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現場への丁寧な説明と、人々の反応
太陽光発電?のネガティブイメージをどう払拭するか

営農型太陽光発電

―TBS GXは最初の投資先が栃木県塩谷町とさくら市だったとありますが、地元の人々の反応はいかがでしたか?

きちんとご理解いただくため、すでに先行事例がある自治体を優先して選びました。自治体の農業委員会の許可も必要ですので。そして、手分けして近くの住民の方に説明にあがっています。
私たちは、地域の活性化や農業の持続可能性に貢献すると信じていますが、やはり農地の上にパネルが建っている光景というのは、まだまだ当たり前ではありません。賛同をいただくまでのプロセスは丁寧にしていきます。今のところ、拒否反応や反対意見などは聞いていません。「反射が近隣の住宅に当たらないか」とか、「隣の農地に日陰ができないか」など、細かく確認しています。

―太陽光発電と聞くとメガソーラーのイメージが強いから賛否両論あると思ったんです。

ニュースになるのは、「自然を破壊している」と周辺住民が困惑するような開発ばかりです。これは再エネの開発に限らずですが、どうしてもネガティブな事象のほうが関心を呼びやすい傾向がありますよね。一方で、よい取り組みはニュースになりにくい。そこは報道に携わってきた立場としても忸怩たる思いがあります。よりよい社会とするためには、先行しているよい取り組みを、もっと広く知ってもらわなければならない。今、農業もエネルギーも、その持続可能性が本当に深刻な問題なので、この事業に携わり、改めて強く感じています。

―政府の発信にしても“よいものを進めていく”という視点が抜けていますよね。“悪いメガソーラーが増えたから取り締まる”一辺倒だと、国民の受け取り方もそうなります。僕たち一人ひとりが見る目を変えていかないといけないと思いました。

営農型の概念は日本発祥といわれています。我々からすると、非常に画期的な取り組みですが、太陽光発電というと、おそらく多くの人が一部で問題になっている自然破壊型のネガティブなメガソーラーのイメージをもってしまっている。環境と調和し、農家にもメリットがある営農型については、ほぼ知られていない。そんななか、アメリカや韓国のほうが営農型をどんどん取り入れ始めていると聞きます。
“発祥の地”は千葉県市原市なのですが、千葉で取り組んでいる農家の方は、悔しいとおっしゃっていました。

視聴率以外の新たな価値に?
制作過程がサステナビリティであったかどうか。

―海外の報道をみると、気候変動が人権問題として論じられていますが、日本ではそうならない。これは課題だと思います。

おっしゃる通りです。気候変動は、社会的に弱い立場にある人ほど、甚大な被害を受けることを、深刻な人権侵害なんだということを、日本ではまだまだイメージできていない。なぜか「暑い夏からどう身を守るか」と防災的な観点で取り上げられがち。メッセージの出し方が大事ですよね。

―自然は厳しいものだから、という意識が日本にはある。防災になってしまう。防災の感覚で気候変動を捉えるから人権問題に結びつかないという感覚は、私にもありますね。

地震、津波、台風にどう対応するかをソリューションとして報道しがちなんだと思うのですが、気候変動は私たちの意識の持ち方次第で改善も悪化もする。ほかの自然災害と違うというふうに意識を変える必要がありますね。

―今後、番組に視聴率以外のもうひとつの物差しができますね。同じ番組が2つあるとしたら、サステナビリティに配慮してつくった番組のほうを広告主は選ぶはずです。

そうなってほしいですね。イギリスではいかにCO2を出さず番組をつくったかを計測して開示する取り組みが進んでいます。日本でも進めば、どういった制作過程を経たのかにもっと関心が高まるような気がします。

―海外では番組のカーボンフットプリントが表示されているんですか。

国営放送のBBCが音頭をとって立ち上げたアルバート認証という制度があります。番組制作過程で出るCO2や廃棄物の量を数値化し、削減への貢献度に基づいて3段階の認証が与えられるものなのですが、BBCではその認証をとらないと放送できないんです。BBCではすべての番組で義務化されているそうです。
当社でも過去に1度、カーボンプリントを可視化して番組づくりを行ないました。収録で出たごみの量を調べたり、使い捨て容器でない弁当を探して発注したりと、細かい計測は相当手間がかかり、大変だったと聞きますが、一方で、「認証をもらえることで番組に誇りがもてた」とプロデューサーはコメントしています。
こうした、サステナブルな制作過程をとったことを評価する制度がアジアでもできたら、といった話は、アジア圏の海外メディアの方と話したこともありますが、始めるには相当の覚悟が必要です。個々の制作現場に新たな業務が発生することになりますし、やるとなれば継続的に、ある程度は網羅的にやっていかなければと思いますので。

