ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSについてのお問い合わせ
【CM情報センター】CMの二次利用についてのお問い合わせ

現在、電話・FAXでの受付を停止しております。
詳細は、「CM情報センター」ホームページをご確認ください。

刊行物

TOP > 刊行物 > ACC会報「ACCtion!」 > 広告ロックンローラーズ

箭内: ありがとうございます、操上さんお待たせしましたね。操上さんはもう昨日も一昨日もずっと撮影をされてたそうですが。

操上: まあ、ありがたいことです。仕事は好きですし、現場で色々考えること、リアクションすること、観察することーーま、撮影ってシャッターを切るのは瞬間ですけど、ほとんど観察してどうリアクションするかという作業ですから。自分がいつも一定の感性の状態を保ってないとダメで、前の日の都合で今日は違うねっていう日は作っちゃダメなんですよね。いつも同じペースでものをちゃんと見て感じて反射できる、そういう作業なんですよ。
そんなことで僕の場合、何を撮りたいかというより、アイデアとしてどこまで遠く飛べるか、自分の感性がどこまで行けるのかという挑戦を続けているわけで、ある年齢になったからと言って、その感覚が鈍るっていうのはあんまり感じないですよね。

葛西: さっきひとつ言い忘れたんですけど、歳をとって良かったなと思うことのひとつに、感覚はむしろ鋭くなるというのはありますね。目に見えるすべてのものに対して若い頃に比べると感受性が高まったと思います。いま操上さんの言葉を聞いて思ったんですけど。

操上: それとね、今日気がついたんですけど、皆さん残り時間の話をしてるんですよね。オレそんなこと考えたことないんですよ。クリエイターってあんまり残り時間とか年齢で考えるべきものじゃなくて、いまやってることでどこまで行けるか? っていうことに尽きると思うんです。もう前に行くしかないんだと。そんな感じで走っておる日々でございます。

副田: 箭内さん、なかなかいい内容になってきましたね。

箭内: いや、副田さんのおかげですよ。

副田: あの、僕は今日72歳で最年少なんですけど。

箭内: 何度も言い過ぎです(笑)。年齢関係ないっていま操上さんが言ったばかりじゃないですか。

副田: まあ、だいたい仕事場に行くと最年長なんですよね。それで広告ロックンローラーズのゲストに呼ばれたときに、いまのところ副田さんが最年少ですって言われてもう本当にビックリして。まあ、コピーとデザインの話をすると、作詞家と作曲家な感じはあるんです。僕らはコピーライターが書いたものを、どうすればいい感じに世の中の人に見てもらうかっていうパートだと思ってるんですけどね。

宮崎: さっきもお話しましたけど、僕の場合、コピーやデザインで頑張ろうと思ったら、もうそこで人生終わっちゃうくらいつらいんでね。僕はもう入社してからというか、学生のときからネクタイとワイシャツで。そうすると得意先の納会に行っても、「宮崎さんってどういう職種の方ですか?」なんて聞かれるんですよ。でも、チームで仕事をするならそれでいいわけだし、利用できるものはなんでも利用するっていう考え方でやってきました。
そんな僕にできることって、仕事のやり方を受け継いでいくことなんじゃないかと。僕自身、小田桐さんのところに遊びに行ったり、坂田さんのお話を聞いたり、会社も違ういろんな人に会って話を聞いてましたから。

箭内: そう言えばもう20年以上前ですかね。僕、博報堂にいた頃、宮崎さんに役員室に呼ばれて、「今度auっていう携帯の会社ができるから、若い人を応援する広告を作ってほしい」って言われたんです。で、当時17歳の犯罪っていうのが週刊誌や新聞を賑わせていた頃だったので、「がんばれ17歳」っていうコピーを仮で置いたんですけど、これじゃダメだろうと思って、宮崎さんに「秋山さんに書き直してもらいに行ってきます」なんて言ってね。いま思うと、失礼なお願いの仕方なんですけど、僕も若かったので。そしたら秋山さんが「ふつうの17歳なんか、ひとりもいない。」っていうコピーを出してこられて、やっぱり企画ワードとコピーライティングは全然違うんだなと思って鳥肌が立ったことを、いま思い出しました。
じゃあ、時間も迫ってきましたので最後に皆さんひと言お願いします。大島さんを楽にするために(笑)、宮崎さんから戻って行きましょう。

