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テレビCMオンライン運用 開始から1年の最新状況と導入に向けて

 ACC技術委員会では、2019年2月26日(火)に、「TVCMオンライン運用」についての研究会を実施いたしました。
 2017年10月にTVCMのオンライン運用がスタートしてから、約1年以上が経過しましたが、運用開始後のさまざまな実例が見られるようになってまいりました。同時に、運用が始まってみて改めてわかった問題点や課題も少なくないようです。
そこで、当委員会では2017年4月に実施した運用開始前レクチャーと同様、日本広告業協会(JAAA)の外山善太氏を講師にお迎えし、運用開始前と開始後の「定点観測」の様子を伺うこととしました。以下はその研究会内容の要約です。

講師:一般社団法人 日本広告業協会 CM素材オンライン運用推進プロジェクト
外山 善太 氏(CM素材オンライン運用推進プロジェクト リーダー/株式会社 博報堂メディアパートナーズ)

2019年2月時点のオンライン運用普及状況

TVCMオンライン運用が開始された2017年10月時点、対応局数は21局であったが、2019年2月現在、78局に増加した。これは当初の予想より早いペースである。対応がやや遅れていた福岡、宮城などでも普及の目処が立ってきている。
オンライン運用の地上波全局普及は、2021年3月を目標としているが、現状のペースではそれ以前に達成できそうな予想である。2019年2月25日時点でオンライン運用を実施した広告主は146社、広告会社は43社である。(広告EDIセンター調べ)
また、現在参入中の素材搬入事業者は9社である。
現在までの運用実績は約37,000本である。2017年の運用開始月の実績は約400本、その後2018年4月は2,000本、10月は4,000本、といったように、番組改編時期ごとに倍々の増加を見せている。(広告EDIセンター調べ)2019年4月には10,000本を超える予想である。

あらためて確認されたオンライン運用のメリット

・コスト
これまでのHDCAMプリントと比較してオンライン搬入費(1局あたり)の方が安価に。
一方、オンラインや新XDCAMが開始されるにあたり、新たな作業費目(後工程費)が発生。
オンライン搬入可能局数により、今までよりコストが増加する可能もあることに注意が必要。
・搬入期日
オンライン運用化されると放送局への搬入窓口が本社になるため東京局以外も中3営業日前での搬入締切りとなる。(今迄は中4営業日前迄に東京支社に搬入)
・エコロジー対応
搬入にテープやディスクを使用しないことで物理的廃棄は発生しなくなる。
(現在日本全体で毎月2t~4tのテープ・ディスクが廃棄されている《推計値》)
輸送のためのCO2も発生しなくなるのに加え保管のスペースも不要になる。

オンライン運用導入の必要性

・ファイルベース化への対応
現行のテープ対応機器は2023年3月末でのメーカーサポート切れが予定されており、安全なテープ運用終了のために使用期限前倒しの可能性もあることから、ファイルベースでの素材作成が素材管理上有用。

ファイルベースメディア化の意味付け

・何らかの事情でオンライン運用に切り替えなくてもファイルベースメディア化するメリットは大きい。
 ⇒既にほぼ全局がXDCAM受け入れ可能。
  プリント本数次第ではHDCAMより安くなる場合がある。
  ファイルベースメディア化しておけば今後オンラインへの切り替えは容易。

広告主の反応

日本アドバタイザーズ協会のアンケートによると、導入社の評価として、コストが削減された、スケジュールが短縮された、テープの保管スペースが不要になった、などの評価が上がっている。
一方、未導入社がオンライン導入できない理由として、具体的メリットがまだ見えない、コストの削減にならない、広告会社から提案がない、広告会社との(従来以上の)密なやり取りが必要、などが上がっている。
今後導入に向けて期待されるのは、コスト削減、受け入れ局増加、柔軟な差し替え対応、局納スケジュール短縮、素材の一元管理、字幕対応などとされている。

放送局の反応

・チェック等の作業工程が減り、「素材の誤認」というストレスから解放されると好評。
・一方で従来の搬入手段との二重運用の負荷が増大しており、早期のオンライン一本化を望む声がある。

広告会社の反応

・プリント作業とオンライン運用作業との二重運用による負担増。
・制作プロセスが統一化されていないとの声も。

1年たっての普及率   まだ10%程度の普及

・開始から約15か月経過したがまだ約10%の普及(推計:全国全量中)
・導入一年のタイミングで問い合わせが急増
 昨年10月のオンライン運用導入一周年頃から放送局への広告会社からの 「どうやればオンラインで入稿できるのか?」という主旨の問い合わせが増え始める。日本広告業協会加盟社以外の社も含めて広告会社への具体的な導入手順の周知作業が求められる。
  ⇒改めて「テレビCMオンライン運用の最新状況と導入の手順」として説明会を実施
   また同説明会内容をPDF化して日本広告業協会のHPにて公開している。

普及阻害要因

<1>広告会社営業 管理手間に関する課題
◇課題:送稿手段併存による手間
・オンライン対応局と未対応局が混在していることからモノでの送稿とオンラインが併存し、送稿時の素材管理・運用で営業に負担がかかることを懸念し、積極対応しない。
・現在は対応局/未対応局の内訳が日々変化しており、納品のたびにファイル納品局とメディア納品局の確認をしなければならず、追従対応が困難である。
<2>広告主 コスト的メリット希薄による課題
◇課題:広告主コストメリット
・現在HDCAMでかなり低コスト運用が実現できている広告主にとっては、まだオンライン運用との併用メリットに乏しい。
 ⇒この二つの課題については過渡的なものでありオンライン運用普及が100局を超えてくる2019年4月以降解消に向かうと思われる。
<3>制作過程に関する課題
◇課題:制作プロセスに起因する阻害要因
・ オンライン運用に切り替えたところ、対応のコスト的な負担だけでなくテープ運用よりも数日余計に時間がかかるスケジュール的な負担があった。
・ 制作中のCM素材に関してプリント納品からオンライン運用へ急遽の切り替えを打診した際に、後工程対応費用での見積などから、HDCAMプリントの方が総額コストが安い状態になった。

