ACCの活動

TOP > ACCの活動 > イベント > 2015 カンヌライオンズ報告会 ~フィルム部門をどこよりも早く、深く~ 開催レポート

ショートリストに残るためには

 ここに残るために覚えておいてほしいことをシェアしたいと思います。フィルムっていうのはとてもフィジカルなメディア。瞬時に、説明もなく1-9点システムで採点するので、市場の説明など一切なく、そのフィルム自体が、いかに心を動かすコンテンツかどうかが問われます。

 なので共通認識をもつフィルムは強い。グローバル企業のグローバルキャンペーンは当然、強いですね。そのブランドがやっていることを世界中が知っている。またひとつは、歴史と宗教の共通認識。たとえばクリスマスひとつとっても、我々とは異なるもう少し深い意味合いでの共感軸があるし。

 それから英語のコンテンツは、カンヌが始まる前に事前にネットで観られているので、「あの作品はどうしたの、落ちてるじゃん」とか「あれは、必ずグランプリをとる」とか審査員が事前にファンになっているフィルムも多い。
 また、social good。例えば「貧困」といえばわかりやすいテーマ。社会の問題はすぐ共感できるので印象が強い。
 また、ヒューマン・トゥルース、ヒューマンインサイト。母親を愛するこどもの思いは世界中で同じ。父親と思春期の娘の関係の微妙さ世界共通。2秒もかからずみんなわかる。やっぱり人間が共通認識として持ってる話は強い。

 だからグローバル企業がクリスマスのことをやってて、英語でソーシャルグッドでヒューマン・トゥルースだったらもう、こういうものは強い。別にこれをどうこうしろっていうことではないんですけど、傾向値としてコミュニケーションのスピードにとても影響してきます。そういった作品と同じ土俵で一瞬で審査されているということは、頭に入れておいたほうがいいかと。

 審査員長のTorは冷静な人で、素晴らしい作品をとにかくフェアに選んでいこうということを徹底していました。審査員の出身地をみると、東アジアからは僕一人。タイとインドから一人ずつ来てますが、やっぱり欧米がすごく多い。欧米のカルチャーとしてはキリスト教の国が多いですね。言語的には、英語とラテン語圏のネイティブの人がほとんど。

 Torがみんなに手紙をくれまして、「とにかく新しいものを見いだしていこう」と。newというのは初めて見た時にはなんだかわからないものだけど、価値もわからないけど、居心地が悪くてもそういうものを選ぼうと。審査員たちは、「こんなもの選んじゃって怒られるかな」って思ったりするものなんです。この手紙をバイブルにして、迷うとここに立ち返りました。

ゴールド作品講評

 これからゴールドの作品をお見せします。納得のいくゴールドを選ぶことが、世界の広告業界とフィルム業界に対する責任なんだと。次に入ってくる若者にメッセージを送るんだぞという意識で選びました。その責任は大きいものなので、自分の国がとった、自分のエージェンシーがとったということを離れて、この10本がフィルム業界、広告業界の指針になっていくようにしようということで22人で選びました。

GATORADE「MADE IN NY」

タレント力のCMでは?と迷いました。するとラテンの人々が「我々は野球のルールも知らないが、これは涙が止まらない」と言うんです。これは一本のフィルムとしての骨格がきちんとできている。デレク・ジーターというスーパースターが引退するという特別な日に、NYの普通の人々と他愛ない時間を過ごすというコントラスト。街の人々のエモーションは本物で、そのエモーションを前にすると、野球を通さなくても心を打つ。またいかに彼が尊敬されていたか、そしてそのアスリートを支えていたゲータレードの素晴らしさが一瞬で伝わってきました。

BEATS SOLO2「THE GAME BEFORE THE GAME」

ヘッドフォンのCMで、みなさん事前に知っていて「今年のグランプリはあれだ」なんて話題になっていました。ヘッドフォンを通して音楽を聴くということを、人間が最も大切な瞬間を迎える前の儀式というところに置き換えることに成功しています。ひとつには、広告にも体重があって、これはスーパーヘビー級なので、それにやられてるよねっていう話もありましたね。

MAGNUM(UNILEVER)「PROUDLY SEEKING PLEASURE」

ビッグブランドのユニリーバが出しているアイスクリーム、トランスジェンダーというマイノリティをフィーチャーしている驚きがあったようです。日本ではテレビでそういうタレントさんとかよく見てるけど、キリスト教の国ではあまりそういうことはない。ヨーロッパの人たちからは、「彼らは勇気をもって自由を堪能している」と称える声が出ていた。音楽も緻密。非常に知的でエロチックな広告だと思います。商品はダブルコーテッドでレイヤーがいくつもあるアイスクリームというところで、きちんと落とし込んでいる。

APPAREL AND FOOTWEAR (NIKE GOLF)「RIPPLE」

スポーツが人生にどういう意味を与えるか、ストイックに描いたもの。審査員の何人かはこれ見た後に泣いてましたけど。スーパースターが存在する意味、彼らが次の世代を育てているという。彼らがいるからどんなつらい練習にも耐えられるし、嫌になったとしても好きでいられる。これは実は仕事もそうだし、人生もそうだし。モキュメンタリーでこれほどのリアリティを作るクラフト、仕立ての見事さ。フィルム自体にのエモーションがある。スポーツをする人に人生の経験をシェアしていくんだっていうナイキの姿勢自体を評価する声が多かった。

