第三十三回 広告ロックンローラーズ
ゲスト:浅葉 克己
(浅葉さんがアートディレクターを務めたシンポジウムイベント「エンジン01 in 加賀温泉」のチラシを見ながら)
浅葉: 週末はこのイベントに行ってたんです。
箭内: へえ、面白い人たちが話されてますね。頭のよさそうな人がたくさん並んでます。
浅葉: 変な人もいます(笑)。
箭内: いやいや。でも、こういう出演者紹介の一覧だと、一番最初ですね。「あさば」だから。
浅葉: そうなんですよ。僕は午前中は書の講座、昼から卓球大会(アサバ杯)。で、こっちはヴァルター・グロピウスが桑沢(デザイン研究所)を訪ねて来たときの写真です。僕はいまだにバウハウスやってるんですよ(2024年に+81 Galleryで「ASABA×BAUHAUS」展開催)。こっちはギンザ・グラフィック・ギャラリーで展示したときの冊子(ASABA'S COLLAGE.)。過去の仕事でコラージュを色々つくっちゃったんですよね。


箭内: おお、日本グラフィック展のポスターもありますね。この作品はタナカノリユキさん。やっぱりあの頃、日比野(克彦)さんもそうだけど、浅葉さんが若いアーティストを何人もピックアップされましたし、井上有一さんの書を広告に取り入れたのも浅葉さんですよね? そう言えば、ご本人がキャラクターとして出てくる広告の草分けでもあって。
浅葉: そうかなあ。
箭内: どうして自分を使おうっていうふうに? スヴェンソンのCMも出てらっしゃったじゃないですか。かつらをつけて卓球をやってもズレないみたいな。
浅葉: あ、これは石の卓球台第3号なんです。(奥能登国際芸術祭2023のチラシを見ながら)今回、加賀温泉に行ったついでに寄れたらと思ったんですけど、ちょっと遠くて。地震で被災した珠洲にあるんですけどね。
箭内: 3号なんですか。石で卓球台つくるとやっぱり違うものですか。
浅葉: 台は一緒なんですけど、下がね。
箭内: ちなみに浅葉さんは、おいくつになられました?
浅葉: 年齢? 途中で止まってるからなあ。
箭内: 止まってる(笑)。確かに自分の年齢というのは止まってる感じしますけど、どこら辺で止まりましたか。
浅葉: いや、85なんですけどね。
箭内: 「おいしい生活」(西武百貨店/1982年)とか「イマ人を刺激する。」(TDKビデオテープ/1984年)の頃は?
浅葉: 40代ですね。


箭内: なんか浅葉さんって、ぱっと見は怖いけど優しくて、でもちょっと厳しくてーーみたいなとこあると思うんですよね。で、さっきの日比野さんやタナカノリユキさんもそうですし、いろんな人がね、浅葉さんに見つけられて、デビューをして。
浅葉: 自然に育ったんでしょう。
箭内: いや"浅葉力"みたいなのがある気がします。それは別に浅葉さんがご自身で、狙ってるわけではない?
浅葉: 全然自然ですよね。
箭内: 浅葉さんについて行くのがみんな楽しいんじゃないかと思うんですけどね。この広告ロックンローラーズという連載は、決して昔話の場所じゃなくてね、むしろいまトップスピードで走ってらっしゃる方にお話をうかがいたいということで、今日は浅葉さんをお迎えしています。で、直近の話で言うとさっき加賀温泉の話をしてらっしゃいましたけど、奥能登芸術祭のクリエイティブディレクターもされてるんですね?
浅葉: そうなんです。北川フラムさんが総合ディレクターで。あの人、面白い人ですね。
箭内: 開催地の珠洲では、昨年の元旦に能登半島地震がありましたけど、芸術祭はその前からですね。でも、こういう時にこそ、アートの力ってとても重要だと僕は思うんですけど、やっぱり震災の前と以降の取り組みで、浅葉さんの中で変化ってありますか。
浅葉: 全然変化はないですね。変化しない人だから(笑)。でも海が隆起して地形が変わっちゃったのは困ります。あそこは結構いい町がたくさんありますからね。地形が変わっちゃうなんて恐ろしいことだと。
箭内: さっき石の卓球台の話がありましたけど、加賀のほうでは卓球大会をされて?
浅葉: エンジン01のときは卓球部隊が行くんです。
箭内: 卓球部隊? あ、卓球チーム(東京 KING KONG)持ってらっしゃいましたね。
浅葉: 今年で結成50年。結構強いんですよ。
箭内: 50年…どうしてこんなに卓球なんですか?
浅葉: 中学のとき卓球部だったんですね。で、高校生に勝っちゃう。しょっちゅう練習に行ってたんですよ。で、勝っちゃって、すいませんってね(笑)。
箭内: 特に強かったんでしょうね、浅葉さんが。でも、なんて言うんでしょう? 卓球からデザインにフィードバックされるものってあったりするんですか。デザインと卓球はどこかでつながってるのか。
浅葉: デザインが先か、卓球が先かわからないんだけど(笑)。卓球は結構、国際的なスポーツだから。中国行ったり国際大会、世界中いろんなところに行きましたよね。


