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部門独立の背景
今、PRの重要性が増している

眞野:PR部門が独立したことは、PRの人間にとってとても喜ばしいことですし、PR産業にとってもすばらしい動きです。今回、ACCがPRを独立させた背景には何があるんですか?

嶋:ここ5年、10年で、PRファーストでPRパーソンが活躍する場がとても増えていると感じます。
その理由にまず、テクノロジーの進化によるライフスタイルの変化があげられます。たとえばリモート会議の実現に伴い2拠点生活が可能になった。車はシェアできるし、ウーバーで家に料理が届くし、キャッシュレスで暮らせる。これまでと異なるライフスタイルの実現のためにPRパーソンの技術が求められていますよね。
もうひとつは、SDGsの動き。サステナブルを目指す、働き方を変える、女性がより社会で活躍する等々、世の中が大きく変わっている。
PRパーソンの仕事は、そこに補助線を引くことです。これらの変化に対応するサービスや商品を提供する企業にとってみれば、マーケティングPRのチャンス。新しい常識や、新しいライフスタイルが世に定着するのを加速する仕事です。ここが、PRパーソンの腕の見せ所。PRパーソンが活躍し、注目されてしかるべき時代です。

眞野:広報の仕事をしていて「いいな」と思うのは、社内のさまざまな良い話を聞けることだったりもします。2年前にはマクドナルドで働く「93歳のクルー」が記事化されて話題になりました。この方、90歳のときに採用されているんですよ。採用した店長もすごいと思ったのですが、そういう話を聞けるのはいいですね。地域やシニア世代に勇気を与える、Win-Win-Winな関係をつくり出せるのがPRだと思います。メディアもそういった話題を探しています。

嶋:ひとりの雇用の話が、「人生100年時代をどう生きるか」「シニアがどうアクティブに生きるか」といった社会課題に対しての「当社はこう考えます」というPRになる。ひとつの事象を社会の視点でとらえることで、みんなが受け入れられるストーリーにするという技術ですね。ファクトを世の中ごととして捉える力。見立てるというか。世の中にとって、このことにどういう意味があるのかと捉える思考回路が大事なんですよね。

眞野:でもこれ、英字紙には「日本は老人を働かせてひどい国だ」という論調で記事になったんですよ。働くことに対する価値観の違いに驚きました。ご本人の働きたいという意向が前提のポジティブなニュースのはずなのに、文化が違うことで理解されず、改めて難しさを感じました。

嶋:ひとつの物事の見方は多様で、もちろん、いろいろな反対意見も出てくる。でも、そのなかで最も良い出し方は何かと深く考えなくてはならない。とても戦略的な仕事ですよね。

変化の大きい世にこそ必要な
新しいよいことを根付かせる仕事

嶋:これまでのマーケティングではずっと、“人と違うところ”を声高に言ってきました。もちろん市場におけるスペックの優位性は大事ですが、今のブランディングで大切なことに“人と同じところ”を見つけることがあると思うんです。「ここはご一緒できます」「ここは手を握れます」と。
たとえば民泊が日本で始まるときに、フリクション(摩擦、衝突)を起こしそうなところに「関係人口をつくるのに役立ちます」「新しい観光滞在の実験になります」と共通の利益を見出した。広告がすべてほかと違うところを言うというわけではありませんが、PRはどちらかというと同じところを見つけて手を握る仕事。多様性のある文化の中で価値観の違う人々が暮らす社会の中でのなかにいて、それは必要な技術です。ダイバーシティが前提の世の中で、本来多くの企業が持つべきノウハウですし、あれば大いに企業活動に役立ちます。

眞野:昨年も行政と組んだプロジェクトが表彰されていましたね。ひとつの自治体とやることが全国に波及したり、ほかの企業を動かしたりしていてすごい。

嶋:そういう点で、今後ますますパブリックアフェアーズ(1970年代のアメリカで始まったPRの技術のひとつで、新しい技術などが既存の制度とフリクションを起こしたときに、それを緩和させる技術)が重要になるでしょうね。公と合意形成をする専門領域であり、世の中が変化する今必要とされる技術です。

眞野:社会課題に民間の知恵やリソース、クリエイティブの力が活用されていくわけですね。PRパーソンにがんばってほしい!
以前、京都府亀岡市が全国に先立ってプラスチックのレジ袋の提供禁止を掲げたときに、声をかけられたんです。正直、そのための投資などを考えると逡巡しましたが、「マクドナルドさんと条例に取り組むことが良いインパクトを生む」とおっしゃっていただいて。亀岡市では、プラスチックのレジ袋を廃止して希望者に有料で紙袋をお渡ししています。

嶋:民間が行政に提案することもあれば、行政側から声のかかることもありますね。「あのマクドナルドが変わった」というのは象徴的に世の中に捉えられますもんね。

眞野:いろいろな自治体とお付き合いをしていて、都道府県ごとの温度感とか、広報担当者によっての考え方とか、「官」と一言でいっても環境は大きく違うと感じます。みんなでレベルアップしていけたらいいですね。

労働力の流動により
インナーコミュニケーションも重要度増
さまざまな目の付け所で、応募をお待ちしています!

嶋:関西で放送されたドラマ『武士が、マックで店員になった件。』はおもしろかったです。あれはインナーコミュニケーションに対するモチベーション喚起も含まれていますよね。

眞野:それもあります。当社には実に多様な19万人のクルーがいて、常に採用しなければなりませんから。

嶋:職場の人間関係がとても魅力的に伝わって、いい企画だと思いました。働き方の自由度が上がっているから、インナーコミュニケーションはより重要になってきます。「うちはこんな会社です」というのをこれまで中だけに向けて言っていたけど、労働力の流動性が高まっているから、今後は外に対しても言い続けなくてはならない。

眞野:インナーコミュニケーションも、あまり日の目を見ない分野だと思います。たとえば社内イベントは成功するのが当たり前で、評価は減点主義になりがちです。担当する人は大変すぎますよ。準備する人たちへのレコグニション(社内の評価)を重視してほしいと、いろいろな会社を見ていて思います。

嶋:そのあたりは、スタートアップの方が得意なように見えますね。ロイヤリティを上げて優秀な社員を採用しようと懸命だから。トップが社員とランチに行く制度とか、独自の休暇制度とか、さまざまに取り組まれていますね。
また昨年受賞した「社長のおごり自販機」は、社内のコミュニケーションを促進しようというメッセージであり、自動販売機というサントリーの仕事ど真ん中のリソースでそれを実現しました。自分たちの仕事でこんなおもしろいことができるんだという、すばらしいクリエイティビティでした。ああいった仕事がどんどん増えてほしいですね。

眞野:ひとり広報のように小さいからこそできることもあるし、大企業でもできることがある。
PR部門はエントリーシートがシンプルで、ケースビデオも不要です。小さい会社でも、ひとり広報でも簡単に応募できる仕組みにしたので、どんどん出してみてほしいです。行動変容がどこに起きたのか、ということが書いてあれば大丈夫。

嶋:活動自体の場合もあるし、おもしろい調査をしたケースもあるでしょう。それによってすごい発見と「変えるべき」が広まることもある。

眞野:そのニュースをどうつくるかと深く広く考察された末の調査PRなわけですよ。「パーセプションが変わった」「PRパーソンがクリエイティビティを発揮して補助線を引いている」など、たくさん褒めさせていただきます。どのようなPR活動でも、プロセスの巧みさ、目の付け所を自慢してください! 間口を広くしてお待ちしています。

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text:矢島 史  photo:金居 誠人