⇒オンライン運用化時のワークフロー遵守の徹底が必要。搬入プロセスについては「広告制作プロセスマネジメントハンドブック」に明記されており、更なる周知を目的に2018年9月に4団体で説明会を実施。
立ち上がり時期は上記の事態があったが、事前に作業内容を確認することを日本広告業協会、日本アド・コンテンツ制作協会等が繰り返し訴求し、解消してきている。

広告主からオンライン運用の判断があったら、広告会社はオンエア局のうち、何局がオンライン運用可能かを広告主に報告する。また、オンライン運用が決まったら、制作扱い広告会社は、制作会社に制作実務開始前に通知することが必要である。

素材搬入事業者

新たなプレイヤー「素材搬入事業者」は、2019年1月時点で8社が稼働している。
4社はCM制作関連の企業(フォトロン/イマジカ、イメージスタジオ・イチマルキュウ、音響ハウス、オムニバス・ジャパン)。
2社は英国からの専業事業者の参入(アドストリーム・ジャパン、Group IMD Japan)
加えて放送機器に精通するNEC、大手ブロードメディアのCDN、と多様な業態から参加しているが、役務がシンプルであるために素材搬入についてのサービスに大きな差異は見当たらない。
2月からは新たにユーキャン・アドが事業を開始して計9社となっている。

想定外の課題

・放送局側の課題・事例
オンライン送稿を行った際、放送局側の機材設定の問題で素材不備の問い合わせ。(放送局のプレビュー確認環境が、データ本来の映像ではなく、エンコードされた映像で表示される。本来の映像は問題なく放送できる状態であり、特定の放送局内環境で生じた事例)
・素材搬入事業者側の課題・事例
広告主と素材搬入事業者が直接取引を行っている場合は、制作扱い広告会社のポジションを実質的に素材搬入事業者が担うことになるが、素材搬入事業者の送稿スケジュールへの理解が浅く、送稿締切日に間に合わせる為に媒体扱い広告会社が対応を迫られる。

その他、放送局の局舎移転によるサーバー移設関連費用の発生などといった問題も発生している。

オンライン運用についての最新の動き

・テープ(HDCAM)運用終了
2023年3月末にHDCAM機器のメーカーサポート切れが迫ることから日本民間放送連盟と協議し、テープ運用の安全な終了を目的に2021年3月末での搬入基準からの除外を検討。
(移行期間《既存素材使用可》は2022年3月末迄)
・日本広告業協会としての普及目標設定
2021年3月末までに東京キー5局への搬入素材数の80%をオンライン化すること、またテレビCM制作実績のある全ての加盟社がオンライン送稿を実施することを努力目標化している。

Q&A

広告会社にとって新たに導入が必要なものはあるのか?
Webにアクセスできるパソコンがあれば対応可能。
制作扱い広告会社は素材搬入事業者と契約し、サービスを利用。
媒体扱い広告会社は送稿事業者の広告EDIセンターと契約し、サービスを利用。
素材搬入事業者によってシステムの操作方法が異なるのか?
素材搬入事業者のサービス範囲によってシステムインターフェイスは異なるが、基本機能(メタ入力、扱い広告会社指定、素材アップロード)についての操作手順はほぼ同じになるよう素材搬入事業者向けガイドラインを提示している。
素材名、10桁CMコードの付番ルールは変わるのか?
今までと同じ扱い。搬入規準で決められているルールに則る。
10桁CMコードの一意性はCMDeCo内CM登録認証機能で登録管理されることにより担保される。
制作納品および搬入用素材納品における責任分界点は変わるのか?
果たす役割・責任は変わらない。広告会社に「モノを届ける」納品が、指定された搬入サーバーに、「ケース用カードやラベルに相当するメタ情報の入力とMXFファイルのアップロードをする」ことに変わるだけ。
旧フォーマットでのXDCAMはいつまで受け入れ可能か?
搬入基準上、2018年9月末までで終了した。
HDCAMテープはいつまで受け入れ可能か?
メーカー(SONY)の保守サポートは2023年3月末まであるが、素材のファイル化促進の観点から日本民間放送連盟・日本広告業協会間で早期に受け入れ終了が可能か協議を開始。終了時期が前倒しになる可能性がある。
在局確認および素材返却管理の運用はどうなるのか?
在局確認については放送局との個別調整により運用対処とする。素材返却作業は無くなるが、放送局内で素材ファイルを削除した旨を広告会社に通知するために、一部の放送局では返却通知APIを用意している。
送稿指示からどれくらいで放送局に届くのか?
システムとネットワークを共有して使用するため混雑状況による。
CMDeCoでの局搬入指示から放送局への到着まで数分から数時間と幅がある。

 以上を受け、講演後の質疑応答の時間では、委員と講師の間で活発に意見が交わされました。また広告主、広告会社、放送局、制作会社それぞれのポジションから、オンライン運用開始後の現状を確認することができ、大変有意義な議論を持つことができました。 近い将来の全局オンライン対応に向け、的確な見極めと対処を行っていく必要を再確認し、研究会を終了しました。

文:ACC技術委員長 勝田正仁