刊行物

―ぐっと華やかな感じに！

 その翌年、「着帽手当」（ユニリーバ）という“シャンプーをこれまでと違う文脈で売る”試みをしました。仕事で毎日帽子をかぶる必要がある人こそ、頭皮への不安がある。会社が福利厚生でシャンプーを支給してはどうか、という新しい売り方です。

 僕、実はこれでカンヌを獲れたら、キャリアアップも考えていたんです（笑）。でも海外には「手当」という概念がなくて、結局かすりもしなかったんですけど。ダサいですよね。ただ、マーケティング分野では最も権威のあるエフィー賞でゴールドを獲れたのはよかったし、クライアントもとても喜んでくださいました。その後、タイでもこの施策がなされることになり、「逆アダプテーション」として国を超えて広がったのも嬉しかった。
 こうして統合キャンペーンの仕事でいくつか賞をいただいて。でも、何でもできるは、何もできない。ようやくTCC新人賞が獲れたこともあり、今は改めてコピーやCM含めた映像企画のスキルをしっかり伸ばしたいと思い、自分の軸足をもう一度、一から鍛え直しているところです。

CHERRY、発進。

 今年の夏にADK出資のもと新たに誕生したのが、「CHERRY」というクリエイティブ会社です。それぞれの武器を持った30代の6人が設立メンバーで、クリエイティブの技術をベースに、PRを軸としたキャンペーンプランニングから表現定着までできる組織です。名前は、あんまりかっこいいと逆にダサくなる恐れがあるので（笑）、愛嬌があって直感的に笑えるような候補を100くらい出してその中からノリで選びました。
 ここまで来るのに遠回りしてきたメンバーばかりなので、日本一謙虚なクリエイティブ・エージェンシーだと勝手に思っています。ADKルート以外でも、直にここに来てくれるクライアントもいらっしゃるのが嬉しい。大きいデパートでは何を買うべきか迷う。でも、小さなセレクトショップなら新しい発見があったり、本当に欲しいものが見つかるという感覚かもしれません。チェリーボーイズはとにかく前のめりですから、なんでもご相談くださいという気持ち。
 あと、いまの広告業界は混とんとしていて、以前の価値観が通用しなくなってきている。それが逆にチャンスだと思っていて、CHERRYでは新しい広告のかたちや、この時代に本当に必要とされる広告表現を追求していきたいと思っています。

―これからやりたいことを教えてください。

 特にこういうものをつくりたいというエゴはあまりなく、目の前のお題に対して何がいちばん効くか、新しいか、おもしろいか、を純粋に追いかけていきたい。まだまだ無名の存在なので、とにかく広告クリエイティブにまじめに向き合い、ショーケースを積み重ねることを意識したいです。一方で、会社を運営する立場としてマネジメント領域や新しい事業モデルにも自然と興味が出てきたので、今までとは違う形でクリエイティブに携わる方法を模索していきたいとも思っています。

 そしてこの取材をしてもらっているから言うわけではないけど、今は海外賞よりACC賞を獲りたいです。審査委員の方々はレジェンドばかりだし、名実ともに国内でワークしている作品が獲るのがACC賞ですもんね。昨年（2017年）はメディアクリエイティブ部門でゴールドを獲れて嬉しかったんですけど……今年は何も獲れなかったから、本当に悔しくてしょうがないんです。こんなインタビューまでして頂いているのに恥ずかしくてたまらない。この気持ちをエネルギーに変えて、来年のACCで少しでも目立てるよう精進したいと思います。

―「日本一謙虚なクリエイティブ・エージェンシー」って。「日本一イケメン揃いのクリエイティブ・エージェンシー」
くらいいえばいいのに。CHERRY、がんばれ！

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