各審査員のコメント

審査講評&This one

ラジオCM部門【審査委員長】

澤本 嘉光

澤本 嘉光  審査会のあと、ACCの事務局の方から、とても嬉しいメールを頂きました。引用させていただきたいと思います。

「昨年、今年と審査委員長をお務めいただき、澤本さんにはACCのラジオを大きく変えていただきました。賞を与えるだけ、だったのが、ACCのホームページで受賞作品を聞けるようにしていただいたり、番組をつくっていただいたり。澤本さんにとられては、『ごく当然の方向に向けただけ』かもしれませんが、こちらにしてみましたらそれはとてもセンセーショナルなことでした。去年、今年と、ラジオ審査会がとても楽しみでした。本当にありがとうございました。」

結果として、こういう意識をACCの中に起こしたかったというのが、審査委員長を引き受けさせていただいた時の僕の気持ちでした。

審査結果、は、審査会の雰囲気とすごくリンクすると思います。
審査会自体も、クリエーター、放送局、だけでなく、出演してらっしゃるクリスさん、プロのリスナー山田さん、雑誌と言う違う媒体の世界の西田さん、と参加していただくことで、妙なクリエーターのこだわりのみを突出させた結果にしないで、世の中の聞いている人の気持ちにより近いものを選んでいけるようにしたつもりです。

その結果として、今年のグランプリがあり、金賞はじめとした各賞があると思うのですが、今年は聞いていて楽しいものが結果として残りました。
それが、いまという時期の気分なんだと思いますし、ラジオはそちらへ向かって行ってほしいなと思っています。
そして、ラジオCMを聞いてもらうためのラジオ番組、を放送局の協力で作らせていただき、受賞作を10本以上流していただいた時に、『ラジオCM、面白いなあ』と言う印象をリスナーに与えられているとすれば、それが一番のメッセージになると思います。

そして、伝えられていない気持ちとして書かせていただけば、もっともっと、幅広い人たちに参加してほしいなと、切に望んでいます。

ラジオCM部門【審査員】

井田 万樹子

井田 万樹子  グランプリのワコールが飛び抜けていました。票が割れることが多かった審査会でしたがグランプリはコピー、演出、アイデアの太さ、エッチの頃合い(?)など、あらゆる方向から評価の声があがり、一致団結でした。素晴らしいです!一方で、気になったのは、企画CM部門の寂しさ。新しいラジオの力を模索し、ラジオの未来や可能性を示す部門。ここが寂しいと、ラジオの未来が不安になります。大きなスケールのラジオCMに、来年はぜひチャレンジを。

井村 光明

井村 光明  投票するけれどズバっと決めるわけでもなく、ふんだんに用意されたお菓子を食べながらみんなの話を聞いて、それもそうかもな〜と気が変わったり。昨年と同じメンバーだったこともあり、ダラダラ自分の部屋でラジオを聴いているような審査会でした。そんな中だと、あまりに凝った作品よりも、ちょっと緩いくらいのものが良く聞こえたりして。作り手としては目立つための違和感を残そうとするし、審査する側は、選んだ根拠を示さねばと、企画性の立ったものを評価しがちだったりします。しかしラジオの場合、番組とCMを分けて考えず、一緒に居心地のいい場所を作る、と思った方がいいのかもしれません。昨年クリスさんが、「あまりに突拍子もないCMが流れると、リスナーが局を替えやしないかと冷や冷やする」といったことをおっしゃっていました。今更ながら、なるほどなあ。

大久保 佳昭

大久保 佳昭  上司から「おいゼッタイ賞獲れよ。」と言われ「そんな…。」と絶句したあなたに、審査員の投票ポイントを書きます。今年の審査員の投票行動を必死に観察した結果、共通点は2つ、とにらみました。「制作者の志が高いこと。」「現場の人たちが楽しんで作ったこと。」です。前者は、別に大そうでなくて、「人がやらないことやってやる!」でOKです。後者ですが、実は予想以上に「現場の楽しい空気感。」が伝わるのです。フシギです。音のみだからしょうか?「上記2点ってホントにホント?」と聞かれると、私も全員に確認した訳ではないので、別に信用してもらわなくていいです。でも「2点とも当てはまるCMが出来た!」と思う方、ゼヒ来年応募して下さい。

