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安藤: いま新しく全社方針が掲げられていて、それは「アクティベーションデザイン」という考え方でビジネスをやろうということなんですけど、組織の中でクリエイティブを中心に、それをどうやって根付かせて行くか? が僕の役割だと思ってますね。
「アクティベーションデザイン」って、広義に解釈すると効果を作ることなんですよ。動きや行動を作るってことだから。あとはデータをどういうふうにマス広告にも反映させていくかってことも課題になってくるわけだけど、「効果を作る」というふうに解釈すれば、いままでもそういう主義でやってきたと思うから、何の違和感もなくやれるなと。

箭内: ふつうに考えたらね、博報堂から社長が来て、博報堂をウロウロしてた人まで専務で来て…。

安藤: ウロウロしてたわけじゃないって(笑)。

箭内: なんて言うんですかね? まあ最初は複雑だと思うんです。だけど僕、大広の人たち見てると、みんな落合(寛司)さんや安藤さんの話すると楽しそうで、それはたぶん博報堂の二大照れ屋が行ったからだと思うんですよ。生の安藤さんの姿を大広の人たちが見られるのは、すごい幸せじゃないですか。

安藤: オレは緊張するよ。

箭内: 安藤さんが?

安藤: そりゃそうですよ。思ったことはちゃんと言うようにしてるから。落合だって同じでちゃんと発言してるし、なにより肚を据えることが大事だと思うんですよね。大広の人たちがね、いい感じだって言ってくれてるなら、そういう部分が伝わってるのかもしれない。

箭内: そういえば安藤さん、一回からだの具合が悪くなって甦って来たじゃないですか? そこから現業のど真ん中に帰って来たというか、からだを治したのもスゴいですよね。

安藤: あれはね、みんなに治してもらったようなとこがあるんですよ。入院してるときにホントに応援してくれて、チームの人間がビデオで映画を100本くらい持って来たり。病院は9時に消灯なんだけど、暗くなったら映画見てたんです。朝までずっと。
あと見舞いに来るときは、料理持って来てくれたりね。まあ、オレが指示してるんですけど(笑)。

箭内: 話聞くと病気を治すための生活じゃないですよね。夜はずっと起きてたり、病院のご飯じゃないものを食べたりとか。

安藤: いや、オレ、治るために必要なのは、前向きに生きるっていうことだと思って。ベッドも部屋の間取りの斜めに置くとかね。すると病室の印象がガラッと変わって、生きる喜びってこういうところにあるんじゃないかと思いましたよね。医者は「ここハワイみたい」って言ってましたけど(笑)

箭内: それ、クリエイティブディレクションですよね。自分の病室の。

安藤: 僕たちの仕事そのものだよね。できることはいっぱいあるんですよ。目のつけどころと発想を変えれば。

箭内: なるほど。ところで安藤さん、好きなCMとかってあります? 

安藤: ジャパネットたかた。

箭内: それはどうして?

安藤: 高田(明)さんがいいでしょ? あの人って、たんに安いから買いなさいと言ってるわけじゃなく、自分が体験してほんとにいいと思ったものを熱意を持って売ってますよね。それ、スゴいと思う。たんなる売り屋じゃないもん。自分の体験に基づいて、これを買うとどういう楽しい生活が待ってるかを伝えてる。だから売れるんです。
僕らはあれを勉強したほうがいいと思うけどね。コミュニケーションのありようとかモノを売るのがどういうことかっていうヒントが、あそこにはいっぱいつまってる。あとね、伝承がスゴいんですよ。高田さんはもう引退しちゃうけど、次を担う人が出てる。それがまた感じよくて。

箭内: 「伝承」っていうのは近くで見ないと無理ですね。

安藤: 結局、一緒に仕事するしかないよね。一緒に仕事してディスカッションして、同じ釜のメシを食う。それが結構大事でね、その中で色んなことが共有されて行って問題意識も高まって行くから。
僕らってロクでもない会議してるんですよ、だいたいは。でも、だれかがハッといいこと言う。そのときのCDの大事な仕事は、「おっ、いまいいこと言った。その真意は何?」って聞くことだと思うんです。それがものすごく納得できることだったら、じゃ、そのことをもう一回みんなで議論してみよう。で、そこそこ見えたら、一度定着してみようと。でも、もし定着してよくなかったら、それはやっぱり案がダメなんだから、やり直してまたグチャグチャ考えて、明日の朝また会おうと。そうやっていいものが出るように誘発していかないといけない。そのCDのやり方を側で見てる人が会得するというのが伝承なんだね。

箭内: 安藤さんのチルドレンっていっぱいいますけど、大広でさらに増えたらいいですね。

安藤: 口幅ったい言い方だけど、会社にもっと笑顔が増えるといいなと思ってます。

text:河尻 亨一  photo:広川 智基

箭内道彦(やない・みちひこ)

1964年生まれ。51歳。東京藝術大学卒業。1990年博報堂入社。
2003年5月独立し、風とロックを設立。現在に至る。
2011年の紅白歌合戦に出場したロックバンド「猪苗代湖ズ」のギタリストでもある。
「月刊 風とロック」(定価0円)発行人。
NHK Eテレ「福島をずっと見ているTV」レギュラー。
「風とロック」(TOKYO FM、JFN各局)、
「My Tokyo東京に恋をして」(ニッポン放送)番組パーソナリティー。
2015年3月、福島県立ふたば未来学園の、谷川俊太郎作詞による校歌を作曲。
2015年4月、福島県クリエイティブディレクターに就任した。

安藤輝彦(あんどう・てるひこ)

1946年生まれ。69歳。株式会社大広 取締役専務執行役員 チーフクリエイティブオフィサー。
株式会社博報堂 取締役専務執行役員、株式会社博報堂プロダクツ代表取締役社長を経て現職。
自動車から家電、ビール・飲料、美容製品に至るまで、企業のマーケティング課題に応えるクリエイティブ施策を長年にわたりクリエイティブディレクターとして担当。
社団法人日本広告業協会「クリエイター・オブ・ザ・イヤー」をはじめ、数多くの広告賞を受賞。