ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSについてのお問い合わせ
【CM情報センター】CMの二次利用についてのお問い合わせ

現在、電話・FAXでの受付を停止しております。
詳細は、「CM情報センター」ホームページをご確認ください。

刊行物

TOP > 刊行物 > ACC会報「ACCtion!」 > 広告ロックンローラーズ

篠山: だけど全然いやじゃないですよ。広告の仕事もっと来たらいいなーと思うもん。これ読んで頼んでくれた人には、2割引でやります(笑)。期間限定だけどね。

箭内: 面白いですよね、この記事にクーポン券ついてたら(笑)。そうだ、もう一個思い出した。昔JUDY AND MARYの撮影をお願いに行ったとき、「わかった、撮るよ」って言ってくれたんですけど、「今回は漢字の篠山紀信? カタカナのシノヤマキシン? どっちで撮るのがいい? 最近はひらがなもあるよ」って言ってたんですよ。名前の表記を、漢字、カタカナ、ひらがなにするだけで、撮る写真がまた違ってくるというか。

篠山: うん、もっとひどいのもある。変名っていうか、名前を伏せて出したこともあるんだよね。

箭内: えっ、どういうことですか?

篠山: 写真をやっているある男子高校生がいてね、その子のところに、ハーフのキレイな女の子なんかがよく遊びに来るの。で、そのうちヌードを撮りたくなっちゃって、女の子としても恥ずかしいんだけど、「自分のアルバムに貼るだけだから」なんて言って撮ったものを3冊くらいの帳面に貼ってね。でも、そいつは悪いやつで、『週刊プレイボーイ』の編集部に持ち込んで、自分の名前が出るのもイヤだから匿名でやりましょうーーみたいな設定で、3週間くらい連続でやったら、すごい評判になって。

箭内: 実際は篠山さんが撮ってるんですね。

篠山: うん、何のためにやったかと言うと、「篠山紀信、篠山紀信」ってやたらメディアに出るもんだから、悪口も言われるわけ。「写真が下手でも、篠山って名前さえ付けてればいいんじゃないの?」みたいに。だったら名前を出さずにやってやろうじゃないのと思って、編集部とグルになってやったんだ。
まあ、マンネリになったとき自分自身で1回ぶっこわす、みたいなことはよくやるよね。「激写」っていうシリーズをずっとやった後で、80年代に入ると「シノラマ」だとか、色んな名前をつけてキャンペーンやるんです。10年ごとぐらいに"新商品"を開発してね。

箭内: 「デジキシン」とか?

篠山: そう、新商品を開発しないと長続きしないんですよ。

箭内: 面白いなあ。ちなみにいまの新商品ってなんですか?

篠山: いまの新商品は『premiere ラリューシュの館』の4冊シリーズ。今日、箭内さんにお土産で持ってきたんだけど。

箭内: ありがとうございます。あ、これが噂の。慶応と帝京、中央大のキャンパスクイーン卒業生3人が、篠山さんのところに直談判に行ったんですよね? ヌードを撮ってほしいって。(写真集を見ながら)あ、素敵ですね。上手いです。

篠山: 上手だよね。どういうふうに上手かって言うとね、これ、男目線じゃない。全部、女の子目線。いままでのヌード本と全然違うんだよ。

箭内: うん、可愛いけどいやらしくないっていうか。これは本人たちもうれしいでしょう。

篠山: 3人ともすごくうれしがってた。清春芸術村で撮ったんですよ。で、基本的にはね、今日はこの本の宣伝のために来た。箭内さんみたいな権力者に、「すごくいいよ!」って言ってもらおうと思って。

箭内: 初めてです、この連載で新作の宣伝する人(笑)。でも、篠山さん、写真を通じてすごくたくさんの人の人生に関わってきたっていうか、色んな人の殻を割ってきましたよね? 自信を持たせたり、輝かせたりするのが仕事というか。やっぱりお寺の次男でね、お坊さんは継がなかったけど、篠山さん自身が完全にお寺ですよ。こういうものこそ時代に必要なパブリックだと思う。

篠山: 来たね、いいところに。そう、こうやって世の中に功徳を施してるんですよ。ハッハッハッ!

text:河尻 亨一  photo:広川 智基

箭内道彦(やない・みちひこ)

クリエイティブディレクター
1964年生まれ。54歳。東京藝術大学卒業。1990年博報堂入社。
2003年独立し、風とロックを設立。現在に至る。
2011年紅白歌合戦に出場したロックバンド「猪苗代湖ズ」のギタリストでもある。
月刊 風とロック(定価0円)発行人。
福島県クリエイティブディレクター
渋谷のラジオ理事長
東京藝術大学美術学部デザイン科教授

篠山紀信(しのやま・きしん)

写真家
1940年東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科在学中から頭角を現し、広告制作会社「ライトパブリシティ」で活躍、1968年からフリーに。
山口百恵や宮沢りえ、ジョン・レノンとオノヨーコら時代を代表する人物を撮影するなど、話題になった作品は枚挙にいとまがない。
70年代に山口百恵らを取り続けた「激写」シリーズ、80年代は複数のカメラを並べて同時に撮る「シノラマ」、2000年代には「degi+KISHIN」など、時代と共に新しい写真表現を開拓し、業界に新しい風を送り出してきた。