「ACCCCCC×クリエイティブレシピ コラボ企画」
万博の人気パビリオン「住友館」
森のリアルな体験と多様なコンテンツはどうつくられたのか?
途方もないスケールのプロジェクトをまとめあげた総合演出を深堀り!
今回のゲストは、大阪・関西万博の『住友館』総合演出を手掛けた、モンタージュの落合正夫さんです。
本当に森に入ったかのような空気感、さまざまな表現手法を織り交ぜた体験のすばらしさ――
来場者に60分もの感動体験を与える、大スケールのパビリオンをいったいどのようにつくりあげたのか、教えてください!
※この対談の動画は、ACC公式YouTubeチャンネルで公開されています。
落合 正夫(株式会社モンタージュ/展示・映像ディレクター)
1980年生まれ 東京都出身
CG・VFXディレクターを経て、演出家として活動。映像演出や空間演出を手掛け、ドバイ万博日本館、ミラノデザインウィーク、国際芸術祭「あいち」など国内外のプロジェクトに参加。
受賞歴
“KUKAN 7dimensions”Milano Design Award 2016 People’s Choice賞
“FUERZA BRUTA WA 空間演出”DIGITAL SIGNAGE AWARD 2018 DSA10th作品賞 他2部門受賞
“MEET MR.MATSUSHITA”映文連アワード2018 経済産業大臣賞/i賞
EXPO 2020 Dubai Japan Pavilion“Where ideas meet”BIE Prizes and Awards Exhibition Design 金賞
安達 翼(ACC会報『ACCtion!』編集長/株式会社電通 クリエーティブディレクター、アートディレクター
1979年鳥取県生まれ 2002年電通入社
広告コミュニケーション、企業ブランディング、CI/VI開発、商品開発、
などのクリエーティブ制作を手がける。
主な受賞 : Cannes Lions ゴールド/ NYADC シルバー / The One Show ブロンズ/
D&ADウッドペンシル/ Adfestゴールド/ Spikes Asia ゴールド/
ACC賞/ 朝日広告賞/日経広告賞/ 広告電通賞/など
一森 加奈子(ACC会報『ACCtion!』アートディレクター/株式会社電通 アートディレクター)
1995年大阪府生まれ、2018年武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業後、電通に入社。
大阪・関西万博「住友館」〈パビリオン〉
【材料】
- 登山
- 妄想
- フリクションペン
- 3Dツール(Blender UE5など)
- スザンヌ・シマード著『マザーツリー』
- 週1度の定例会
- 大阪での共同生活
森をつくりだした妄想の原点
住友館は、「森の中を探索しながら、さまざまな命の物語を体験する」という、住友グループ19社が共同で出展したパビリオンです。私は総合演出という立場で、体験全体のストーリー構築から各コンテンツ演出・制作を手掛けました。総合プロデューサーの内藤純さん(PARADE)が描いた、風・森・冒険・未来を描く「UNKNOWN FOREST」という構想をどう具現化したか。
まず、「UNKNOWN FORESTとはどういう森なのか?」というところから手を付けました。住友は400年もの長い歴史があるからこそ、一個人でははかれない時間軸でものごとを考えられるようなものにしたい。
きっかけとなったのは森林生態学者スザンヌ・シマード著『マザーツリー』との出会いです。森の木々は地中の菌根菌によって高度なネットワークで結ばれ、そこでは異なる種類の木々が、ただ競い合うのではなく、互いに支え合いながら共に生きていることが明らかにされています。そういった森の知られざる部分を解き明かしていく一冊で、内藤さんの思い描いた「UNKNOWN FOREST」の冒険と結びつくなと、そこから組み立てていきました。
私は登山をするのですが、夜の森の暗闇にいると、神経が研ぎ澄まされ、あらゆる音に敏感になります。闇の中で想像が次々と広がり不安や恐れがやってくる。しかし夜が明けていく頃には、あらゆる音に生命を感じ、不思議と心が静まり、安心していくのを感じます。
朝日が入ってきたときの森の変化、山を登っていくうちに陽の光に照らされた霧がゆっくりと広がり、やがて日が高く昇ると、その霧は瞬く間に晴れていく。森林限界をこえると岩だらけになり生命の境界が見えてくる。強い風が目の前の雲を運んでいく。下を見るとさっきまでいた森が見えて、自分の無力さを感じる。昼と夜、光、霧、風といった天候の移ろい、何かが生まれ消えていく…。そういったさまざまな時間軸で起きる自然の変化を、パビリオンでの体験に落とし込みました。
壮大なスケールを描くための
とてつもない時間と熱量
大変だったのは、3年というプロジェクトの長さです。開幕するまでお客さんの反応を見ることができないので、「世界にはあらゆるコンテンツが溢れ、万博会場にもたくさんの演出がインフレーションを起こしている中で、本当に楽しんでもらえるのか?」という不安と緊張感をずっと抱いていました。
その間、毎週1度の4~5時間にわたる定例会を重ねていきました。プロデュース、建築、運営、造形、空間、広報、われわれ演出――それぞれが内藤さんを中心に課題を積み上げクリアしていった。万博で新しい価値をつくり出したい、そんな思いを共有するチームとして、互いにカバーし合い、時間をかけて、丁寧に一つ一つの場面をつくりあげていきました。
私は、人の心が動くようなものをつくるためには、自分の何かを削らなければできないと考えています。
そのためには自分が大きな熱量をもっているということが必要で、今回のプロジェクトでは、幸運にもおなじ熱量を持った人たちと語り合い挑戦していくことができました。その結果、数あるパビリオンの中でもトップクラスの人気パビリオンとして、たくさんの人の記憶に残る体験を生み出すことが出来たのだと思っています。
この対談の動画は、ACC公式YouTubeチャンネルで公開しています。
さらに詳細なプロジェクトの進め方、技術やチーム連携の話、
落合さんが日ごろどんなインプットをしているか――
あまりに示唆に富んだストーリー、ぜひご視聴ください!
「住友館 UNKNOWN FOREST 誰も知らない、いのちの物語」
クライアント:住友 EXPO2025 推進委員会
プロデュース:(株)電通ライブ
総合演出:(株)PARADE
空間演出:(株)モンタージュ
空間デザイン:(株)乃村⼯藝社
映像・コンテンツ製作:(株)モンタージュ
施⼯・造形:(株)乃村⼯藝社、フィールド・クラブ(株)、宝島造形(有)
照明:(株)アートブレーンカンパニー
映像システム・⾳響:(株)プリズム
シアター舞台造形:⾦井⼤道具(株)
3DCG協⼒:(株)グリオグルーヴ リンダチーム、(株)シーズクラフト、ミラクルマイル(株)
コレオグラフィー:⼩㞍健太、佐藤琢哉
ダンサー⾐装デザイン:廣川⽟枝
⾳楽:(株)ピントン
ランタン製作:⼤⽇本印刷(株)
ミスト:パナソニック(株)
アーティストエリア空間デザイン:BATON
アーティスト:リト@葉っぱ切り絵
広報・コミュニケーション:(株)PARADE、(株)フルハウス
コピーライティング:(株)NOT FOUND、(株)PARADE
プランニング・ロゴデザイン:(株)UNZU


