2010 50th ACC CM FESTAVAL 各審査員のコメント

テレビCM部門【審査委員長】

佐々木 宏

佐々木 宏 ※会報誌掲載のコメントの続きとなります。

第10位は、富士急ハイランドです。毎年、楽しいアトラクションの告知をユーモラスな表現で展開してきましたが、今年は初めてのベストテン入り。ジェットコースターの恐怖感を一般道路に置き換えるというシンプルなアイデアが、逆に恐怖感を強くし、同時に不思議な爽快感もありました。15秒スポット単独で、唯一のベストテン入賞です。

第9位は、トヨタ自動車iQです。昨年は、こども店長で、ベストテン入りを果たしたトヨタが、今度は、ユニークでチャーミングなIQのCMです。ハンマー投げをクルマに乗ったままするという愉快なアイデア。ダイハツのかくかくしかじかや、日産のハイジなど、楽しいクリエーティブもありますが、クルマ広告のほとんどが、予選で敗退して行く中、IQの独壇場に。クルマCMが、みなIQのような愛されキャラを追求したほうが、クルマ市場ももっと活性化するのでは?とふと考えたり。

第8位は、ダイワハウスです。昨年のダイワハウチュも大ヒットでしたが、今年は、役所広司さんの中年CMタレント役の哀愁度合いが強まり、多田琢さんの絶妙なセリフ回しと演出賞を獲得した高田雅博監督の独特の間合いを効かせた演出が、この人気シリーズをさらにパワーアップさせています。

第7位は、NTTドコモの「ひとりと、ひとつ。」渡辺謙、木村カエラ、ダース・ベイダーという異色の顔合わせが、皆ケータイ役で、出演するという、大胆不敵な企画。WEBを中心にしたティーザーでは、ダース・ベーダーからの無気味なメッセージからはじまり、斬新で、楽しく、またペーソスもある、スケールの大きいキャンペーンでした。

第6位です。ワコールのリボンブラ。不機嫌そうな外人モデルが、面白くなさそうに二人して歌い踊る。ブラ姿で。その歌詞が企画そのもの。今までのブラは、谷間に隙間ができてパカパカしてしまい、これではイカンと思い、改良したという企業のオリエンテーションの説明みたいなものをそのまま歌にした。
ナカハタ節全開で、痛快。これ、ピンクレディにもやらせてみたいです。

第5位です。サントリーのBOSS宇宙人ジョーンズシリーズです。昨年の覇者が今年も5年目のシリーズで、最後まで、グランプリを競い合いました。今年は、父親という仕事に就いたり、サンタになったり、時空を超えた役までこなし、相変わらずその人気は衰えません。

第4位も同じサントリーのBOSSで、「食後の余韻」のシリーズです。北大路欣也さんが演じる政界の大物風の男の贅沢な庭で繰り広げられる、重厚でかつふざけたお話。佐藤(砂糖)はゼロです。というレベルの低い親父ギャグやNGシーンのうまい利用の仕方も功を奏したようです。昨年と同様の議論がありました。
ソフトバンクとか、ボスとか、もうACCの常連は、殿堂入りか何かさせて、ベストテンから外したらどうだろう、という意見。長く続いているシリーズが、いつまでものさばっていると、新しい芽が育たない、ということでしょう。一理あり。ただ、続いているシリーズは他にもたくさんありますが、ベストテンに入りそうなのだけ、除外するというのもフェアではないという声もあり、ま、そういうことも考えつつ、再投票とする中で、ボスの2本は、4位5位という位置に納まりました。

そして、いよいよ、ベスト3の最終決戦。
第3位は、もう殿堂入りしろと言われてもめげずに第3位を死守したソフトバンク「母に会いに編」。 学割のキャンペーンを親孝行というテーマで、福井市一乗谷の故郷に住む母親を訪ねる180秒の長尺にまとめた力作。人気者の犬のお父さんの演技力もますます冴え、いつものユーモラスな展開とは違う味わいのものに仕上がっているのが評価された。このお父さんのシリーズも4年目を迎えたとのこと。

第2位は、最後まで、梅の花と接戦を繰り広げた「アデランス」ヘアクラブ。
アデランスは誰でしょう、というキャッチフレーズは、仲畑貴志さん。今年のTCC賞ではグランプリを授賞しており、二冠の期待も高まったが、惜しくも第2位。1行のコピーの力で、広告業界の一匹狼は、何十年も他を寄せつけずに突っ走って来たが、今年のこの1行は超弩級でしたね。この言葉自体が、CMの企画でもあり、「アデランスはわからない。」というもう一つの殺し文句で、結実する。強いコピーがどーんと真ん中にある企画は強いということを再認識させてくれる、ナカハタ印 健在なりを見せてくれた作品でした。

そして、いよいよ、第1位は、梅の花と言うことになります。
「梅の花」に私は一度、青山のベルコモンズのお店に行ったことがあります。一人で。湯葉料理を注文した覚えがあります。確かに、♪〜安い居酒屋と高級割烹のちょうど間だな〜と思ったし、♪〜夜はどうなの?どうだと思うの?〜と思ったし、♪〜旅館みたいだな、旅館じゃないんですよ〜、とも思った。さくらと一郎 と、ヘドバとダビデの、ちょうど間くらいの適度に高級すぎないタレントさんが歌う、安っぽすぎないCMソングが、妙におかしくて、たくさんビッグタレントを使わなくても、そんなにすごいロケや、セットにお金をかけなくても、グランプリって獲れるんだね、というメッセージ、励みにもなるグランプリ、と言えそうです。こういうご時世、なかなかいいグランプリではないかと、自画自賛する審査委員たちも少なくありませんでしたが、皆さんはどう思われますか?

審査委員長 佐々木 宏