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TOP > ACCの活動 > イベント > 2017 カンヌライオンズ報告会 ~フイルム部門をどこよりも早く、深く~ 開催レポート

Gold LionからNikeの3作品

NIKE「WHAT ARE GIRLS MADE OF?」
ロシアの有名な童謡をベースにしたCMで、歌詞の前半では女性へのステレオタイプな表現が含まれており、後半はその概念を覆すような替え歌になっている。
リアルターゲットではない、小さな女の子に焦点を当てているところに思い切りがある点、また子供を持つ親の琴線にしっかりと触れ共感できるといった点が評価されました。
NIKE DELHI「DA DA DING」
キャスティングが素晴らしい。今までのインドの女性の見せ方と違っていて、新しく強い女性像が描かれている。そして、音楽の「DA DA DING」のフレーズの繰り返しが、一度聞いたら忘れられない強さがある。それらの点が評価されました。
今回審査で1000本以上の映像を見たのですが、9割5分の作品は音楽の当たり方が似ていて、映像と音楽の関係性が弱いものがほとんどなんです。
感情の伝わり方を決定付ける時に、もしかしたら映像以上に音楽の持っている力が大きいのではないかという意見が審査の中でありました。
NIKE「UNLIMITED YOUTH」
これはリオのオリンピック時期のキャンペーンCMで、86歳のシスター、トランスジェンダーのアスリート、両手両足のない登山家がそれぞれ登場する3本があります。
今ご覧いただいた86歳のシスターのCMは、まずナレーターとキャストの掛け合いが素晴らしい。このナレーターはオーディエンスの代表としてキャストに絡んでいて、このキャストのシスターは誰がなんと言おうと自分の可能性に対して揺るぎない意思を持って行動している。このインタラクションで見せていく感じ。
こういったテーマやキャストだと真面目になったり重くなりがちなんですが、この掛け合いはそれを軽快な演出で見せているところがいい。
他のオリンピック時期のキャンペーンとは違って、数あるスポーツブランドの中でもナイキが先に行っている感じが見えて、そこが評価されました。

Gold Lion作品紹介

SANDY HOOK PROMISE「EVAN」
同じ映像を2回見せることでメッセージを印象付けるという、構成的なアイデアが評価されました。
HEINEKEN「JACKIE」
これは、Jackie StewartというF1の名ドライバーの過去の映像素材を元に作っています。
ハイネケンがF1にスポンサードする際に、ドライビングとビールをどう関係付けるかということが、おそらく第一の課題になっていたと思うのですが、ビールブランドが「IF YOU DRIVE NEVER DRINK(運転するときには絶対飲むな)」と言うブランデッドなメッセージを最初に見付けたという、レレバンシーの作り方がかっこいい。このCMで大々的に発信したことは勇気があるし、ブランドがかっこよく見えるよね、といった評価でした。
VERENA INTERNATIONAL CO.,LTD.「CAPTURE」
審査で爆笑をさらったタイのCMです。
即決でゴールドでしたが、なんで面白いのかをみんな説明しないんですね。それを説明するのも野暮な気がして(笑)。
3分間ローリングするように笑いが増幅して、最後に「脂肪の吸収をとめるキトサン」という商品ベネフィットが強烈に印象付けられます。これは、タノンチャイという世界的に有名なタイの監督の仕事です。正に監督の力によって成り立っているCMで、同じ脚本やキャストでも、別の監督だと全然違う仕上がりになると思います。
THE NEW YORK TIMES「THE TRUTH IS HARD TO FIND: DENTON」
トランプ氏の大統領当選後にニューヨークタイムズが行ったキャンペーンです。ポストトゥルースやフェイクニュースが拡がっていく世の中で、ジャーナリズムの価値を問うもの。
ニューヨークタイムズのジャーナリストが紙面で使った1枚の写真があったのですが、実は、そこに至るまでには命懸けで撮影した未使用の写真があって、これはそれらを繋いで作った映像です。写真を繋いで映像化するということはよく行われる手法だと思うのですが、フラッシュとフラッシュの間の暗闇の作り方、その間隔が見事で、現場を体験している感覚を引き出しています。それによって、最後のメッセージ「真実は、難しい。」「真実は、見付け難い。」「真実は、追求する価値がある。」が強く残る。これもニューヨークタイムズらしいという評価でした。
OLD SPICE「5 YEAR PLAN」
これも即決でゴールドでした。あまり議論はされませんでしたが、 ボスと部下が入れ替わるVFXの完成度が異常に高いことと、オールドスパイスらしいセンスオブユーモアが評価されました。
ALLIANCE FRANÇAISE DE SINGAPOUR「HOLLYWOOD REJECTS FRENCH FILMS」
フランス映画とハリウッド映画が、世間的に対極にあるということをうまく利用している。
これは、フランス映画をPRするオンライン映像なのですが、フランス側だけではなくハリウッドの映画人の言っていることもよく分かる、両方分かるというその伝わり方が間口を広くしている。それから、有名なハリウッドの映画人から出演許諾が取れた点も含め、よく形にできたね、というところが評価されました。
BURNS & SMILES「HALLOWEEN-TV」
個人的にとても好きな作品です。火傷を負った主人公が、365日の中でたった1日だけのハロウィンというその日を楽しむ。その体験で、主人公の心が開くというプロセスが描かれています。
火傷を負った顔がクールなメイクアップだと誤解され、それを知りながら一夜の夢を楽しむ主人公の心の痛み、そしてその痛みを乗り越えたいという感情がとても豊かに、リアルに描かれています。
また残り364日の日常に戻っていく、その描き方がとても切ない。
人間は1つの感情だけでなく何か矛盾する感情を抱えていて、この映像の中にはハッピーと悲しみが同時に映し出されている。
実は、このキャストは役者で、顔の火傷もメイクアップなんです。僕は最初それに気付かなくて。細かい演出がきちんと積み上げられているから、リアルに感じられる。審査員からも、リアルとファンタジーをまたぐような素晴らしいストーリーテリングだという評価でした。
DONATE LIFE「THE WORLD'S BIGGEST ASSHOLE」
これは臓器提供の広告なんですが、ここまで最低野郎が主役の広告は見たことがない。
こういうキャスティングをするのは難しい。人物の造形の仕方がリアルでストーリーテリングが素晴らしい。最低野郎だけど、最後には救われるというメッセージの強さ。こういったアプローチは炎上を恐れるとできないですよね。
ここに、ブランドや作り手側の勇気を感じるというところが評価されました。
近年、アメリカのドラマなどでは人生の落伍者や、社会的に順応できない人などが主役になってきていて、そういう主人公が出てきているっていうのはそこに何かしらの共感がある。どこか自分事化するというか、そういう背景もあるのかなというふうに思いました。