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箭内: タレントに関してはどうですか。出る人もすごく魅力的ですよね。JRAの高倉健さんや小林薫さんにしても。みんな安藤さんのことを好きになるのはどうして?

安藤: 隙だらけだからじゃない? あと、少なくとも名前ではキャスティングしてないから。こういうことがやりたくてこの人にお願いしようという考え方なんですよ。タレントのところにお願いに行くのも極力自分で行ってたから。ちょっと好かれるとしたらそういうことじゃない?

箭内: すごいですよね、ご自宅に健さん来たんですもんね。

安藤: その話になりますか?(笑)。

箭内: その話になります。安藤さんのところに健さんが来てると聞いて、お勝手口にご近所の奥様がたとかがバーッと溜っちゃって、隙間からみんな見てたっていう有名な話がありますけど。

安藤: そういう話になるとキリがなくなる(笑)。でも、それは悪い話じゃないからすると、JRAのプレゼンで健さんをキャスティングして、得意先も了解して、さあ撮影だってことになるはずだったんだけど、実は健さん了承してなかったのよ。それで困ってね。また別のルートでたどるのも良くないから、これはサシで勝負だ、刺したれと。映画観てたしね(笑)。

箭内: 網走番外地ですね。

安藤: うん、最後は一人で刺しに行くもんだと思って。その頃、健さんが名古屋球場で「ミスター・ベースボール」って映画の撮影をやってるということを聞いて、営業と二人で行ったわけです。で、「オレ一人で話してくる」って行ったんだけど一回目は拒否でね。めげずにもう一度行って二回目は好感触だった。最後に「握手」って手を差し出してくれたから。「あ、これいったかな?」と思ったら、何日かして「出るよ」って。
そういう経緯もあって妙に懐の中に入っちゃった。でも、そんなヤツいないんだよね、健さんとしても。それであるとき冗談で、「健さん、うちにメシ食いに来ます?」って言ったら、「おう、行くよ」って話になっちゃった。

箭内: そのエピソードには、さっきのリーダーの話に通じるものがありますよね。「人たらし」なんて言ったら言葉は悪いかもしれないけど、人にちゃんと自分のほうを向いてもらったり、力を合わせる気にさせたりっていうのは、クリエイティブでも経営でも、リーダーとして非常に大事な部分でしょう?

安藤: あるとき人から、「安藤さん、三百人くらいの会社やったら最高の能力を発揮しますよ」と言われたことがある。もっと数が増えてシステマティックにやる必要が出て来たらまた違うんでしょうけど、三百人なら全員の顔が見えるし、直に話せるから。

箭内: 安藤さんの言うことを聞くのは、みんなあんまりイヤじゃないっていうあの感じ……あれってなんなんでしょうね。

安藤: それはメシ(笑)。

箭内: オレ、そんなにメシ食わせてもらってないけど(笑)。さっき写真撮ってたときも可愛らしさってキーワードが出てましたけど、なんかカワイイんじゃないですか。

安藤: オレね、今日はもう覚悟してきたから言うけど照れ屋なんだよ(笑)。

箭内: そこがカワイイんでしょう。あんまりゲストを持ち上げてもしょうがないんですけど、安藤さんがいないところでみんな安藤さんの話するの好きなんですよね。

安藤: それはね、結構迷惑してます(笑)。

箭内: 安藤さんのレジェンドをどれだけ知ってるかで話の面白さを問われるというか、みんなのネタ自慢なんですよ。照れ屋で得してません?

安藤: うん、それで得したことのほうが多いかもしれないよね。

箭内: その一方で安藤さんの冷徹さ? バサッと切るじゃないですか。それはその人によけいな夢を見させない深い愛によるものなのかもしれないけど、できない人にそんなに長くつき合わないですよね。

安藤: 箭内が一番それを言うけど、オレお前のこと切った?

箭内: いや、オレは切られてないけど(笑)。でも、それはたぶん、クライアントをなんとかしてあげたいというときに、人も近道で集めたいってとこあるんじゃないですか。

安藤: まあ、そういうところもあるかもしれない。

箭内: でも、切らないリーダーって無理ですよね。安藤さんだけじゃなくだれでも。

安藤: 一般論で言うならそうでしょう。だって一人を生かすために全部が沈没しちゃうわけにはいかないから。でも、自分のことで言われると…。

箭内: すみません!

安藤: いや、君が言うぶんにはいいんだけど。

箭内: 今日はいっぱい安藤さんのいいとこ言ったので、ちょっとくらいは(笑)。いいとこだけだと説得力ないですよ。話変わりますけど、大広ではどんなことしたいと思ってるんですか?