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TOP > ACCの活動 > イベント > 「2018カンヌライオンズ報告会 ~フイルム部門をどこよりも早く、深く~」 開催レポート

質疑応答

Q. グランプリは商品のことを言っているものと、キャンペーン的なことを言っているものの2つでした。そこら辺の考え方や、審査の内容は。
A. 審査はシンプルにフイルムの良し悪しです。ゴールド13個からふたつグランプリを選ぶ時に、まずは投票したら半数以上取ったのがあの「TIDE」と「THE TALK」だったんです。そこから長い議論をしましたが、その際“バランスとしていいじゃないか”という議論に終始してしまったというのが正直な所あります。
Q. カンヌライオンズは、広告に称賛を与えることと同時に、ソーシャルグッドなメッセージを褒めるということがあると思います。個人的にはその二つは対比的に思えて、カンヌはどちらに軸足があるのかと。「THE TALK」がグランプリで、ジープの「ANTI-MANIFESTO」がシルバーでしたが、フイルムの審査においてその点でどのような印象を受けましたか?
A. すごくいい質問です。「ANTI-MANIFESTO」はグランプリ候補になりかけたんですよ。審査では、ゴールドを決める時がテンションマックスなんです。というのも、ゴールドを決めるというのはグランプリ候補を決めるということなので。だからシルバーとゴールドの差は大きく、そこの議論が一番なされるんです。何をゴールドにするかしないかが、メッセージになる。
「ANTI-MANIFESTO」は「すごくいい」という人と、「マニフェストを否定しているけど、マニフェスト自体が広告屋のつくったもので、狭い世界での話だ」という人に分かれました。WATCHABILITYの話をしましたが、やはり今僕らが戦うべきは、ほかの“広告”ではなく世にあるおもしろい“映像”。単純に世の中の人をおもしろがらせる、映像として強いものを選ぼうという議論になりました。
Q. アジアの審査員は新沢さんお一人でしたが、アジア、ラテン、欧米の観点はどれほど違うと感じましたか。
A. アジアは僕だけだったので何とも言えませんが、アングロサクソン的英米な人とラテンの人は結構違いました。前者はロジカルで、アイデアの優れたものが好き。後者は楽しくて派手なものが好き。その両方から見て、タイのCMや「さけるグミ」が非常にフレッシュに映ったんですね。前者が首をかしげる中、後者である審査員長が好きで上がっていった南米のCMというのもいくつかありました。ただ、いざゴールドを選ぶとなれば非常にロジカルでフェアに話し合っていました。
Q. 入賞作を見ていると、海外の方が思想やメッセージを強く感じるものが多いなと。日本ではそこまで社会的に何かを表現するというより、商品やビジネスに近い広告が多いと思うのですが、それはそもそも文化の違いなのか、広告をつくる側の違いなのか、クライアントの違いなのか、感じることがあれば。
A. マーケットの違いはあると思います。日本のCMは日本のマーケット向けにつくられがちで、P&Gのようにメッセージ性のある広告がほかにあるかというと、実はそれほど多くない。世界的な責任を背負っているようなグローバルブランドのクライアントには、世界で流れるいいスポットをつくらなくてはという彼らのミッションがあって。それで、メッセージ的なつくりかたが多くなるのだと感じます。

鏡さん:補足で。とくに日本の広告の多くは「今日」の利益を売っているから、どうしても商品広告になる。ただ一部のクライアントは、商品だけを売っても今日しか利益がなくて、明日明後日を考えた時にはコーポレートやブランドそのものに好意を持ってもらった方が次につながると思うところがあるかもしれない。今後日本の企業にもそういうところが出てくるかもしれないし、今後増える可能性はあるだろうと私は思っています。
私からも最後に質問を。まとめてくださった「REAL WORK」と「CRAFT」は日本でもなんとかなると思うんですけど、最後の「FRESH&BRAVE」がなかなかうまくいかない気がします。実際につくっている立場で、どのようにお考えですか?
A. 僕ら、がんばって“海外っぽいCM”をつくるのが一番よくないんじゃないかと思います。「さけるグミ」もそうですが、ベリージャパニーズなもののほうが外国から見てフレッシュである可能性がある。日本人にきちんと突き刺さるものをつくれば、それだけでアイデアも表現もフレッシュになるのでは。ただそこに、グローバルレベルのクラフトやクオリティが加わることが大事だと思っています。