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©naked inc.

地方共創事業について

 2013年くらいからワーッと、地方自治体の「プロジェクションマッピングをやってほしい」という依頼が入るようになりました。何のためにやるのかと聞いてみると、誘客であり、活性化のため。「それなら、単なるプロジェクションマッピングのイベントを行うだけでなく、マーケティングを行い、その土地のストーリーを作り、各地域のブランドを育てていくことが必要ですよ」と課題解決の提案をするようになっていきました。1度やって終わりではなく、育てていく必要がある課題なわけです。自然と、各自治体でのブランディングディレクターのような立場に収まることが増えました。
 「日本一星空がきれいな町」阿智村や、佐賀県での「アート県庁プロジェクト」などは7年近く関わっています。阿智村では、10年後にどうなっていたいかを共に描き、イベントや施設に関すること、マーケティングやプロモーションも行なっています。
 佐賀の「アート県庁」も、昨年県庁から飛び出して他のエリアも繋げて街全体のイベントに発展しました。ちょうどコロナ禍もあり、佐賀の各地のお祭りができない状態になっていて、地元の人たちのお祭りへの思いを消さないためにも、ネイキッドがアレンジし、地域の方々とともにさまざまなイベントを佐賀城公園に集合させました。

2020年 NAKED SAUNA 阿智村 ©naked inc.
2021年 佐賀県「アート県庁プロジェクト」 ©naked inc.

メタバースで何ができるのか、何が必要なのか

 『NAKED GARDEN ONE KYOTO』は京都のさまざまな寺社仏閣やランドマークの空間を演出しながら、同時にオンライン上にも各所のバーチャル会場を用意し、そこでもコンテンツを提供しています。リアルとバーチャルでの体験は連動し合っていますから、両方が合わさって一つのイベントという形になっています。

NAKED FLOWERS 2022 バーチャルいけばな
©naked inc.

 例えば今回の二条城の試みでは、華道家の池坊専好さんが生けた実際の作品と、それをスキャニングしたバーチャル空間上の作品を用意します。リアルな参加者もメタバース上の参加者も、オンライン上で自分の花を持ち、両方の世界で作品に自ら生けることができる。QRコードを掲げると、バーチャル上に自分の花が反映され、リアルな作品の上にはプロジェクションマッピングで投影される仕組みです。
 リアルな体験とバーチャルな体験が、クロスオーバーすることがポイント。そしてバーチャル側が、現実の単なる再現ではない、バーチャルならではの世界観と体験であることも大切にしています。
 ネイキッドの全てのプロジェクトは、理想のイメージやストーリーを思い描くことから始まります。使える技術や枠組みから企画を組み立てるというよりは、アイデア先行型。そしてその理想のイメージを実現するために、どのような表現手法で作り出すか、そこにどの技術を使うか……という風にプロジェクトの解像度を上げていく。起点となるのは直感的なイメージですが、それを実際に生み出すために結果的にかなり複雑なプレーをしているような状態ですね。今回のようにリアルとバーチャルが融合するプロジェクトは特にそうです。
 インターネットが台頭してきたころ、「とりあえずホームページつくって!」という流れがあったように、今も「メタバース買ってこい!」という雰囲気で依頼が来ます。けれど、何のためにやるのか、私たちの生活を豊かにするために本当に必要とされるものなのかを大事にしなくてはいけませんよね。
 表現者の私たちにとって何より大切なのは「それって素敵なの?楽しいの?」というシンプルな感覚だったりします。そういったある意味での“体験者目線“のクリエイティブが、リアルであれバーチャルであれ、支持されるためには重要なのかもしれません。結局メタバース空間も、現実世界と同じように、人(ユーザー)が集いコミュニティが形成されていくことで初めて場としての意味が生まれますから。

最先端のクリエイティブで社会課題を解決していく

『NAKED SPOREV.(ネイキッド スポレヴォ)
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 昨年から、「スポーツのレヴォリューション」をコンセプトにした『NAKED SPOREV.(ネイキッド スポレヴォ)』という企画を立ち上げています。自らの動きをセンシングして、ジャンプ力やパワーを測れるアート空間で、言うなれば“すごい身体測定”“すごいスポーツレジャー施設”といったところ。エンターテインメントとして体を動かして、その動きをセンシングによりデータ化。筋力や骨格データが個人のスマホに登録できるというものです。
 スポーツ界の著名人や専門家の方々とも協議をしていますが、「結果何秒でした」で終わらず、「右足が曲がっているからこうするとよい」のようにフィードバックができる。今、自分をセンシングしてそういったアドバイスを受けるとすれば、大学や専門施設に行く必要があります。スポレヴォを町の健康施設に導入すれば、市民の健康増進に役立つ。キッズ向けの施設であれば、楽しく遊べて体の動きを上達させることができる。サラリーマンの福利厚生向けにモデル化することもできる。
 高齢化で、ウェルビーイングは社会課題となっています。自分が自分のデータを持ち、それを活かしていける世の中にしたい。地方創生だけではなく、クリエイティブで社会課題を解決するという自社のめざすところに沿った、このような事業も展開しています。

text:矢島 史

村松亮太郎
アーティスト。NAKED, INC.Founder。映画や空間演出、地域創生、伝統文化など幅広いクリエイティブプロジェクトを率いる。また、個人アーティストとしてもリアルとバーチャルの融合を特徴としたアート作品を国内外で発表してきた。 https://ryotaro-muramatsu.com

久保哲矢
株式会社ネイキッド プロデューサー。京都大学卒業後、インフラ会社を経て、2014年にネイキッド入社。その後、世界遺産・二条城やあべのハルカスといった関西エリアを中心に事業プロデュースを手掛ける。