GUINNESS「MADE OF BLACK」

南アフリカの黒人の若い人々にとっては、ギネスは年寄りが飲むもの、オシャレではないものだととらえられていたそうです。この広告の結果として商品はヒットし、若い人の中に「これは俺たちのブランドだ」と受け入れられました。本能的なアートディレクション、受け手のプライドを刺激するコピー、全体のトーンもアジテーションしてくる感じ。審査員長は「シルバーには会話ものなど、ある文化の中だけで通じるものがあるけど、ゴールド作品になるとビジュアルが強い傾向がある。色んな人にわかりやすくシンプルな力をもつものが強い」と評しました。

PERSONAL CARE「DADSONG」

年頃の息子をもつ母親の悲哀をうたって大ヒットしたCMの第二弾です。息子を男にしてやれよ、というお父さんの歌。会場ではバカ受けだったんですけどね。

HEALTHCARE.GOV (WHITE HOUSE)「BETWEEN TWO FERNS WITH ZACH GALIFIANAKIS: PRESIDENT BARACK OBAMA」

これは大議論になりました。なんとクライアントがホワイトハウスで、タレントがバラク・オバマという。「Between Two Ferns」という元々あったトークショー・コンテンツを、オバマがジャックするんですね。ホストのザック・ガリファナキスと一国の大統領が、国の政策を告知するという目的を果たすために、ひとつのコメディをやったということで本当に驚き、尊敬しました。アメリカ以外の国ではこれはできんわなと。

BEDROOM HOME FURNISHINGS/RETAIL (IKEA)「BEDS」

ビジュアル寄りなのではじめわからなかったんだけど、すごく深みのあるコピー。シェイクスピアの戯曲「テンペスト」の引用でした。絵だけでも十分ゴールドだと思いますけど、その深みがゴールドを確かなものにしていました。

ALWAYS (PROCTER & GAMBLE)「♯LIKEAGIRL」

性差別問題をテーマにしています。グランプリを争った3つの中のひとつでもありました。今年、社会に問題を提起して、非常に広がったもの。「like a girl」の中に隠された、当たり前のことなんだけど気づかないということを、気づかせる手法がこの中に詰まっている。グランプリという話もありました。

会場の様子

実際の贈賞式の様子

グランプリ講評

LEICA INSTITUTIONAL (LEICA GALLERY SAO PAULO)「100」

TVグランプリはライカの企業広告。写真が100年の歴史を持つ、ということについてのビジュアルストーリーテリングの企業広告です。この100年の間、報道写真や歴史的でアイコニックな写真が、僕らの記憶の中にあります。これらのビジュアルを映像で再構成しながら、時間軸を飛び越えてライカのブランドストーリーを体験させるムービーに仕上げています。
審査では「タイムレス」という言葉が何度も出ました。時間に関係なく、10年前でも10年後でもグランプリになるかもしれないねと。時間を止めて、時間という概念をなくしてとじこめる、それがまさに写真の価値そのもの。その価値を映像に閉じ込めることに成功している。最終的には21人中19人の票を得て決まりました。

実は審査員が一番恐れたのは、次のノンTVのグランプリだったんです。これが、本当にこれを選んじゃっていいのかな…っていう。でも何度議論してもこれになってしまう。最終的には会場も大拍手してくれて、メディアも認めてくれたんですけど。

INSURANCE(GEICO)「UNSKIPPABLE」

プレロールアドとは、YouTubeを見る時になぜか10秒間とか広告が出てきて、スキップできないあれ。コンテンツを見ようとしてやってきた人をジャマするので、やはり嫌われます。最もセクシーじゃないメディアと言われますね。それに対する感覚をガラッと変えたのがこれなのではと。プレロールアドというモノ自体をすごく魅力的なものに、なんかここチャンスがあるんじゃないかという感覚に変えたということ。真ん中に「ガイコ」っていうロゴもバーンと出っぱなしで、上手に作ることを全部逆手にとって、意地悪して真ん中にブランド置いてつまんないギャグをやってイライラさせて、でも笑わせて、結局みんな最後まで見て虜になってしまう。というところが最終的に評価を受けたという。

 やっぱりゴールドを獲るのに必要なことって4つくらいある。

 それはシンプル、大胆、一言で伝わる強いアイデア

 当たり前ですがまずアイデアが強くなければならない、簡単でなければならない、大胆でなければならない。
するとそこから先の話がクラフトに囚われがちなんですけど、その前にフィルムはストーリーテリングが重要。アイデアをスクリプトに落としていくときに、展開が緻密にできているか。音楽の使い方にしてもBGMをあてて気分に振るんじゃなくて、意味のある音楽でアイデア、ストーリを広げたり深めたりする必要が。それとエモーション。感情的とかそいうことではなくて、この作品にエモーションはあるのか、見る側のエモーションに対して働きかけてくるのか。エモーションが大切なのは、ひとつのブランドイメージに対して泣いたり笑ったりするくらい好きになれるという行為を引き起こすことなので。エモーションがないっていう理由で切られていく作品はすごく多かった。

 最後に、クラフト。折角のアイデアもスクリプトも、クラフトで死んでいて。これは審査員の年齢とか適性もあるのかもしれませんけど、ナチュラルなモノを本当に好むので、演技や手法がやりすぎているものとか、べたなモノは嫌われる。日本はデザインやテクノロジーは繊細なのに、フィルムで繊細じゃないよねと何人かの審査員から言われました。映画では繊細なものがあるのに、どうしてCMになるとわざとらしくなっちゃったりするの?と。
 それは15秒とかあって、その方が早いしわざとやってるんだよっていうのもあるんだけど、「ん~?でもぼくたちナチュラル好きだから、以上」みたいな感じ。これがもったいなあというのが、私見ですがありました。
 アイデア、そのストーリーテリング、それにエモーションがあるか、それをきちんとクラフトで押さえているか。そこをシームレスに、ひとつの答えとしてまとめているか、ということがすごく大事だなと思いました。