CM技術関連
『スマートTV研究会』
~パナソニックが考えるスマートTVについて~
(文:ACC技術委員会 委員長 勝田正仁
素材提供:パナソニック㈱)
2012年4月、ACC技術委員会では、次世代のTVとして注目される、「スマートTV」について研究会を開催しました。
この模様はACC会報143号にダイジェスト版で報告しておりますが、ここではその拡大版としてお知らせします。
ここ数年で携帯電話はその機能においてほとんどPCに近いパフォーマンスを持つに至り、従来の携帯電話とは一線を画す「スマートフォン」として人々の間に広く普及しています。同じように、これまで放送番組を観るためだけの道具であった「TV」も、これからはPCなみの機能をあわせ持ち、家庭内での「映像サーバー」としても機能する、いわゆる「スマートTV」に進化すると言われています。しかしその概念や情報はさまざまで、ひとくくりで定義するにはもう少し時間がかかるようです。
そこで技術委員会では、“スマートTV像”の捉え方と展開の一例として、実際に受像機を発売するパナソニックの商品開発例を、同社マーケティングジャパン本部 コミュニケーショングループ広報チームチームリーダーの笠(りゅう)浩氏からご説明いただきました。
以下、その要旨をご紹介します。
■TVとレコーダーの進化~変化するTVの視聴スタイル
この10年間で、TV、そしてレコーダーはめざましい進化を遂げました。
その進化の中で、ただ単に番組を見る、録画するといったことだけではない、拡張機能が次々に搭載され、徐々に多機能な道具へと進化してきました。同時にユーザーのTV視聴スタイルも、受動的なものから能動的なものへと変化していきます。
そして今、スマホの普及が象徴するように、現代人がいま最も求めているのは、「場所と時間にとらわれずコンテンツを楽しむライフスタイル」なのです。
■インターネット回線と家庭用無線LAN(WiFi)の高速化で一気に広がったTVの可能性
一方、家庭ではインターネット回線の高速化が進み、さらにここ1年ほどで家庭用無線LANの性能が飛躍的に高まったため、ネットを介してもHDクラスの映像を十分に送れるほどの通信環境を一般家庭でも持てるようになりました。また、無線LAN環境に簡単に接続できるWiFi規格がPC、スマートフォン、タブレット、ゲーム機などのあらゆる映像・通信機器に浸透し、お互いのデータを手軽に高速でやり取りできるようになっています。
■パナソニックの提唱する「スマートAVライフ」
そんな中でパナソニックの提案するスマートTVの形とは、多機能TVとレコーダーを軸とし、外向きのインターネットと家庭内の無線LAN環境を組み合わせて実現した、時間と場所から解放された「スマートAVライフ」であるということができます。
■ネットにつなぐ「(ビエラ)コネクト機能」で広がる世界
スマートTVとはなにか?という問いに対する一つの答えとして、「スマートフォンに高品位なディスプレイがついたもの」という捉え方があります。パナソニックの新型モデルは、ネットに接続することにより一般的なスマートフォン等で使えるSNS、コンテンツサービス、アプリのほとんどを、美しく大きな画面でストレスフリーに楽しむことができます。これはTVの持つ「ディスプレイ」としてのポテンシャルを最大限に活用しよう、という考え方です。大画面でTwitterをチェックするかどうかは別として、動画コンテンツについてはこれまで小さく暗い画面で見てきたものを大きなTV画面で視聴する爽快さを確かに感じることができました。
アプリについても、TVの大画面上での効果を考えたものが今後開発されていくとのことでした。
■見たい番組をいつでも家中どこででも
パナソニックの提唱するスマートTVとは、「見る場所を選ばないTV」でもあります。これまでのTVは、アンテナ線をつながなければ映らなかったし、録画したビデオを見るのはレコーダーが置いてある部屋でなければなりませんでした。今回デモしていただいた新しいモデルでは、家中のTVとレコーダーが無線LANでネットワーキングされ、メインのTV以外にいちいちアンテナ線やネットワーク線をつなぐ必要がありません。つまり、TVだけがそこにあれば(または持っていけば)、キッチンでもバスルームでも庭でもトイレでも(?)、好きな場所で、リアルタイムのテレビ放送や、他の部屋のレコーダー内の録画番組を見ることができます。
また、ネットを介してHD動画をストレスなく見ることができるので、「もっとTV」や「NHKオンデマンド」などの見逃し番組視聴サービスも快適に利用することができます。つまり、見たいTVを、いつでも家中どこででも観ることができる、というわけです。
■家庭内設備や周辺機器、家電機器との連動
デモンストレーションではさらに「VIERA」(ビエラ)とDVDレコーダー「DIGA」を連動させ、これに同社のデジタルカメラ「LUMIX」や「SDカード」、「ポータブルテレビ」「ドアホン」「照明」「プリンター」など、他のデジタル製品や住宅設備、家電製品などと繋げることでどのようなことができるのか?が実演されました。
テレビの視聴スタイルが『受動的』から『能動的』へと進化し、家庭内の情報集約センター、集中制御センターとして機能する、「スマートTV」のさらに新しい答えを見出すことができたように思います。
■これからの課題
今、スマホやタブレットの愛用者の中では、家で録画したTV番組を端末にダウンロードし、通勤途中に電車内などで視聴する、といったスタイルが増えています。
今回のデモンストレーションでは、家庭内の環境はほぼ満足いくものだが、外出時の家庭とのリンクについてはどうか?といった質問が委員から発せられました。これについては街中や電車内などのパブリックスペースにおける通信インフラの発達がカギであり、家庭内無線LAN並みの通信環境が整えば、屋外においても同じことが可能である、とのことでした。
また、スマートTVでは有料コンテンツ、有料アプリの利用が増えてくると思われますが、現在スマートTVには、スマートフォンのように使った分、買った分の料金を通信キャリア会社がまとめてくれる、といったサービスがありません。
したがって、現状では有料番組を見たり、アプリを買ったりする毎に、何度もユーザー登録をしなければならない、といった煩雑さがあります。
こういった課題の解決が、まずは普及の足掛かりになるのではと感じました。
「アンテナやケーブルをつないで、決まった場所で決まった時間に見る」という今までのTV視聴の概念は大きく変わり、TVは好きな時に好きな場所で好きなカタチでコンテンツを見ることのできるデバイスへと進化していく。これが「スマートTV」のひとつの形であることを委員各位納得されたようです。
まだまだ発達途中で色々な捉えかたがある「スマートTV」ですが、今回の勉強会で、そのヒントの一端を見ることができたように思います。
以上