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クリエイティビティって何?
未来の創造力に向けたヒント

福田: 教育の現場にいると、今までの教育は「型」を押し付けていると感じます。形のないところから形をつくるのがクリエイティビティだとしたら、変な「型」「前提」を持たないことがまずはクリエイティブなのではと。

市耒: 超ニュートラルで、可変な場をつくるとか?

福田: 可変な人間を連れてくるとかね。一番いいのは可変な場をつくって、「可変でいいんだよ」と言うことなんですけど、今の子たちはそこで止まってしまうと思うんですよ。それができるようにしたいですね。

市耒: 前提に縛られないこと自体がクリエイティビティだと。

草野: たしかに学校の先生は、学校の教育しか見たことのない方が多いじゃないですか。だから社会とつながって、こうやってぶち壊してくれる先生がいるというのは希望ですね。

市耒: 一番前提が強いのが学校教育だから。そこに対して。

福田: だからできるだけ変な校長でいたいですね。「校長がおかしいんだから、俺たちもいいだろ」となるように。

草野: クリエイターというのは、手を動かして何かをつくりださなくてはいけないと、ずっと葛藤していたんです。私はミュージシャンとしても楽譜が書けないので、鼻歌を描き起こしてもらっている。絵も描けないけれど、「こんな感じで」とディレクションして、プレゼンして作品にしている。今思うのは、アプローチの仕方はさまざまで、繋げる人、壊す人、異なる分子を引き寄せる人、すべてクリエイティブなのかなと。
「ギャルバース」も、西海岸でdropboxのデザインのヘッドをしている人がメンバーにいます。そんな人と会う機会のない日本にいる人と、組み合わせてチームを結成しました。共通言語はほとんどないし、バイリンガルは自分しかいない凸凹なチーム。けれどとくにNFTは、異なる価値観の人が対話して価値を見出すものなので、そういうことがクリエイティビティなのかなと思います。

市耒: 異能を束ねてひとつのものをつくったり、ひとつのプロジェクトを走らせる。

草野: ケミストリーを起こすこと自体がクリエイティブだと思います。ゼロイチだけがクリエイティビティじゃないと。

市耒: クリエイティブ内閣総理大臣って感じですね。

(一同: 笑)

市耒: エキスパートを使って、とにかく一番いいものをつくりあげるという。ビジョニングの共有に長けているから、多次元的なことを一気にひとつにできる。

草野: 起用貧乏なところで悩んできたので。平野さんにも泣きながら電話したよね。

平野: 「自分はアーティストではないのではないか」とずっと悩んでいたのを覚えてます。でもそこからの、今だもんね。こういう形で炸裂するとは。

長久: 広告会社のクリエイティブは、基本的にそういう悩みを抱えまくるじゃないですか。自分の手でつくらない業種で、器用貧乏でここまで来ている感じがあるから。

草野: でもプレゼンうまくてよかったなと思うことありますよね。

福田: いっぱいありますね。

市耒: 器用貧乏ではなくて、器用富豪の時代になっていく?いろいろなエキスパーティーズが組み合わさって。アルゴリズムを理解している、テックを理解している、マーケティングを理解している―全部わかっていないと「ギャルバース」のようなものはできないから。風吹いてるね。

草野: 風吹いてますね(笑)。切り崩して給料にして払っているので全然富豪にはなってないんですけど、自分の積み上げてきたことがやっとつながった感じがあります。NFTアートは仮想通貨だけの概念だと難解だし、有名人やコミュニティに支持されて価値を上げるのは仮想通貨でやってはいけないんですよ。でも、現代アートでは普通のこと。アイコンにするみたいな文化はアニメ好きオタクのカルチャーもあるし、でもアイテム自体はファッションブランドだとシャネルのバッグみたいな捉え方もあるし。異なる価値観を持った人がやらないと、NFTとは何かがわからない世界です。
だからこそ、今まで起用貧乏で多次元的にやってきた人がNFTの界隈では活躍しています。アートの人の意見も、仮想通貨の人の意見も聞ける。

市耒: 総合芸術的な。

草野: 総合格闘技的な。日々、いろいろな人と話しています。文化庁や金融庁の人も話を聞きに来てくれる。税制が整っていなかったりするし。Web3は、網羅できないんですよ。DeFi(分散型金融)の人、DAO(分散型自律組織)の人、NFTの人とみんなで手を取り合って、お互いの価値観を認め合って、「これってアパレルブランドなのかな」「現代アートなのかな」と模索しないと、前に進めない。黎明期ならではで楽しいですけどね。

市耒: クリエイティブ、ネットワーク、NFTなどを国力として押し出そうという国もあれば、一生懸命プレイヤーから拓かなくてはいけないところもある。その辺の話ものちほど。

「心が動いている」から生まれるクリエイティビティ

平野: さっきもお話した通り、ちゃんと自分が感動しているか。心が動いているか。ゼロ次情報に触れてバッとなっている状態じゃないと。それが積もって、編まれて、醸造されて企画になっていくと思うので。感動している状態に自分をもっていく。心を動かし続けている状態がとても大事だと思います。一度、会社員時代にそこが死にかけたことがあったので。

長久: 僕もそれに近い。映像や物語をつくるときに、先に物語があるのではなく、自分が何を思い、何を考えたかだから。そこからじゃないと、表面(がわ)がつくれない。物語先行ではなく、何かに対するエモーショナルが先にある
それで言うと、だれしもに「何かを思う」はあるじゃないですか。だからクリエイティビティはすべての人間にある。社会が形にさせていないだけで。

一同: そうそう!

長久: 形にするコツとか、やる気とか、環境が整えば、全員めっちゃおもしろいと思う。僕は今いい環境で出せたから映画監督になれているというだけだな、と。

市耒: みんなおもしろいし、みんなにクリエイティビティはあるのだけど、抑圧している何かを開いてあげる感じなのかなあ。

草野: みんな映画つくりたいんですかね。

長久: つくらなくていいんですけどね。近所の魚屋さんが考えていることを映画にしたら、世界中が「おもしろい!」と思うような生活を普段されているのでは。エッセイでもイラストでもいい、それをやるかどうか。そこがクリエイティビティなのかもしれない。もしかしたら“ストレスの感じ方がおもしろい人”とかいう可能性だってある。

平野: 「ギャルバース」も、マーケティングや戦略の部分も必要だけれど、真ん中には「好きだ」がある。あのキャラや世界観が大好きという、草野さんのエゴイスティックな部分があるというのが大事なのではと思う。

長久: そこに共感するんですよね。世代的にも、ああ好きなんだろうなあと。

草野: 好きでやっていないやつはバレちゃうんですよね。NFTは、よりアーティストの姿が見えるんです。作家性でやっているのか、マーケティングで発注しているものなのか、顕著にわかる。買う人はそこをとても意識しています。