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『CM素材ファイル化の研究』
~現在のCM素材・局到着からONAIRまで~

開場風景

ACC技術委員会では、2016年3月にCM素材のファイル化について研究会を行いました。

 テレビCM素材の完成からオンエアまでのプロセスのオンライン運用化が、2017年度開始を目標として具体的に動き始めている事は既に周知の事と思います。ACC技術委員会においても、2015年度の研究テーマのひとつとしてCMのファイル運用を挙げており、その内容について委員会としての情報共有を進めたいところでした。しかし、CM素材完成から局納品までの間のプロセスについては、詳細が詰められていくのはこれからで具体的な決定事項がまだ少ないため、情報の出揃った頃に改めて研究会を行うこととしました。
 その一方、今の仕組みから大幅な変化はせず、または既に一部オンライン化がなされている部分として、完成CM素材の放送局到着~素材登録~編成~オンエアまでの工程があります。これらは将来オンライン運用が始まるときにも、扱う対象が物理メディアからファイルデータに変わるのみで、つまりは「オンライン化されるとこの作業がこう変わる」という想像図がイメージしやすいのではと考え、今一度あらためてCM素材の局納品からオンエアまでのプロセスを研究する、ということで今回の研究会テーマ決定となりました。
 今回の研究会では、CM素材が最終的に持ち込まれる放送局の現在の実作業がどのようなものかをあらためて確認すべく、フジテレビジョンの瑞光委員にご協力いただき、同局におけるCM素材運用の見学会を実施しました。
 フジテレビジョンからは、以下の方々に紹介と解説、質疑への回答をお願いしました。

営業局営業管理センターCM部部長 瑞光 玲子 氏 (ACC技術委員会委員)
中川 覚 氏、松島 健介 氏
総合技術局放送技術センター放送部平 洋太 氏

■CM素材搬入からオンエアまでの流れ(フジテレビジョンの場合)

 はじめに営業局CM部において、瑞光氏、中川氏、松島氏より同部での素材受け入れの実作業について解説いただきました。以下要約です。

開場風景

局に搬入されたCM素材(現在はHDCAMまたはXDCAM) は、CM部において以下の手順で受け入れと登録、割付がなされる。

CM素材搬入→(事前チェック/考査 →)CM素材登録・割付<営放システム> → ファイリング(同時に考査も)<CMバンク> →OA終了素材返却

テレビ局に搬入されるCM素材は、2種類の運用上の属性があり、
・ タイムCM : スポンサー提供番組枠の中で放送されるCM
・ スポットCM :番組と番組の間(一部は番組内)で放送されるCM
に分けられている。

 CM素材と一緒に搬入されるのは、タイムCMは「テレビ番組CM連絡表」と「提供ロゴ」、スポットCMは「テレビスポットCMスケジュール表」。(スケジュール表ではなくEDIによる割付データが伝送されるものもある。)これらは放送の設計図を作っている〔営放システム〕に、CM素材として登録される。ファイルベースメディア(XDCAM)で搬入された素材にはメタデータが含まれており、10桁コードをはじめとする情報は、フジテレビではソフトウェアを通して即座に読み込む事ができる(スポットCMの場合は多くがEDIデータにて取り込み済み)。タイムCMは提供番組の枠内で、各提供社に平等にチャンスを与えるために、競合等に配慮しながら、ローテーションを組む。スポットCMは、同業種が並んだり、酒類→自動車など、相性の悪い商品カテゴリー配列になるなどの不都合が起きないよう順位付けを行う。
 「CMバンク」へのCM素材本体(映像音声)の登録は「ファイリング」と呼ばれ、ファイリング終了以降のCM素材は全てファイルの形で扱われ、いわゆる「オンライン運用」の形となる。素材納入時とファイリング作業時に、実際に登録した素材情報とクレジットに不一致はないか(広告主名、CM素材名、10桁CMコード、素材秒数、音声区分、CM字幕の有無)、技術面に不備はないか(ラウドネスチェッカーを使ったCM音声チェック、“パカパカ”といわれる過度の画面点滅のチェック)、No1表記(裏付け資料があるか)、表現考査、字幕情報確認などが行われ、チェックをパスしたものがCMバンクに登録される。

  以上の説明をCM部にて聞いた後、会場をメディアタワーに移し、CMバンクに登録された素材が、実際に送出される主調整室(マスター)を見学しながら、送出の工程から緊急放送がある場合の措置等をお話いただきました。

開場風景
CM素材搬入

開場風景
CM素材登録

開場風景
CMバンク

開場風景
マスター

 最後に、技術部の会議室にてCM素材の一連の搬入工程についておさらいをし、今後、CMのオンライン化に向けて“どの部分が変わり、どの部分は変わらないか”等について質疑応答と議論を行いました。
各委員からは

「現状では搬入されたテープまたはファイルベースメディアからのファイリングが完了した以降の部分は既にオンライン化されている。他の部分が完全にオンライン化されても不変の部分と捉えてよさそう」

「ファイリングから送出までの過程でのチェックの部分に、あまり変化は及ばないのではないか。目に見えてハッキリするのは、搬入されたCMを保管する保管棚が無くなること。代わりに送受信サーバのようなものが入るだろう」

「現状ではスポットCMとタイムCMで作業工程が違っている。タイムの場合、今は素材と指示書がセットで放送局に入っているが、これがオンラインになって素材と指示情報が分かれたらどうなるのか?そこの運用は今後の課題のようだ」

「CM素材の頭にあるクレジットは、放送局でのファイリング作業で同一性をチェックする意味で大変重要だ。放送局でチェックの部分に今後も変化がないのなら、オンラインになった場合のクレジットはどうなるのか。何秒間提示するかなど映像フォーマットの見直しも考えられる。」

「タイムCM、スポットCM、局の番宣CM、ACなど、搬入~送出までの扱いに違いのあるプロセスを、どう共通化してオンライン化していくかが課題」などの意見が出され、活発な議論が交わされました。

改めて一通り放送局でのCM搬入から送出までのプロセスを見せていただき、今更ながら勉強になった部分が多々ありました。特に制作会社関係にはCMバンクの仕組みを知らない方も多く、意義深いものであったと思います。

今回取り上げたこの「放送局」部分においては、オンライン運用後の、根本的な仕組みの大きな変化はなさそうであり(実際ファイリング後から送出までのオンライン化は済んでいる)、よって今後の原版完成から局納品までのプロセスを見ていく上でも、具体的な想像図を描く上での一助になるのではないかと感じた次第です。

以 上

文:勝田正仁(技術委員会委員長)