宮崎: 僕がいままで考えたアイデアって、たぶん5%とか10%くらいしか実現してないんです。そういうのを今後ひとつでもふたつでも実現していきたいですね。あと、若い人ともっと話したい。こういう大人数の会じゃなくて、さしとか2~3人で話したいので、ぜひ遊びにきてください。

副田: NHKに「最後の講義」っていう番組があってね、生物学者の福岡伸一さんが出演していたんです。僕は福岡さんのファンで著作はほぼ読んでるんですけど、彼が番組の最後に楽屋でひと言メッセージを書くシーンがあってその言葉をパクります(笑)。「あとはまかせた!」。ありがとうございます。

操上: 今日のために、いくつか質問がありましたよね。その中に「コピーとは?」というのがあった。それで咄嗟に思ったのは、コピーってなんなのか? いろんな考え方があると思うんですけど、一番簡単に言うと“狙撃”なんですよ。どこのだれに向けたものなのか、その見極めがついていれば的は絞れる。で、的を絞ったら外すなってことだと思います。

葛西: 高校時代、友だちの影響でレタリングの通信教育を始めたのが、僕がデザイナーになるきっかけだったんですけど、当時、取り寄せた教材の中に、映画のタイトルをレタリングせよという課題があったんですね。その中に「唇からナイフ」っていうタイトルの映画があって、高校生ながらすごいイメージが湧く言葉だな思ったことをよく覚えています。いま操上さんが“狙撃”っておっしゃいましたけど、ああいうコピーライティングに近い言葉はデザイナーもドキドキします。
あと、やっぱり初心は忘れたくないですね。今日はいわゆる年配の人が、若い人たちの前で話す場なんでしょうけど、僕はまったく同じ場所にいる感覚があります。

小田桐:僕は最近、いつも考えているのは「表現ってなんだろう?」ということ。広告というのは、すべて表現であるというふうに言われてますけど、そうは言っても、表現されているものとされていないものがある気がします。最近の広告は、作る人がみんな表現をやめているんじゃないかとさえ思うほど、表現が見えなくなっている。でも、もし、広告が生きているとすればそれは表現しかないと僕は思っていますから、いまその問題に関心が寄っています。

大島: 小田桐さんのあとも辛いよね(笑)。いままで自分が目撃したコピーの中から好きなのを選べと言われたとき、必ずその中に入れるコピーがあって、それは「時代なんかパッと変わる。」というもの(サントリー/ウイスキー「シルキー」)。隣の人が書いてるから、言っちゃっていいのかわからないけど、そのコピーが僕にくれた衝撃はとんでもないもので、この歳までずっと頭にこびりついてます。ほんとに時代なんかパッと変わるものだし、そう考えた途端にいろんなことがすごく楽になってくるのね。コピーってそこまでの力があるんだ、ということを知ってほしいです。

秋山: 誤解を恐れないで言うと、ここにいるみんなも含めて、僕たちが表現するものはデザインです。コピーもナレーションも、表現は結果的にすべてデザインになります。だから全員がデザイナーだと言っても過言ではありません。僕は書いているものがいつもデザインだと思って書いているし、CMの編集もデザインだと思っています。そうすると表現に近づくことができます。
しかし、ひとつ条件があります。デザインは自分一人の感覚とパワーでやるべきものだと思います。複数で制作するものではありません。一人でコンピューターに向かうとき、たとえ文字を書いていても結果はデザインなんだ、見た人の脳の中でそれはデザインに変換されるかもしれない。そう考えて表現してみるのはどうでしょう?

text:河尻 亨一  photo:広川 智基