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小池: 菊地さんは佐賀町エキジビット・スペースの活動を彼が学生の頃から見ていてくれたんです。「スタジオ食堂」と言って、彼も表現の場づくりから行う活動をしていて、佐賀町エキジビット・スペースを閉めるときにもずいぶん助けてもらって。
そこから20年経ってようやく去年、まとめの出版と展覧会をやりました(「佐賀町エキジビット・スペース1983-2000 現代美術の定点観測」)。そのときのポスターも菊地さんにお願いしたんですけど、「オルタナティブ」から「ウーマンパワー」、「サイトスペシフィック」に「インスタレーション」など、我々の活動を象徴するカタカナの表現をメモで渡したら、それらをビジュアル・ランゲージとして見事にまとめてくださって。

箭内: 中村政人さんや菊地敦己さんら、年下の世代と素敵な関係を築かれているのがいいなと思ったんですけど、小池さんにとって年齢の感覚ってどういうふうにあるんですか。

小池: わりあい昔から世間の感覚と関係なく生きてきちゃったというのがあって、「歳のくせに」とか「歳なり」にというのはどうも身につかないですね。好奇心を熟成して何かの表現に変えることと年齢は関係ないみたい。もちろん、自然に木が枯れていくように、生物的な変化はあるんですよ。フィジカルな面では年齢を感じますから、あまり無理はしないようにしてますけど。

箭内: 女性の社会進出に関しては? いまACCの審査委員もできるだけジェンダーバランスをとっていこうという動きがあって、僕もその話し合いに加わったりしたんですけど、女性たちに、あるいは男性たちに小池さんから助言なのか、苦言なのか、ちょっとお話いただけたらなと。

小池: そこも私はあまり意識しないできたんですよね。デザインもアートもそうだと思うけど、広告の仕事は実力の世界だし、私や石岡瑛子さんのジェネレーションというのは、女であろうが男であろうが、仕事は自然に受け入れてきたというか。女性だからマイナーな立場でいなさいといった空気を、私自身は感じたことがないくらい、のんきにやってきました。いま思うと意識しなかったことが、ちょっとまずかったのかなと思うくらいでね。
むしろ日本の社会や表現者の世界で、ずっと気になっているのは性の商品化です。コマーシャルやテレビ番組を見てても、かわいいとかセクシーだっていうそのこと自体は悪いことではないんだけど、ヘアだったりお化粧だったり、男性社会が求める類型的な女性イメージがいまだに氾濫していて、「女らしさ」のステレオタイプから抜け出ていない。それは世界でも最下位くらいにひどいんじゃないかと。そのことにはとっても腹を立てています。

箭内: わかります。性のステレオタイプを共感や共有の手立てにすることは、広告制作者側も結構あるんじゃないかと。

小池: そうですね。でも、これは受容する側、つまり見る側の問題でもありますから。社会全体の問題で、どこか一カ所を突けばいいかというものではないかもしれない。

箭内: ただ、明らかにいま、これまでの常識や固定概念が崩れはじめている中で、広告制作者たちも、従来のステレオタイプを活用するのとは違う広告づくりを心がけたいですね。小池さんと無印良品の関わりのようにはいかないかもしれないけど、できないのであれば、少なくともそのことを悔しいと日々思っていたい。それこそ小池さんが佐賀町エキジット・スペースを始めるときに提唱された「オルタナティブ」な発想や方法もあるんじゃないかと。

小池: 「オルタナティブ」という考え方、これはいまの日本に一番必要なんじゃないでしょうか。社会が硬直化してますから、そうじゃないもうひとつの選択肢もあるという提案は、ますます大事になってるんじゃないかと思います。

箭内: 東京藝大の僕の研究室、"Design Alternative"っていうんですよ。ほかの先生から、「そんな名前つけてずるい」って言われたんですけど(笑)。でも、今日お話して改めて感じたのは、オルタナティブな何かを志すときには、小池さんのようにね、芯はしっかり持ちながらも穏やかで柔かいというか、人に呼びかけたり包んでいったり、周囲に対して開いていることが大事なんでしょうね。なんて言うんですかね? 目くじら立てたり目を吊り上げて怒るようなオルタナティブだと、孤立してしまうんじゃないかと。

小池: 今度の本(『美術/中間子 小池一子の現場』)のタイトルに、「中間子」という言葉を使ったのも、いまのオルタナティブの話と関係があって、何かと何かをつなぎとめる第三の存在って必要なんです。表現の仕事でも、アーティストやデザイナーだけでは包みきれない部分がありますから。
あと、私、人の話を聞くのが好きなんです。聞く人でありたいと思ってる。だけど、たんに受け身っていうのではなく、素晴らしい人に出会うと突き進む自分というものもあって。だから若者たちには、面白いおとなに会ってほしい。自分が突き進むきっかけになるような出会いを求めてほしいです。

text:河尻 亨一  photo:広川 智基

箭内道彦(やない・みちひこ)

クリエイティブディレクター
1964年生まれ。54歳。東京藝術大学卒業。1990年博報堂入社。
2003年独立し、風とロックを設立。現在に至る。
2011年紅白歌合戦に出場したロックバンド「猪苗代湖ズ」のギタリストでもある。
月刊 風とロック(定価0円)発行人。
福島県クリエイティブディレクター
渋谷のラジオ理事長
東京藝術大学美術学部デザイン科教授

小池一子(こいけ・かずこ)

1936 年、東京都生まれ。
クリエイティブ・ディレクター、佐賀町アーカイブ主宰。武蔵野美術大学名誉教授。
1980 年の「無印良品」創設に携わり、以来アドバイザリーボードを務める。
ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展日本館「少女都市」(2000 年)、「田中一光とデザインの前後左右」(2012 年、21_21 DESIGN SIGHT)他多数の展覧会の企画、ディレクションを手掛ける。
1983 年に佐賀町エキジビット・スペースを創設・主宰し、多くの現代美術家を国内外に紹介(〜2000 年)。現在、この活動は「佐賀町アーカイブ」(2011 年〜)に引き継がれている。
著書に『美術/中間子 小池一子の現場』(2020 年、平凡社)、訳書に『アイリーン・グレイ——建築家・デザイナー』(2017 年、みすず書房)他。令和2 年度文化庁長官表彰。