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ロコ情報スペシャル!
愛知篇

2011年からACCファイナリストに食い込み始め、2015年「総集編 ~戦争を、考え続ける~」で総務大臣賞/ACCグランプリを獲得。以降も毎年、社会を映すドキュメンタリーCMで受賞の常連となっている東海テレビ放送。これを世に生み出しているのは、広告会社とタッグを組んだ報道記者です。いったいどのようなコンセプトで、どのように生み出されているシリーズなのか。話を聞きに伺いました。

ドキュメンタリーCM
シリーズ誕生秘話

東海テレビ放送 報道部
記者/ディレクター 繁澤かおる

 2011年から弊社の圡方宏史と電通中部の都築徹さんがコツコツ続けてきたシリーズで、2015年「総集編 ~戦争を、考え続ける~」に取材担当として繁澤が参加しました。「おもしろいことやるから、入りなよ」って。じつは最初は、民放連のCM部門の賞を狙ってつくりはじめたシリーズだったんです。でも、東海テレビ放送だけではCMのつくり方がわからないので、電通中部さんの門をたたいたとか。だから当初は、賞レースのために始まった企画なんですね。
 とはいえこの時点では、社内外でこのCMシリーズの評価が高まっていました。その頃は賞レース云々よりも、ひとつの“リアルで今を映す”テーマをCMという枠で表現しようという目的に変わっていた。戦後70年を受け、東海テレビ放送がCMで何を表現できるのかと。
 参加するにあたって最初は緊張したのですが、上から「会社を背負わなくていいから」「好きなようにどうぞ」と言われて力が抜けました。

東海テレビ放送 報道部
記者/ディレクター 桑山知之

それなら、「嘘だけつかないようにしよう。ありのままでいこう」と。これが2015年にACCグランプリを獲って、社長が贈賞式に呼ばれて、失礼な話ですがようやく「すごいことなんだ!」と圡方さんの株が大きく上がりました。シリーズを続けられているのは受賞のおかげですし、いちローカルテレビ局のスポットCMが、ほかの地域など大勢の人に見てもらえるのもそう。とてもありがたいことだと思います。

 先輩方のさらにすごいのは、ずっと続けてきてグランプリまで獲ったこの仕事を、自分のものとして囲わず後輩に譲ったところ。おもしろい仕事は後輩に引き継いでいこうと言って、翌年からは繁澤が担当することになりました。前年に取材記者として入っていたおかげで、スタッフメイキングやCMの世界の方たちとの仕事の仕方について見ることができたのはよい経験でした。制作スタッフは以前のまま引き継がせてもらったので、スキームをつくる大変なところはやってもらえた形です。

テーマの決め方
「これを出してくれる会社の度量に感謝」

 2016年の「堀川、ヤバくない?シリーズ」は、会社のほうからこのテーマでやってみないかと降りてきたもの。堀川は、弊社がこれまで報道や番組で浄化について取り上げてきた思い入れのある川です。コピーライターの伊藤健一郎さん(電通中部)と数か月をかけて打ち合わせしていく中で、今までの路線ではなく私たち独自の路線でやろうと決めました。
 彼は、当時東京から来たばかりで堀川の近くに住んでいたのですが、「めっちゃ臭いです」と話していました。それで捉えたのが「ヤバいよね」という視点。東海テレビ放送は堀川がきれいになったと報じているけれど、多少マシになったとはいえまだまだ。いろんな視点で“ヤバさ”を伝えられるように、さまざまな演者を決めていきました。

ただ、「ヤバくない?」という言葉は報道で使わないだろうと、会社からたしなめられたりもしました。でもここには2つの意味が込められていて、ひとつは「汚くてヤバい」。もうひとつは「浄化のために動いている人かっこよくない?」という視点。当初の問題意識に“川に無関心な人が多い”があったので、若い人に訴求したいという思いを伝えたら上司もわかってくれました。この作品でつくった歌にも、みんなはポカンとした表情でしたが、これらすべてに理解をくれて、世に出してくれた会社の度量に感謝しています。

堀川CM撮影の1コマ

 ほかのメディアに話を聞くと、意外とつくりたいものをつくれていないと言う人が多いんですね。そんな中、うちはつくれる場なんだなあと実感しました。広告会社の方に対しても、普段はスポンサーの意向でできないことがたくさんあるんだな、こんなことでNGが出るんだなと思ったことがありました。東海テレビ放送にはつくることをおもしろがる、表現したいことを全部しようという伝統があるのかもしれません。
 この作品では、市長や市議をかなり突き上げたのですが(笑)、当時名古屋市政の記者クラブにいたおかげで、どこまでの表現が許されるのかなんとなくわかっていました。

 このCMを見た当の市議も理解してくれて、「これはいかんなあ!」と堀川浄化の議員連盟を立ち上げてくれて。先輩から、「嘘はバレる」とずっと教わってきたので、自分だけではなく取材相手にも嘘をつかないようにしようと心がけています。撮影前に正直に制作意図をお話しして、おもしろがってくれる寛容な方々に感謝しながら制作しています。