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箭内: いいリレーになってきました。じゃあ、副田さんお願いします。

副田: 事前に箭内さんから3つの質問をいただいたとき、なんかイヤだなと正直思ったんです。みなさんがその質問にただ答えていくだけで一時間半終わっちゃったら最悪だなと。ただ、佐々木宏さんから「広告の神様」とまで言われている小田桐さんが、この質問は素晴らしいとおっしゃったので僕はそれに答えます(笑)。
まず「広告とは?」。僕、広告でその国の民度が分かると思うんですよね。面白い広告のある国は豊かな国なんじゃないかと。だから、僕らはもっと面白い広告を作らなくちゃいけないんじゃないかって思います。僕らが先輩たちの仕事を見てるとき、もっといい広告が世の中いっぱいあったと思うんですよね。ところがいま現在はいい広告が少なくて、広告表現のクオリティが下がってる感じがすごく悲しい。僕らはもう結構もう時間がないのですが、若い人に期待しています。日本の文化を活性化するためにも、いい広告、面白い広告を作ってください。
次に「コピーとは? 言葉とは?」 コロナ禍になって時間に余裕ができ、毎夜読書に耽っています。昔読んだ村上春樹をまた読み返したり、NHKの「100分de名著」で紹介されていた安部公房の『砂の女』を読んだり。いま72歳、私、最年少ですが、15歳で工芸高校のデザイン科に入って以来、デザインの世界でずっと来てしまい、あまり文学や言葉の方向に行かなかったんですけど、この歳になってようやく言葉のすごさや深さ、ありがたさを知っていまさらながら震えています。
3番目「いま思うこと」。日本という国はこのままでいいんだろうか。豊かでもあるしいま現在戦争もしてないんだけど、方向性として良い方向へ向かってない感じがするんですよね。それをすごく憂いています。だから少しでも良い方向を向いてほしいと言うか、みなさんいい国を作ってください、お願いします。

箭内: 副田さん……。ありがとうございます。副田さんってそういう人ですよね(笑)。ひとしきり文句を言ったあと、だれよりもその宿題にいつも正面から答えてくださる。素敵です。じゃあ、最後に宮崎さん。

宮崎: 「広告とは?」って、僕もつまんない質問だなと思って。でもお歴々がお話されるんでね。ちょっと考えてみたわけです。そしたら結構人生戻り出したんですよ。自分は、なぜこの世界に入ったのかな? って。そう考えると、高校のとき、家にたまたまあった「文藝春秋」をパラパラめくってたら、どこかの社長さんが巻頭インタビューで、「本当はこんな仕事がしたかった」とあったのを読んで、好きなことをやらないと損だなと。
で、自分の好きなことは何かなっていうのを考え始めまして、大学を受けるときに建築科に行くのかなってちょっと思ってたんですけど、偶然一枚のポスターを見たんですね。「Black&White」のポスターで、それ見たときにキレイだなと思ったんですよ。それまでキャッチとか広告とかまったく知りませんでしたから、あれ? こういう職業もあるんだなと思って、美術系の大学に入ったのがきっかけです。
で、大学に入って美術の勉強するんですけど、僕は変わり者でビジネスに興味があったんです。経済誌とか『サントリーの秘密』みたいな本ばかり読んでいて、先生から博報堂なんか向いているんじゃない? って言われてたまたま入ったんですけど、入社したら、隣に座った同期にすごくセンスのいい人がいて、センスではこいつに絶対勝てないなと。で、どうしようって考えたときに、アイデアで勝負するしかないと思って、アイデアを出す訓練をしたんですよ。そういう意味では、広告代理店に入って最初の頃、20代にやった仕事でうまくいったのは「としまえん」とあと文春の「ナンバー」の創刊キャンペーンですかね。
「としまえん」なんかも自主プレでね、戦略的な入り方したんです。こういう表現をやったら面白いっていう話は最初からしなくて、まず「土日の観客動員を減らしましょう」っていう話を社長にしてね。それ、どういうことかって言うとーー。

箭内: 宮崎さん、とても面白いんですけど……やや長いかも(笑)。いままだ昭和じゃないですか。このまま令和まで行きます? 

宮崎: いや、ここでおしまいなんです。それで広告の面白さを知ったのと、オリエンがなくても自主プレをどんどんして、自分で拾いに行くようになったと。だからいまもやってて面白いし、ま、広告は僕の人生みたいなものなんですよね。

箭内: 秋山さんが、さっきちらっと時計を見ました(笑)。じゃあ、一巡したのでここでひと休みじゃないんですけど、坂田耕さんから預かったメッセージを代読します。坂田さんはマッキャンエリクソンの元クリエイティブディレクターであり、ACCの元理事長でもあり、この連載が始まる前には会報でインタビュー連載を持たれていて、広告ロックンローラーズの第0回にもゲストとしてお話いただきました。こんなメッセージです。
「小生は引退後に信州佐久の高齢者向けの住居に移りました。このたびのコロナによっていまのところ県内のみ移動可で、他県、特に東京には行くことができません。私は極めて元気いっぱいで、ここの施設併設のテニスコートとマレットゴルフコース、雨天の日は卓球など、ほぼ毎日スポーツに興じています。さて、このたびのサミット、重鎮の皆さんのお話を楽しみにしています。最後に現役ばりばりの若い皆さんにひと言。クリエイティブの力でいまの世の中の『う、くらいな』を『あ、かるいな』にしてください、なんてね、坂田」