株式会社電通 第4クリエーティブディレクション局
クリエーティブディレクター 岡村 雅子 |
カンヌ国際広告祭が終わって久しい。でも私にとって、カンヌはまだ終わっていない。取材は日本のみならず海外からも続いている。いったい現場で何が起きたのか。グランプリはどうして「EVOLUTION」になったのか。なぜ入賞数が例年より少ないのか。「オレの作品はなぜ入賞しなかったんだ?」という悲鳴にも近いメールも過去の審査員仲間から舞い込んでくる(笑)。例年になく世界中を混乱させた“2007カンヌ”。7日間の審査で何が起きたのか。ここにエッセンスをお伝えできればと思う。
今年のフイルム部門のキーワードは“転換”と“リアル”。CMとWebの共存を認めた“転換”の年であり、商品あるいはブランドの持つメッセージから逃げない“リアル”な表現に賞が与えられた。「広告づくりがしんどくなっている」のは日本だけではない。そんな環境の中で何ができるか、キャンペーンにおけるフイルムの意義を新しくしたものを評価しようじゃないか。メディアを超えて話題になる、それこそが重要だ。審査の現場を支配した空気だ。

フィルム部門グランプリ ダヴ「EVOLUTION」
グランプリを争ったのは、ドイツの風力発電会社「POWER OF WIND」、ナイキ「I FEEL PRETTY」、ソニー ブラビア「PAINT」、そしてユニリーバ ダヴ「EVOLUTION」の4本。最初優勢だったのは前者2本。が、最終的には「EVOLUTION」で決着。YouTubeを使った戦略自体が表現されたこと、広告の自己否定にもつながる表現を使って”リアルビューティ“というメッセージを訴えた企業の本気度が評価された。キャンペーン開始後1カ月で170万回の視聴を記録し、それがのちのCMオンエアにつながったという事実は、欧米の消費者から支持された証拠ともいえる。

審査員仲間と。みんな大きい!
21人いる審査員の半分が「10年前にカンヌのグランプリや金はもらいましたよ」といった“社長CD((C)岡村)”だったせいだろうか、いま思えば、表現単体のアイデアよりも構造のアイデア、俯瞰で見たときの新しさを楽しむ神様が多かった。そもそも今年は全般的におもしろいものが少なかったというのに、そんな神様視点で審査してしまうと、金銀銅該当作が多いはずがない。最初のメダル決めでは50本の入賞。「これじゃ若いクリエーティブはがっかりするよ」と、若手審査員陣(私も含む)が審査のラストスパートで“いわゆる表現のアイデア”の視点から29本を救い上げ、ようやく79本(昨年は102本)の入賞となる。特徴をあげるなら、この数年不振だったアメリカ(含むカナダ)がナイキ、ユニリーバ、コカコーラ、フォルクスワーゲンの元気な勢いで復活したこと、ギネス、アディダスといった強豪の不振、アルゼンチンから新しい表現がショートリスト段階からたくさん見受けられたことか。
そんな中アジアに求められたのは、博覧会的オリジナリティー。タイもインドもいかにも! という自虐お笑い路線しか評価されなかった。日本で唯一銅賞の「有人飛行プロジェクト」が票を集めたのも、オキシライド乾電池の特性から逃げない“リアル”さが、ダヴや金賞をとったフォルクスワーゲンのキャンペーンと同じ土俵にあると見なされたからだ。うーん厳しい。でも「日本製品は優秀である」という世界に認識されたイメージをうまく使えば、日本の可能性はまだまだある! と前向きに考えることにしよう。YouTube全盛、アマチュアが参戦してくる時代。“プロなら商品から逃げるな”と広告の神様から言われたと考えよう。

7月19日に開催された理事会の席上で、2007年カンヌ国際広告祭でフイルム部門審査員を務めた岡村雅子氏(電通)の報告会が行われた。岡村氏は、グランプリや受賞作品などを紹介しながら、今年のカンヌの傾向について説明した。
今年の参加者数は11000人。昨年の8500人からエラい増加の仕方である。そして世界中をかけめぐったパブリシティの数々。2007カンヌ博覧会、アル・ゴア米国元副大統領までが参加してくれたことだし、興行的には大成功ではないだろうか。
「生理的に気持ちがいい」作品が受賞した2006年が遠い昔のように思える。世界的な大混乱。いいんじゃないかな。誰かが考え続けるかぎり、広告は進化する。昨年のグランプリ受賞ギネスの「Noitulove」をひっくりかえすと今年の「Evolution(進化)」! 来年のカンヌで、広告はどんな進化をしているだろう。
イギリスの審査員ニックは今年の審査について、「Bloody hell!(地獄だったよ)」とキャンペーン誌に書いている。確かに私も体重が3キロ落ちた。日焼け止めを使うこともなかった。でもいっぱい闘ったし学んだ。来年はいち参加者として大ホールで気ままにブーイングしたいね、と審査員仲間とメールをかわす今日このごろである。
●フィルム部門
| 賞名 | 広告主 | 商品 | タイトル | 広告会社 | 制作会社 |
|---|---|---|---|---|---|
| グランプリ | UNILEVER | DOVE SELF ESTEEM | EVOLUTION | OGILVY & MATHER | REGINALD PIKE |
| 日本からのエントリー作品 | |||||
| ブロンズ | 松下電器産業 | オキシライド乾電池 | 有人飛行プロジェクト | 博報堂 | ハット |
| ショートリスト | ミエライス | お米の宅配 | 配達 | 電通中部支社 | シースリーフィルム名古屋支社 |
| ショートリスト | トヨタ自動車 | TOYOTA(企業) | MEET | 電通 | ROKKIT London/LOGAN Los Angeles/STILLKING FILMS Prague |
| ショートリスト | ナップスター・ジャパン | ナップスター | 家族 | 電通 | 東北新社 |
| ショートリスト | KONAMI | ウイニングイレブン | ワンタッチパス | 博報堂 | 東北新社 |
| ショートリスト | KONAMI | ウイニングイレブン | フライ ワンツーパス | 博報堂 | 東北新社 |
| ショートリスト | 富士ゼロックス | 企業 | ピアノ編 | TUGBOAT | 東北新社 |
●ラジオ部門
| 賞名 | 広告主 | 商品 | タイトル | 広告会社 | 制作会社 |
|---|---|---|---|---|---|
| グランプリ | MASTERFOODS | SNICKERS | HOEDOWN | CLEMENGER BBDO | NYLON STUDIOS |
| 日本からのエントリー作品 | |||||
| ショートリスト | サントリー | 愛鳥キャンペーン | 鳥劇団 | 電通 | ランダムハウス |