ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSについてのお問い合わせ
【CM情報センター】CMの二次利用についてのお問い合わせ

現在、電話・FAXでの受付を停止しております。
詳細は、「CM情報センター」ホームページをご確認ください。

刊行物

TOP > 刊行物 > ACC会報「ACCtion!」 > コンテンツの冒険

ジャーニーからあふれ出る熱量

世の中の奇怪な廃墟や習慣を求めて写真に収める
「奇界遺産」の写真家 佐藤健寿氏。

―どうやってジャーニーを探しているんですか?

最近では情報が集まるようにもなってきていますが、今も本屋を見て回って「これは」と言う人がいると、すぐ会いに行っています。話してみると、情熱があふれ出てくるのが感じられるんですよ。「寝ても覚めても」という熱量を感じた人には、すぐに出演のお願いをしています。

だから番組に出たことで仕事が増えたとか、本が売れたと聞くとお役に立てたんだなと嬉しく思います。特に丸山ゴンザレスさん(危険地帯ジャーナリスト)、佐藤健寿さん(『奇界遺産』の写真家)、ヨシダナギさん(裸で親交を深める写真家)の人気ぶりはすごいですね。

―横井さんの中に流れている血と感応し合う人、ということでしょうか。

自分も見たことのないモノを見たいという思いが強いんです。一人旅でマチュピチュとかイースター島とか行きました。だからこの番組は、仕事しながら見たいものが見られる最高のパターン。仕事の役割上、自分はほとんどロケに同行できないのですが、本当は全部行きたいくらいです。同行したディレクターが持って帰ってきたロケ素材を、つい夜な夜な全部見てしまいます。「これすげーじゃん!」と止まらないんで。編集はまず実際に行ったディレクターがするのですが、その時使わなかったところでも自分が「おっ」と思ったら採用してしまいます。

例えばケニアで丸山ゴンザレスさんが「路上に羊が集まってますね」と近づいていって、結局「何もないですね、ただ集まってるだけですね」っていうシーンがあるんですよ。松本さんも「じゃあカットせーや!」って突っ込んでたんですけど(笑)。当然、何にもないシーンなので、同行ディレクターはカットしてたんです。でも僕は「あれ?なにこれ」と思って入れました。多分松本さんも突っ込むだろうと…。実際に突っ込んでくれたことで、このシーンはネット上でも話題になりましたし、ハードウォッチャーとして出演したバナナマン日村さんも好きなシーンと言っていた。

―同行ディレクターの中に、「ココ行きたくないよ」と泣く人はいませんか?

いますね。メキシコ麻薬戦争の取材の時もある程度体制を整えて行ってみたら、着いたとたん路上に遺体が転がっていて。日本ではありえないですから。毎日安否確認していました。バングラデシュでテロがあった時は、脱出するルートを日本からいろいろ調べたり…。

自分が見たいテレビ番組を作る

―なかには旅人ではなく、囲碁棋士やポーカープレイヤーを紹介する回もありましたね。これから番組をどうしていきたいですか?

一番いいのは「クレイジー」「ジャーニー」ですけど、ジャーニーだけでなくなるのはある程度仕方ないと。「クレイジー」か「ジャーニー」か、どちらかグッと味が濃ければいいかと思っています。自分は歴史が好きで、歴史上の人物ってどこか凄味があってクレイジーな人がたくさんいるんですよね。囲碁棋士の故藤沢秀行さんを取り上げた回もそうですが、ジャーニーじゃない人物の回は賛否両論があるんです。でも、変化は恐れちゃいけない。もしかして広がりになるかもしれないので。歴史ものの企画は通りにくいのだけど、今後は番組でいい形にしてピックアップできたらいいな、と思います。松本さんたちが「エ~ッ!」と驚いてるなら見てみよう、と思ってもらえる。

アフリカ奥地の原住民のありのままの姿を撮影するため、
裸で親交を深める写真家 ヨシダナギ氏。

―企画にはまず「自分が好き」があるんですね。

まず自分が好きなことじゃないとダメなのでは、というのは今すごく思うこと。天才ではないので、心から湧き上がるようなことじゃないと徹夜までして作れないかもしれない。最後の一歩のところで妥協するもしないも、「自分が見たい」があれば時間の限りやれる。経験を積めばテクニックでなんとかできるのかもしれませんが、今の自分にはないので。

―影響を受けたクリエイターはいますか?

とくに誰という方はいないのですが、子どもの頃『ダウンタウンのごっつええ感じ』と『進め!電波少年』を見ていました。『電波少年』でヒッチハイクをする有吉弘行さんが、お金がなくなってどこかの国でお寺で托鉢に回るシーンがあって、そこにその国の日常生活を感じて強く興味をひかれました。あれが旅好きになるきっかけだった気がします。そういうことを考えると、土屋敏男さんの作るものの影響は大きかった。

―横井さんが作りたいものと、普段みんながイメージする「テレビ番組」との間には、ギャップがある気がするのですが?

視聴率だけを強く意識すると、自分がやりたいこととは少し離れるのかもしれませんね。視聴率を取ろうと考え過ぎると、今やっているものは刺激が強すぎたり疲れたりするんじゃないかと勝手に憶測して、防衛心を働かせてしまうかもしれない。なので自分は、今はしません。これまでにそうしてきたこともありましたけど…。

この番組、松本さんのご家族もかなり見ているそうなんです。松本さんご自身も、社会勉強だと思ってるとおっしゃってて。そういう側面と、MC3人のバラエティの要素と。硬かったり、とっつきにくいテーマを、この3人とこのスタッフでやることで、興味あるものに変えられたら最高だなと思います。ただまじめなドキュメントだったら見ないかもしれないけど、あの3人がいてファニーなところもあるとなると見ちゃう、そういう風にしたいなという思いはあります。




「クレイジージャーニー」TBS系列毎週木曜深夜0:10~(一部地域を除く)

■「クレイジージャーニー」DVD vol.1~3
発売元:TBS/よしもとアール・アンド・シー (c)TBS/吉本興業

インタビュアー:丸山 顕
執筆協力:矢島 史
photo:佐藤 翔

横井雄一郎

(プロフィール) 法政大学社会学部卒。2004年、TBSテレビ入社。「学校へ行こう!MAX」でADからディレクターになる。その後、「リンカーン」、「キングオブコント」、「ドリームマッチ」などを経て、現在は「クレイジージャーニー」と「水曜日のダウンタウン」を担当。