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箭内: さっき「命令されたことない」白土さんが唯一命じられたとおっしゃった「白土さんみたいな人を社内に20人作れ」っていうのは、おせっかいじゃなくなってしまった会社の中ではとんでもなく大変だったと思うんですが、最後どういうふうに白土さんのDNAを会社に植えつけていったんですか。

白土: 学校みたいなのをやりましたね。クリエイティブとか営業とか所属に関係なく、毎年30人から50人くらい集めて、1週間合宿するんですよ。で、いろんなジャンルの講師を呼んできてワークショップや議論をするんです。
その中で僕も講義をひとつ受け持っていて、やったのは「プレゼン完全再現セミナー」(笑)。過去に僕がやった主だったプレゼンを、同じ資料で全部再現してみせる。プレゼンって資料は残ってるけど、それだけもらってもどうやってプレゼンしたかわかりませんからね。そういうことをやるうちに、育っていった人がいます。意外と異業種から来た人が多いんですけど。

箭内: 電通のすごいところって、すごい上司のすごいプレゼンを生で見て、みんな自分のスタイルを作っていったところじゃないですか。その意味では「完全再現」というのは面白い。白土さんらしいアイデアですね?

白土: いろいろ考えたんですけど、再現してみせるのが一番刺激になるかな? と思って。

箭内: 僕、白土さんが不思議なのは、どことなく忍者っぽいというか(笑)、近寄りがたいようなオーラがあるのにみんなを引きつけていくじゃないですか。で、人に愛される。これ、どこに秘密があるんですか。

白土: うーん、どうでしょう?むしろ教えを求めて人に寄っていくタイプではあるかな。僕ね、もともとデザイン学校を2回受験して2回とも落ちてるんです。それで立教の法学部行ったんですけど、卒業する頃にちょうどオイルショックの不況で、どうしよう?と思ってたまたま宣伝会議のコピーライター養成講座行ったんですよね。大学3年のときかな?実はそこでも2日目で脱落して(笑)。
2日目に「発想」の授業があって教室に200人くらいいたんですけど、そのとき出されたのが「渦巻きクリップの使い方を、5分間でできるだけたくさん考える」って課題でね。で、僕は頑張って30個くらい考えたんですけど、前のほうに座っていた女性が「はい、73個できました」って言うんですよ。で、その人が「ボタンが取れたときに仮止めします」みたいに使い方を説明していって、本当に73個全部使えるの(笑)。僕、それを聞いてすごくショック受けて、広告っていうのは「生活のリアリティを知っていて、かつ頭の回転の速い人がやる仕事なんだな」と。それで通うの辞めたんです。つまり、デザインは大学に受からなくて諦めて、コピーも2日目で断念したと。

箭内: それは意外にも思える過去ですね。

白土: ところがいろんな会社の面接受けたら結局電通しか決まらなくて、配属もいきなりクリエイティブになっちゃった。「一種のイジメだな」と思いましたよね(笑)。すぐクビになるんじゃないかと。だけど、そのとき「ヘンにカッコつけてもしょうがない。オレはどっちみち才能ないんだから、できる人に聞きに行こう」って腹くくったんですよ。
もう徹底的にいろんな人に聞いて回りましたよね。お得意に「いいプレゼンてなんですか?」って質問してみたり(笑)。異分野の人にもとにかく会ってね。例えば寺山修司さんとか、当時「少年マガジン」の表紙をデザインしていた鶴本正三さんとか、舞踏家の田中泯さんとか、全然自分にそういう才能ないから、「すみません、この仕事一緒にやっていただけませんか?こういう企画を考えたんですけど」ってフレームを示すんです。
そしたら向こうは「あ、そう?そしたら一緒に考えてあげるよ」って言ってくれたりして、一緒に作っていけた。僕としては「どうやって作ってるのか?」を見せてもらえれば、追いつくことは無理にせよ、少しは真似っこもできるかな?という気持ちだったんだけど、それがよかったと思うんです。「自分でやらなきゃ!」と思ってコツコツやってても、全然できなかったと思う。「自分ではまったくできないので教えてください」ということを続けて、世の中にはとんでもないレベルで仕事をしてる人たちがいるんだとわかったのは大きいですね。

箭内: でも、ふつう見せてくれないですよね?そもそも「見せて」って言わないでしょうし(笑)。

白土: まあ、断られることもあるんですけどね。だけどとりあえず言ってみると。企画書があれば「ちょうだい」って(笑)。CDのところにいきなり行って、「プレゼンされましたよね?企画書ありますよね?いただけませんか?」って。そしたら「やるわけねえだろ!」って言われるんですけど、そこで諦めてはダメで、今度は一緒のチームの人に「企画書1人1冊配られましたよね?それ、まだ要ります?」なんて言って(笑)。そういうことをやってるうちに、「プレゼンすごいね」と言ってもらえるようになったんです。
そう言えば、サントリーさんを担当していたときに「プレゼンエンターテインメント」と自分で銘打って、行くたびに人格を変えてたこともある。サントリーさんって錚々たる有名クリエイターの方々と付き合っているわけだから、僕らみたいな代理店のペーペーが行ったところで驚きもしないだろうと思ったので。

箭内: どういうことですか?プレゼンのたびに「人格を変える」っていうのは。

白土: 例えば最初は柔らかな物腰でプレゼンする。で、次回は「いろいろ考えたんですけど、これ、オリエンが違うんじゃないですかっ!」みたいにいきなり態度がデカくなる(笑)。かと思えば妙に写真だけにこだわったりとか。
で、3回目のプレゼンが終わったところで、僕は帰ったんですけど、営業が呼び止められて言われたそうなんですよ。「ねえ、あの人、なんか薬飲んでる?」って(笑)。そしたら営業の人が「いや、あれは毎回同じプレゼンだと聞いてるほうが飽きるでしょうから、演し物を変える感じにしてるみたいですよ」って言ってくれたみたいで、それからクライアントが楽しみに待ってくれるようになった。「次はどんなプレゼンで来るんだ」と(笑)。
自分もそうやって楽しむことでうまくなっていきましたよね。やり方はいろいろあって、例えばサントリーに佐治信忠さんって会長さんいらっしゃいますけど、佐治さん(当時副社長)に初めてプレゼンするとき僕のイメージでは「今日は何のプレゼンだ?」とか言って、自分でめくり始めるタイプの方だと思ったんですよね。実際「どうぞ」って企画書を渡したら、予想通りすぐにパッとめくられた。だから、そこで2頁目に書いておいたんです。「この先、勝手に読むのをやめてください。読んでもわかりません。説明を聞かなければ」って(笑)。ニヤっとされてましたけど。

箭内: いますよね、プレゼンの途中で全部読み終わっちゃう人とか。僕もそれ悔しくて。どうやったら「次をおめくりください」って言えるかな?って昔いろいろ研究したのを思い出しました。

白土: そうなんですよ。相手がどう反応するかを読むのが面白い。ゲームなんですよね、プレゼンも。知的な遊び。自分としてはそれを楽しんでるんです。