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ファイナリストへのフィードバックと、最終プレゼン

大塚:ファイナリストには最終プレゼンに向けて審査委員からフィードバックをしたのですが、ブラッシュアップの熱量がすごかった。みなさんいい形でプレゼンにつなげていました。

永田:二次審査で見たときとは段違いにクオリティが上がっているので驚きました。これが若さなんだ、若さって学ぶ力なんだと眩しく感じて。負けていられないなと思いましたよ。

大塚:フィードバックをしてプレゼンって、ほかのヤングコンペではあまりないんですよ。このやり方についても、議論がありました。あんまり細かく意見を伝えすぎると、全部無理に詰め込んだ結果ゴテゴテでわけのわからないものになるリスクもありますから。実際、お二方はフィードバックされていかがでした?

久古:4行ほどの短いテキストによるフィードバックだったので、まずはちゃんと「解読」しなくてはと思いました。もしかしたら審査委員の方々の中にはすでに正解があって、それを外してしまったらダメなんじゃないかと。でも最終的にはそこに縛られることなく、いただいたフィードバックをヒントに、自分たちが本当にいいと思うもの、自分たちの中の正解を突き詰めることができました。

大塚:審査委員側にも難しさがあって、具体的に「こうしたら」は書けないので(笑)。しかも審査委員同士でもいろいろな意見がありますから。まとめて渡したはいいけど全部盛り込んだらアイデアのコアがわからなくなるので、何にフォーカスするかがヤングの力だな、というある種乱暴な結論でした。

―こわいですね~。

塚田:今プレゼンを終えて振り返ってみると、味わい深い文章だったんだなと改めて思います。一度フィードバックを通して考えて、戻ってくると「あ、ちょっとずれてる」とわかったり。すごく指針になりました。最初は「この句読点の意味は…?」まで二人で考えて。

一同:(笑)

久古:オムツに記載するメッセージ案として「例えば」と書いてあるけどその例えがひとつしか挙げられていなかったので、意図を分かりかねて「これは、つまり…」と考え込んだり。

塚田:でも、普段の業務でも先輩がすべてを教えてくれるわけではなくて、少しのフィードバックに合わせて進んでいっているなと思い出して。クライアントや先輩の方とのとのやり方も、こういう過程だよなと。このコンペも仕事への筋トレになっていると感じました。

久古:とにかく一度フィードバックをいただいた上で、もう一度ブラッシュアップさせてもらえるというのが、延長戦ができるようで面白かったです。他のコンペだと一度提案したら終わってしまうので。
実現を見据えたメッセージだったのだと思います。本当に成長の機会をいただきました。

アイデアが実現するかもしれないヤングコンペ

大塚:渋谷区さんのおかげで「実現可能」と謳えるのがこのコンペの大きな特徴ですね。最終審査の中でも区長が、「こうしたら実現できる」とあれこれアイデアを出してくれました。準グランプリの「渋谷飴」についても、つくる人を誰にするかというプロセスにダイバーシティの観点を入れてはどうかとか。一発のアイデアを評価するというより、いろいろな人がそのアイデアを育てようとした。それも実現されるかもしれないというのがあるから、みんなで「ああしたら」「こうしたら」と自然と考えることになって。すごくいいですよね。

久古:こんなにたくさんの方に当事者意識を持っていただけるなんて、ありがたいです。

塚田:我々も、いいアイデアを披露したいというより、どうしたら実現するだろうと、そこを起点として考えることができていた。コンペ自体がいい企画だなと思いました。これまで「ヤングコンペって出して終わりじゃん」と斜に構えていたこともあって。

大塚:ともすればクリエイティブって個人の才能と思われがちだけど、実際に世の中を動かそうというときには共創したほうがいいに決まっている。いい形で出すために、何が必要で、どれを吸収すべきなのか見極める力というのが、これからの若い人たちに必要な力なのかなと思わされました。

久古:博報堂に入社したのは、先輩から「この会社はクリエイティビティを社会価値に変える舞台なんだよ」という言葉をもらってなんです。でも「これが社会価値なんだろうか?」という仕事もあります。このコンペでは、本当に自分の中の「やりたい。そしてひとりでも救われる方がいますように」という思いで取り組めたので。

―是非とも実現したいですね。

永田:区長も「税金を割くことはできないけれど、一緒に営業に回ることはできる」と言っていました。私たちの持つ大学や企業、NPOとのつながりを活かせるかもしれないし、広告会社の持つコミュニティが活きるかもしれない。または、ビジネスだけではないアプローチがあるかもしれない。私たちのコラボレーションだからこそできることがあると、可能性を感じています。

大塚:審査会で区長が、今回このアイデアがどう実現したか、あるいはどこでストップしてしまったかを、後で発表してもいいねと話していました。必ずパートナーが必要ですからね、「今ここで止まってます」とわかるようにするのはすごいこと。

永田:どうやってつくったか、またはつくれなかったかというストーリー自体がソーシャルインパクトになり得ますね。最終成果物をつくるだけではない、情報発信の価値になる。プロセスを見せることがひとつのコンテンツになります。

