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箭内: でも、太田さん、こういうエンタテインメントの世界もずっとご覧になってきた中で、いまっていろいろ変わってきてる最中じゃないですか。そのへんどう思われます?

太田: エンタテインメントに限らず、企業のオーナーとかね、経営に携わる人たちの態度が確実に変わってきていますよね。「あんなのよくOKになったわね」ということが、直接経営者と交渉する中でできる時代になってきていると思うんです。ビジネスの最前線にいる人がちゃんとビジョンを掲げるようになったし、そうすることでやっぱり変化は起こるんだなあと。
「天然水」だって経営に携わる人がものすごくちゃんとビジョンを掲げていて、結果4年間で「い・ろ・は・す」をひっくり返したわけだから。ただ怒ったり嘆いたりするんじゃなく、「じゃ、どうすんの?」っていうことまで考えられる次の世代が出てきてるんでしょうね。
そう言えば、佐々木さんからのお声がけでリオ五輪の閉会式(Flag Hand Over セレモニー)を手伝ったんですけど、あのときにたくさんの30代の人たちと仕事したんです。椎名(林檎)さんとか、MIKIKOさんとか、菅野(薫)さん、児玉(裕一)さん、真鍋(大度)さん。みんな若い。
そのとき震えるくらい感動したんですね。彼らが「自分で問題をつくって自分で答えを出す」ということを、カラダと時間を使って当たり前のようにやっているそのプロセスを体験して。その結果できたものが、ちゃんと世界の人たちに見られるものになっていることがすごいなと。明らかに新しい人たちが育ってきてますよね?

箭内: 拳を振りあげて怒るだけでは、もう何も変わらないんだっていうことに、みんな気づき始めましたよね。そのためにはアイデアや面白いことが必要だってすごく思いますね。

太田: 私は彼らと一緒に具体的なアイデアを出すことはできなくても、「檄文」を書くことはできる。その檄文がね、結構上の人たちには効くわけですよ。その人たちのモヤモヤを言語化して、それを解決するためには若い人のこういうアイデアが必要なんですっていうふうに言うと、みんな腹落ちもするし、ちょっと震えてる感じもあって。だから自分で"檄文屋"って言ってるんですけど。

箭内: 檄文屋(笑)。

太田: なんでもかんでも檄文になるのもよくないけど、ベテランは檄文屋として生き残れますよね。

箭内: ということは忙しいですね、これからも。

太田: まあ。でも私はそのパーツをやるだけだ、といまは自分の中で整理してますから。もちろん、思ったことを形にできるからこの仕事を選んだのだし、40代までは「とにかく形にして外に出したい!」なんてもがいて忙しかったけど、次第に「それ、ちょっと違うな」って思い始めてね。いまは「私ができることは、私やっときますから」っていうふうになっていて。だから精神的にはすごく楽なんですよ。

text:河尻 亨一  photo:広川 智基

箭内道彦(やない・みちひこ)

1964年生まれ。53歳。
東京藝術大学卒業。1990年博報堂入社。
2003年独立し、風とロックを設立。現在に至る。2011年紅白歌合戦に出場したロックバンド「猪苗代湖ズ」のギタリストでもある。
月刊 風とロック(定価0円)発行人。
福島県クリエイティブディレクター
東京藝術大学美術学部デザイン科准教授

太田恵美(おおた・めぐみ)

コピーライター
1951年3月生まれ。
高校まで京都ですごし、大学から東京へ。
卒業後は広告制作会社を経て1980年代90年代は電通嘱託コピーライターとして在籍
現在は太田恵美事務所の主宰として、電通にも在席
映画『かもめ食堂』のコミュニケーションデザインに参加
映画『めがね』のプロデューサー、作詞など