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箭内: 映画はどうなんですか?

山内: 映画は演劇よりは広告につながってますよね。少なくとも撮影するわけだから。ところが僕がいまやっているような映画は、これまた当時の経験が全然生かされてないんです。機材からしてすっかり変わっているし、CMのスタッフは使えないので。CMのスタッフってお金がないと動けないじゃない?
助手がつかないとダメだったり。でも、僕がいまやっているのはそういう世界じゃなくて、演劇の延長線上にある映画だから。

箭内: 人脈も何も使えないんだ。

山内: 使えない。この何十年の経験が本当に生かされてないなと思うんですけど、「それはそれでいいか」という感じ(笑)。

箭内: そっか、それで岸田戯曲賞の最年長受賞者になるわけですね(2015年)。でも、山内さんが始めた歳から考えると、受賞まで相当早いですよね。ほかの人が20歳頃から始めてるとしたら。

山内: そうそう。そうなんです。演劇も映画も、全然ベテランな気持ちはしてないですね。だから残された時間が気になる。体力的にもね。

箭内: 今後の人生の展望って、どういうふうに考えているんでしょう?
撮れる日まで映画を撮る、演劇を続けていたいっていう感じなんでしょうか。

山内: そういう感じですね。それで死んでから、「あ、こんなのつくってたんだ」というのが何本か出てくる。まだ公開してなかった映画とかね。そういうのが夢です。

箭内: 今日、お話うかがっててもわかるように、山内さんて、みんなが追いかけてこられないくらいの速度で、いろんな世界を駆け抜けてますよね。山内ケンジ大回顧展みたいなのがあったら、ものすごいことになりそう。縁起でもないけど。

山内: ありがとうございます(笑)。

箭内: CMにはあんまり興味ないと思うんですけど、いまも広告をつくってる人に外から声をかけるとしたらなんて言いますか? メッセージじゃないんですけど。

山内: うーん。難しいなあ。なんだろう?
全然退いてるとはいえ、CMをまったく見なくなったわけではなく、ウェブCMなんかも話題になったら見たりしますからね。「見てますよー」ってことじゃないですか?
CMの関係者って、本当に会ってないからなあ…。あ、でも、こないだボスのCMに出たんですよ、ちょっとだけですけど(クラフトボス「宇宙人ジョーンズ・稽古場篇」)。

箭内: そうなんだ。呼んでもらえるとうれしいですよね。僕もこのあいだオダギリ(・ジョー)さんのドラマにちょこっとだけ出してもらったんですけど。そう言えば、昔、山内さんに何個かCMのナレーターやれって言われてやりましたよね。あれもうれしかったし、勉強になりました。「ハイチュウ二粒、増量!」とか。

山内: あのナレーションはよかった、本当に。

箭内: あと「パチスロ必勝ガイド」とか日清の「健多郎」とか、僕が関わってないCMにも呼んでくださって。

山内: ハイチュウで声が気に入ったからですね。なんだろう?
やっぱり面白いんですよ。箭内さんのナレーションが。叫んでるのに何も言ってなくて(笑)。何も言ってないのに、情報になっている。喜んでも悲しんでも怒ってもいない。その感じがいいですよね。

箭内: いや、光栄でした。呼ばれてうれしい思い出がいつまでも残るって、ものづくりのひとつの醍醐味だと思うんですけど、いまってなかなかそれも難しかったりして。最後にもうひと言くらい広告業界にいただけないですか。

山内: いやあ、「大変ですねー」くらいしか言いようがない。どうなっちゃうんでしょう?
テレビ自体がもう風前の灯という感じがしますから。見たいものが好きに見られる時代になっちゃって、CMの居場所ってどこなの? と。
でも、商品は世の中からなくならないじゃないですか。資本主義社会はまだ当分続くでしょう。だから、企業は「どういうふうに広告を打てばいいの?」って悩んじゃいますよね。そういう時代になりつつあると思いますけど、箭内さんはいかがですか。

箭内: その渦中にいる身ですから、ズキンときますけどね。でも、やっぱりね、今日思ったのは、コンコルドを山内さんが辞めたというのは絶望的です。広告という文化のひとつの柱がここで折れましたね。

山内: そうですかね?

箭内: 100年後、200年後にね、もしかしたらCMが博物館に飾られる日が来るかもしれないじゃないですか。ロートレックの絵もポスターだったわけで。そういうときにこの時代の爪痕くらいは残せるか。その矜持を持って働いてないといけないなと今日改めて思いました。激励をいただいた気持ちです。

山内: ちなみに箭内さん、CM、まだやってるんですか?

箭内: そう言われるんですけどやってますよ!
それ以外もやってるんですけど、自分の中で、テレビCMの割合が5割を切らないようにしようと思って頑張ってます。

山内: 雑誌の「風とロック」は出てるの?

箭内: 出てます。

山内: すごいね。創刊何年ですか?

箭内: 創刊15年ぐらいですかね。自分で自分に発注する仕事と、人に頼まれる仕事と両方持ってないといろんなバランスがとれないし、それぞれ持ち帰りし合えないと思って。その両側を知るのは、すごく面白いんです。

山内: 箭内さん、もともとそういうやり方ですもんね。

箭内: そこしか空いてる道がなかったんですけどね。ま、でも、山内さんは変わらないですね。

山内: 箭内さんも全然変わらない。髪の毛の色も変わらない(笑)。

箭内: 思い出しますね。山内さんに「企画が通せませんでした!」って何度謝りに行ったことか。でも、山内さん、いまは演劇と映画に全力投球してらっしゃって、改めてすごいなあと。

山内: とはいえこの歳ですから。もう、そんなにオファーがないんですよ。たとえば、商業映画のこれをやってくださいみたいな依頼だったり、演劇でも「この原作で、この大きな劇場でどうですか?」みたいな依頼が。だから、超ビンボーな演劇と映画に集中せざるを得なくて、それはむしろこの歳になってよかったことですね。そういうメジャーをやるかどうか、迷わなくて済むから。まあ、何か少しは残していけたらと思ってます。

text:河尻 亨一  photo:広川 智基

箭内道彦(やない・みちひこ)

クリエイティブディレクター
1964年生まれ。54歳。東京藝術大学卒業。1990年博報堂入社。
2003年独立し、風とロックを設立。現在に至る。
2011年紅白歌合戦に出場したロックバンド「猪苗代湖ズ」のギタリストでもある。
月刊 風とロック(定価0円)発行人。
福島県クリエイティブディレクター
渋谷のラジオ理事長
東京藝術大学美術学部デザイン科教授

山内ケンジ(やまうち・けんじ)

劇作家、映画監督
生まれてから長い間CMディレクター&プランナーとして活躍、「NOVA」「コンコルド」「クオーク」「ソフトバンク」等話題のCMを多数手がける。
一方、04年から劇作を始め、2014年「トロワグロ」で第59回岸田國士戯曲賞を受賞。
映画は『ミツコ感覚』(11年)、『友だちのパパが好き』(15年)、『At the terraceテラスにて』(16年)。最新作は『夜明けの夫婦』。2022年、公開予定。