サステナビリティを考えれば、やるべきことは無限にあります。優先順位がむずかしい。メディア企業として、何を率先してやるべきか、どうせやるなら「社会を動かす起点になる」覚悟で取り組むことを大事にしたいと思っています。

お仕着せではない“おもしろい”コンテンツで
社会課題に気づかせる

―営農型の現場を舞台にしたドラマやバラエティがあったらおもしろそうです。

去年、『陽なたのファーマーズ フクシマと希望』という映画が上映されました。我々がつくったものではありませんが、SDGsキャンペーンの時に取材させていただきました。原発事故を受けてすべてを失った農家さんが、農業を持続可能なものにするため売電と併用することで立ち上がっていくドキュメンタリーです。
ここでは、パネルの下でいろんな作物の栽培に挑戦しているんですが、おもしろかったのは、パネルの架台の柱をブドウ栽培の支柱にも活用しているんです。ブドウ栽培は設備投資にお金がかかるらしいんですが、若手の発想で「これを使えるのでは」と思いついたそう。試行錯誤を繰り返し、私たちが取材に行った際には、パネルの設備に絡まるカタチで立派なシャインマスカットがたわわに実っていて、美味しくいただきました。

―ここでできたブドウを食べてみたいです。

ゼロから立ち上がったストーリーを知り、応援したくなって、個人的にぶどうの木の命名権をもらうサポーターになってしまいました(笑)。やはり、ストーリーが大事ですね。牛もいるし、エゴマや大豆のほか、希少なイエローマスタードも育てていて、加工品の粒マスタードが大人気とのことでした。発電した電気は地産地消のエネルギーとして地域に還元する仕組みを確立しています。

―すばらしいですね。でも、やはりドラマで見たいな。社会課題に、お勉強感なく興味を持たせられる力が、ドラマにはある。たとえば男性に「ジェンダー平等の勉強をしなさい」と言えば、ほとんどの人は嫌がります。でも『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBSテレビ)はみんな見たじゃないですか。主役の勝男に自分を重ねて変わったという男性は、たくさんいると思うんですよね。エンターテインメント、ストーリーの力でみんなを巻き込んでいく。
このTBS GXの試みやソーラーシェアリングのよさが広がって、自分ごととして考えてくれるようになるとすばらしいのではないかと。

橋口さんに言っていただければ、うちのプロデューサーも動くかもしれません(笑)。

―営農型発電の現場で、竹内涼真さんが立っただけで、みんなが見ますよ。一気に認知度が高まる。そういう力がテレビにはある。広告にもあると思うので、僕自身もできることをやっていきたいと思います。

「レモンや抹茶の残滓で化粧品?!」「摘み取り体験」――
営農型を広げるためのさまざまなアイデア

TBS-GXの事業イメージ図

―将来的には、営農型発電を超えたビジネスの構想があると聞いたのですが、現時点でプランがあれば。

まだまだ先の構想、できたらいいなの世界ですが、TBSグループはライフスタイル事業で雑貨や化粧品の小売り、また教育関連の事業も展開しているので、放送以外の可能性もいろいろあるのではと思っています。発電する農地でつくられる農産物、例えばお米や麦、大豆、さらにはレモンや抹茶、ブドウなど・・・これらの商品展開の可能性は、これまで何人もの農家の六次産業化の取り組みを聞いていて、いろいろあると思います。レモンや抹茶の残渣は化粧品にも活用できると聞きます。

子どもたちにブルーベリーの摘み取り体験をしてもらいながら、「ここでおひさまの力で電気も生み出しているんだよ」という体験・学びの場の提供もできます。
また、近くの福祉施設と連携して障がい者の方に楽しみながら摘み取りという仕事をしてもらっている現場もあります、こういう取り組みもとても参考になります。
今後もさまざまなアイデアを取り入れられたらおもしろいなと思っています。

―まさにさまざまなストーリーが、うまれていきますね。今から楽しみです。今日はありがとうございました!

執筆協力:矢島 史  photo:村上 拓也

法亢 順(ほうが あや)
株式会社TBS Green Transformation 代表取締役社長
TBSに入社後、駆け出しは報道カメラマン。記者として事件事故、災害や政治などを取材、報道・情報系番組の制作に長年携わる。2019年~報道番組「Nスタ」編集長、プロデューサー。24年~サステナビリティ推進部門でESG施策やSDGsキャンペーン、イベントを統括。25年1月からTBSホールディングス・サステナビリティ創造センター長、6月からTBS Green Transformation代表取締役も兼務。