大塚:もともとヤングコンペの出発点は、若い人が大きい仕事で「これを自分がつくりました」と言える機会がなかなか持てないから、アイデア段階で評価しましょうということだったと思います。でも今は、世の中に出る前のプロセスもソーシャルメディアで追える時代になっている。考える段階で、いろいろな人が関われる時代でもある。それをうまく捕まえるフレームになっているのかな。

―ACCも最初からそこまで見えていてつくったコンペではないのですが、「こうしたほうが」というご意見をいただきながら、コンペ自体も育っていっている感があります。

永田:行政が「こういう社会課題があるのでこうしようと思うんだけど、やってくれる事業者はいますか」と突然募集しても、誰も手を挙げないということが往々にしてあるんですよ。何をするにもサウンディング、すりあわせといったプロセスが多々ある。そもそもブリーフに問題があるのかとか、キャッチボールすることによってこちらも変えていったり。よりよいものをつくり上げるキャッチボールを、コンペという場でできたのはおもしろいですね。

大塚:フィードバックをした後すごくよくなっているのを見て、とても頼もしく感じたんですよ。審査委員もすごく嬉しかった。プレゼンを公開するというのもあまりないですしね。あらゆる場面でチャレンジがあるなと思いました。

久古:生配信でプレゼンというのも……。

塚田:昨日の配信(クリエイティブクロッシングは2日間の配信でした)を見て、「結構上から撮られるんだな」とかわかり、昨日からプレゼンの練習をはじめました。それも含めて仕事に活きるいい経験になりました。

―あれは昨日からの練習だったんですか。すごく個性が感じられて。

大塚:チャーミングでしたね。審査委員は結構ざわつきました。

一同:(笑)

久古:他のチームのプレゼンが、こんなに真面目なトーンだとは想定していなかったんです。

塚田:完全に浮きました。が、選んでいただけて本当にありがたいです。渋谷区に住むお母さん方にいろいろとヒアリングをして、その声を背中にしょっていたので。

久古:プレゼン直前、緊張よりも感謝の気持ちがこみ上げてきて涙が出そうでした。「ダイバーシティにどう向き合うか」課題への姿勢から示してくれた諸先輩方、リアルな声で企画の強度を高めてくれた当事者、人に届くプレゼンの演出を教えてくれた同期。チーム戦だと思っていました。応援してくれたみなさんに「やったよ」と報告できることが何より嬉しいです。

―本当におめでとうございました!

グランプリ企画概要

タイトル:
だいパーしてぃ
受賞者:
塚田航平(電通)
久古はる香(博報堂DYメディアパートナーズ)

ダイバーシティ&インクルージョンな社会の実現には、あらゆる個性・可能性を肯定しあうことが必要です。しかし、「親」の固定概念が、子どもの可能性を無意識に狭めてしまう問題があります。そこで、性別にとらわれない子どもの可能性に気づいてもらうため、性やジェンダーロールにまつわるメッセージをプリントしたオムツ「だいパーしてぃ」を企画しました。赤ちゃんの性と向き合うタイミングである「オムツ(=diapers)替え」を通し、身体の性別に縛られがちな親の見方を 自然と変えていきます。渋谷区の既存の育児支援のスキーム「育児パッケージ」を活用し、各家庭に配布することを考えています。

準グランプリ

タイトル:
渋谷飴
受賞者:
青沼 克哉(博報堂)
加藤 咲(WOW)
川上 茉衣(博報堂)

ダイバーシティにまつわる情報を、どうしたら皆が進んで理解し、広めたくなるか、という視点で考えました。渋谷らしさを意識した、ポップでフォトジェニックなスイーツです。

ファイナリスト
©1968,2020 Hasbro. All Rights Reserved. © TOMY
タイトル:
ダイバーシティ人生ゲーム
受賞者:
横田 恵莉奈(博報堂)
梨子田 海渡(博報堂)

他人の人生を体験する「人生ゲーム」の中で、自分以外のジェンダーについても遊びながら知れたら、様々な人がジェンダーの平等性を考えるきっかけになると考え企画しました。

ファイナリスト
タイトル:
CARE MASK
受賞者:
荻原 海里(博報堂)
中島 優人(博報堂)
永野 祐子(博報堂)

あえて「感染症の重症化リスク」というLGBT以外の多様性に着目しました。渋谷区がすべての人にとって過ごしやすい街であり続けることを願いつつ、これからもお手伝いできることを探していけたらと思います。

ファイナリスト
タイトル:
同性カップルの遺言書展
受賞者:
福居 亜耶(電通 関西支社)
石川 平(電通 関西支社)

日本では同性婚が認められておらず、同性カップルには法的保障がないという「法の下の不平等」な状況。そこで、困っている当事者をケアしながら、社会の理解を促すために、『遺言書』を活用した企画展を実施する。

ファイナリスト
タイトル:
SHIBUYA STREET-ART LINE PROJECT
受賞者:
阿部 佑紀(博報堂)
遠藤 海太郎(サントリーシステムテクノロジー)
車戸 高介(日建設計)

この企画では、渋谷の資産であるストリートアートを取り入れた、 見える人 / 見えない人、双方のための点字ブロックを設置することで、渋谷にしかできないD&Iの実現にチャレンジしています。