実感しています。炎天下の中、ジェットコースターが4時間待ちになってしまった時も、ボランティアのみなさんが並んでいる人に冷ました温泉をかけたり、うちわであおいだり、経口補水液を配ったり。おかげで混乱もなく、無事に成功させることができました。

クラウドファンディングの活用

 市長が「税金は使いません」とハードルの高い公約をしてしまったので、どうしたらいいかと我々も考えました。結果、クラウドファンディングを利用することに。達成額はひとまず1千万円としたのですが、「ストレッチゴール方式」を取り、2000万円になれば例えばメリーゴーランドにお湯を張れます、5000万円集まればジェットコースターに仕掛けができます、と提供してくれる方がゲーム感覚で参加できるようにしました。リターンは、8000円提供してくれた方には「湯~園地」の入園券。30万円となると市長とさし飲みができる、などさまざまに用意しました。最終的に、約3400万円をクラウドファンディングで集めることができました。
 一方で、地元の人々にとってウェブはまだ馴染みが薄く、開催の1カ月半ほど前からは新聞折込などにメディアを変えてご支援をお願いしました。企業様からの寄付も大きく、約9100万円の資金調達に成功しました。地元からの資金提供は、新聞媒体に移ってからどんどん増えました。