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ロコ情報スペシャル!
長野篇

長野県・佐久市の取り組みが、おもしろい。クリエイティブを携えたPR会社とタッグを組んで、「佐久市シティプロモーション」を制定。そのなかで、医療の充実をPRする「地蔵健診」、Slack(スラック)で気軽に移住情報をとれる「リモート市役所」、簡単に“試住”できる「Shijuly(シジュリー)」と気になる施策を次々打ち出しています。いったいなんのために?どんなことを? 佐久市の垣波さんと、オズマピーアールの早藤さんにお話を聞きました。

垣波竜太
長野県佐久市役所
広報広聴課 広報係

早藤優樹
オズマピーアール
統合コミュニケーション戦略部

移住促進に力、まずは医療の充実をPR

垣波(佐久市):佐久市はほかの地方と同じように、「少子高齢化」「若い人が出ていったきり戻ってこない」という課題を抱えていました。以前から移住の担当課を置いたり、実際に移住してきた人に市役所の“移住相談員”になってもらったりしています。
 日本各地で「地方創生」と盛り上がっているのを見て、佐久市も「若い人に住んでもらう」方向性でさらに力を入れていこうとなりました。シティプロモーションを一緒に推進する委託先を探すために、全国的に募集してオズマピーアールさんの提案がプロポーザルで選ばれました。

早藤(オズマピーアール):2018年佐久市シティプロモーションの方針策定から入りました。基本方針は、「知る・来る・住む」のサイクルをつくること。まず佐久を知ってもらうため、強みである医療の充実をPRすべく「地蔵健診」という施策を行いました。佐久には広域をカバーする中核病院が2つもあり、医師の数も多いのです。
 もともと、この地方には健康のまま天寿を全うする「ぴんぴんころり」がポジティブな言葉として浸透しています。商店街にある「ぴんころ地蔵」は健康長寿を願う地蔵として有名で、佐久の医療の充実をPRする際に相性がいいとアイデアにつながりました。前に立つと健康に役立つお告げをくれるロボットのお地蔵様を制作し、イベントに出したところ大盛況。

地蔵健診は、地域の名所「ぴんころ地蔵」がもと。寝込まずラクに大往生する
「ぴんぴんころり」のお地蔵様が、健康に関するお告げをくださいます。

 お告げは例えば、「『口呼吸』『ヨゴレ腸』『睡眠不足』に気をつけなさい。こうすることで、少しでも花粉症シーズンを過ごしやすくなるでしょう。」など。佐久のお医者さんが監修した健康関連のアドバイスが100種類、ランダムに発せられます。
 長野県は味噌をたくさん摂るせいか、昔は脳梗塞が多い土地だったそうです。食習慣を変えて病気を予防しようと、医療が農村に降りて啓発活動をするようになったという歴史的な背景があります。予防的な医療が地域に根付いている土地なのです。

垣波:地蔵健診のお地蔵様は、各種イベントやショッピングモール、都内のアンテナショップに出向くこともあります。ふだんは、プラザ佐久という新幹線駅のお土産屋さんに常駐しています。

「日本初」Slackでの移住プラットフォーム

早藤:ただ、地蔵健診は医療PRに重心があり、基本方針の「住む」につながるアイデアが必要だとなりました。

垣波:移住の担当課でも、コロナ禍に入って移住希望者が下見に来られないという問題が発生していました。この状況でも盛り上がれる、オンラインでできる施策はないだろうかと。
 そして地方のPRは、一発の打ち上げ花火になりがちです。単発で終わらない、継続的にできる施策が市の希望でした。そして今は実際に来ることができなくても、ここに住む人のリアルな声を届けられるものがよいとオーダーしていました。

早藤:移住希望者にヒアリングしたときも、「きれいごとではなくリアルな情報が知りたい」という声が多く出ていました。自治体の出す情報は横並びで同じになりがちで、「自然豊か」「育児しやすい」「補助金あり」ときれいなことが多い。けれど実際に移住するとなれば、「排他的ではないか」「寒くないか」とネガティブな部分も知りたいのは当然です。
 これらの課題から考えて、オンラインサロン「リモート市役所」のアイデアに結びつきました。市民からのリアルな声を移住希望者に届ける、新しい移住のプラットフォームです。

垣波:それも、Slackを使ってということで、最初はなんだ?となりました。「オンラインサロン」も「Slack」も自治体っぽくはないので。

早藤:LINEやFacebookでのオンラインサロンはやり尽くされていて話題になりません。メディアで取り上げられるにはという視点で考えたときに、Slackが候補に上がりました。あとは移住のターゲットが、身軽に動きやすいデザイナーとかエンジニアといった手に職を持った人たちで、Slackを使っている人も多くいたということがあります。ターゲットに合って、話題になって、どこの自治体でもやっておらず「日本初」と言い切れるところで選びました。

垣波:役所内では、聞きなれない言葉が多いというとまどいはありましたが、新しい取り組みに対する反発はありませんでした。市長への説明はオズマピーアールさんにも入っていただいたので、スムーズな理解に繋げられました。プロモーションをするならこれくらいやらないと、というところでいいアイデアをいただいたと感じています。