クリス・ペプラー 

クリス・ペプラー   昨年に引き続き、2度目の審査員をさせて頂きました。昨年を振り返ってみると復興、風化防止、癒しといった震災の影響を受けた作品が多かったと思います。今年も復興をテーマにしたラジオCMはいくつかエントリーされていましたが、その数は前年に比べ、随分減ったと思います。来年はもっと減るでしょう。それが良いか悪いかは別として、今年は「よし、前へ進もう」と言った気持の表れなのか、審査のタンジェントは明らかに別を向いていました。今回の審査ではラジオならではの擬音、オノマトペ、モノマネ、歌、S.Eを駆使した「音」の面白さを追求した作品が目立つ中、ストレートにコピーがずば抜けた作品たちが制しました。グランプリ作品もそうですが、練りに練られた、コピーライターの文才、ウイットに唸らされました。

見目 幸伸

見目 幸伸  入賞を目指し応募されたある一定のレベルに達したCMがまとめて聞けるので、審査会は楽しく刺激的です。今年はさらに面白いCMが増えていた印象があります。「その手があったか」と目から鱗が落ち、感服したCMも多く、閉塞感を言われて久しいラジオCM、まだまだ発見されていないアイデアの鉱脈はありそうです。また一方で、もったいなかったのは、前半はよくできているのに、押さえのコピーが「え?」というものや、多分アナウンサーの演技力(局制作CMではアナウンサーが演技することも多々あるのですが)で評価が下ってしまったCM。わずか数秒の表現の差で、明暗が分かれることもあるんですね。おっかないです。

権八 成裕

権八 成裕  毎年言ってますが審査会はとても楽しいです。いつも非常に感心しますが、いいもの探そう、がんばってる人を応援しよう、という慈愛に満ちた優しい表情で、みなさん耳を傾けてらっしゃいます。マジで。賞レースは、いかにラジオの特性を生かしてるか、いかに予定調和を打破してるか、の競争で、そのどちらか或は両方をクリアした仕事が上位に食い込んでました。きっと今後もそうでしょう。でも、人間って天の邪鬼で、そのどっちも追求してない「なんで?!」ってものに妙に惹かれたりもするからタチが悪いんです。いい意味で。受賞したCMはどれもこれも素晴らしい。けれど、それだけが正解ではないし、もっと自由に、もっと色んな面白さがあってもいいかも、なんて思ってみたり。ほんと勉強なります。どうもありがとうございました!

中山 佐知子

中山 佐知子  今年も楽しい審査会でした。審査員がこんなに楽しんでいいのかとも思います。実のところ「楽しかった」としか書くことがないくらいです。書くことがないので書いておくのですが、ラジオのコピーは日本語を正しく使いましょうね。セリフの部分はキャラによって間違っていてもいい場合がありますが、それは考えた上での演出であってもらいたいです。書き手が間違えていたのでは話になりません。どうも日本語のレベルが下がっているような気がします。ラジオCMはご気楽な雰囲気のものが増えてきて、それはそれで楽しいですし、「たかがラジオ」という考えも否定しませんが、作り手が気を緩めっぱなしで間違った日本語を垂れ流すのは恥ずかしいことです。アイデアのみでCMは完成しません。完成させる体力を最後まで維持してください。

西田 善太

西田 善太  テレビは”出てたね”と言われるだけだけど、ラジオは”聴いたよ”と言ってもらえる。とは永六輔さんの名言。一人暮らしの頃、よく、家に帰る少し前にラジオをスタートさせるようタイマーをかけておいた。ドアを開けたとき、部屋が少しだけ温まっている気がしたから。「ラジオをお聞きの皆さん、ではなくて、ラジオをお聞きのあなた、が正しい」という話。ラジオが相手にしているのは、一人ひとり。「興味深いことにうっかり出会っちゃうのが、広告」と誰かが言っていて、それはラジオの特性だな、と思った。音楽も、グッと来るフレーズも、おもしろいCMも・審査会にまた呼んでもらえて、とても嬉しかった。メディア論とか大嫌い。古い新しいもどうでもいい。おもしろいラジオCMはおもしろかった。もっと聴きたい。聴いていたい。

廣瀬 泰三

廣瀬 泰三  初めての審査でしたが、誤解を恐れず言いますと、ボーっと聞くようにしました。
 タクシーのおっちゃん、料理中のお母ちゃん、そんなラジオを聞く世の中の人と同じ意識になるよう、敢えて「ボーっとする意識」を持って聞きました。でも、やはり、面白い CMは、ボーっとさせてくれません。ボーっとするともったいない気すらしてくる「風格」があるのです。
 特にグランプリのワコールに関しては、初めて聞いた瞬間、背筋がピンと延び、浅目に座ってたイスにきちんと座り直し、その座り直した時のギ〜ッというイスのきしむ音に「うるさいな」と自分に腹が立ってしまうほどの衝撃でした。
 ボーっとさせてくれない、そんなCMが集まるACCであり続けて欲しいです。

福島 和人

福島 和人  審査の経験は今年で3度目でした。審査員はみな「新しい可能性」、「新しい話法」を探しているようでした。私が重視しましたのは3つの視点です。@そこに人間や時代が描かれているか。A最後まで聞かせる音の工夫があるか。B「で、それ面白いの?」受賞作は、それぞれ巧みなチャレンジがあったと思います。
ここ数年の課題は、「それ話題になった?」、「それ、世の中動かした?」になっています。ラジオ広告が「古いもの」ではなく、「小さくても影響力のある強いもの」であり続けるには、もっと『じぇ、じぇ、じぇ』というような、大胆な取り組みが必要かもしれません。これは自戒でもあります。

福本 ゆみ

福本 ゆみ  今年のグランプリは、なんだろう?突出した面白い作品は、あるのだろうか?というのが、毎年一番気になるところ。ラジオCMは面白くないなんて、言われたくないですから。そう言う意味では、春頃にワコールを聴く機会があって、今年はこれがあるから大丈夫だと思っていました。テレビCMには絶対置き換えられないアイデアであり、しかも過去の作品のどれにも似ていない。もう出尽くしたかのように思えるラジオCMのアイデアですが、まだまだ、奥は深いですね。一方で、ラジオCMの新しいチカラを探す「企画CM」部門への応募が、今年は減ってしまいました。制作の現場では、ラジオが好きで、やりたいという人は、むしろ以前より増えているのに、ビジネスの現場では、ラジオ媒体が省かれていく…かわいいラジオへの応援を、引き続きお願いしたいです。

細川 美和子

細川 美和子  ラジオの審査は和気あいあいとしています。(そもそも、ほかの審査を知らないのですが・・・)おかげで、重鎮の方にも、素直に意見がいえます。なぜよいと思うのか。なぜよくないと思うのか。さっきまで意気投合していた人が、今回は否定しあったりしています。この審査会の過程が聞けたら、若手の人は勉強になるんじゃないかなあ。いや、何つくったらいいか、わからなくなったりするかも・・・。それぐらい、多様な意見が飛びかっていました。そんな中、多くの票をえて、勝ち抜いた受賞作はすごいと思います。こうやって、賞という形で残していけることに参加できて、うれしく思います。

山田 美保子

山田 美保子  澤本嘉光委員長、中山佐知子リーダーのお人柄のお陰で、昨年に引き続き、和気藹々とした雰囲気の中、審査は順調に進みました。テレビやラジオ番組の放送作家ということで、ある意味、部外者の私ですが、ACCの審査会のひとときは毎回とても有意義で勉強になる刺激的なものです。あえて苦言を呈するとすれば、「作り手の皆さんは毎日ラジオを聴いてくださっているのだろうか」と首を傾げたくなるようなCMが何本かあったことでした。テレビの視聴者以上に、ラジオのリスナーは敏感です。CMタイム、チューナーを他局に合わせてしまう方など皆無でしょう。なのに受け取り側のボキャブラリーや耳のサイズにそぐわない作品があったのは甚だ残念でした。もっとラジオを聴いて愛してください!